門田陽

宮田知明 14年10月11日放送

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Greg O’Beirne
綾小路きみまろの哲学

中高年のアイドル、
漫談家として知られる、綾小路きみまろ。

舞台では、そこまで言うかというほどの毒舌で
爆笑をさらう彼にも、信念がある。

「クソババアとは絶対に言わない」

舞台で言うジョークは、
お客さん全体に言っていること。
ひとりのお客さんをつかまえて、
目を合わせて言うことはない。

キャラクターとしてそうしている、
と言えばそうなのかも知れない。
でも、彼のこの言葉には、それ以上に、
中高年の人たちへの愛を感じる。

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宮田知明 14年10月11日放送

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レイチャールズの哲学

ソウルの神様、レイチャールズは、
ジョークが好きだった。

自分の目が見えない、ということすら、
ジョークにしてしまう。

日本で公演を行った時、
若き日の、まだ調律師だったブラザートムが、
彼のピアノの調律を担当した。
この感謝を伝えるために言ったレイの一言は、

「キミの顔は覚えておくよ。」

その一言は、ブラザートムの生涯の宝物になった。

もし、あなたが、とっても些細なことで悩んでいたとしたら。
レイチャールズの、こんな言葉が聞こえてきそうだ。

「君たちは目が開いてるのに、何にも見えてないんだな。」

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岡安徹 14年8月24日放送

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KentaroIEMOTO@Tokyo
高嶋仁が見た夢

照りつける太陽、立ち上る陽炎。
全国の高校球児たちが、まさに熱闘を繰りひろげる甲子園。
強豪と言われるチームには、名将とよばれる監督の存在がある。

智弁和歌山を率いる監督、高嶋仁(たかしまひとし)はかつてこう言った。

「苦しい思いをした人間だけが逆境をチャンスに変える」

今年、智弁和歌山は惜しくも甲子園出場を逃してしまった。
しかし、彼らはこの悔しい思いを糧に強くなるだろう。
もう、その目は次の夏を見ているのだから。

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岡安徹 14年8月24日放送

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mattb_tv
青木秀憲が見た夢

東京の名門、開成高校。
かつて同校野球部は、データと理論を駆使した
独自のセオリーを用い、東京大会ベスト16という好成績を残した。

彼らが掲げた勝利の方程式は、
「ドサクサにまぎれて勝つ」という独創性あふれるもの。

チームを育てた知将青木秀憲監督は言う。

「野球は大いなる無駄。無駄だからこそ
 思いっきり勝ち負けにこだわってやろう」

強豪校と比べ、体格や技術に差があることを認めつつ、
それでもなお勝ちにこだわることを学んだ球児たち。
勝つことにこだわった3年間に、無駄なところなど一つもない。

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高田麦 14年8月24日放送

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トーベ・ヤンソンが見た夢

日本ではかわいらしいキャラクターで知られている
ムーミンの物語は、実はかなり大人向けだった。

物語は、
トーベ・ヤンソンの手によって、
戦争中にフィンランドで生まれた。

次の言葉は、ムーミンママが、ムーミンに投げかけるものだ。

 さあ、あしたもまた長い、いい日でしょうよ。

 しかも、はじめからおわりまでおまえのものなのよ。

 とてもたのしいことじゃない!

ムーミン谷の物語に一貫しているテーマ。
それは、目の前のささやかな幸せは当たり前にあるとは限らない、
ということ。

隣のロシアやスウェーデンなどの強国に
脅かされ続けた小さな国で生まれ育った彼女は、
日常のささやかな幸せこそが夢だと知っていたのだ。

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高田麦 14年8月24日放送

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VIPlibrary
アルヴァ・アアルトが見た夢

19世紀末に生まれたフィンランドを代表する建築家、
アルヴァ・アアルト。
若い頃は、当時のグローバルな潮流であるモダニズム建築に
必死に食らいつこうとした。

しかし、結局、彼はこんな概念にたどりつく。

 「建築とそのディテールは、ある意味、生物学に属する。」
 「世界中で最もすぐれた規格化委員会は“自然界”である。」

そしてアアルトは、
木材と曲線を特徴とする、フィンランドの自然と風土に根差した
人間が暮らしやすい建築を数多く残した。

ごく普通の人たちのためにこの世のパラダイスを作り出したい
というのが、彼の夢となったのである。

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高田麦 14年8月24日放送

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mueredecine
アキ・カウリスマキがつくる夢

アキ・カウリスマキは、
社会では陽の当らないひとたちにスポットライトを当てる。
彼の映画を最初に見ると、誰もが面喰うだろう。

登場人物はみな無表情、
極限までそぎ落とされた台詞、
独特の間。

主人公はだいたい徹底的に不幸な目に遭う。
だけれど、そこかしこにただようユーモア。
弱者を弱者としてそのまま認めることが、救いになる。
作り手であるカウリスマキの、圧倒的にやさしいまなざし。

一貫して弱者を題材にする彼はこう言う。

「映画とは、一日一生懸命働いた人がその日の終わりにリラックスし、
楽しむために観るエンターテインメントだ」

彼の映画は、労働者の労働者による労働者のための、
つかの間の夢なのである。

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岡安徹 14年7月26日放送

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アツい人 手塚治虫

日本の漫画界の父、そして伝説でもある手塚治虫。
その手塚が起こしたアニメ制作会社が「虫プロダクション」。

これは手塚の名前から、「虫」を取ったものとも
いわれているが、
手塚自身は「ここにいるのは皆仕事の虫」だから
そして「仕事場は蒸し風呂みたいに暑いしね」
とネーミングの秘話を語っている。

漫画を描くのが好きで好きでたまらない。
熱い気持ちで「100歳まで漫画を描きたい」と語る手塚も、
やがて床に伏せるようになる。

それでも彼は、まどろむ意識の中でペンをとろうとした。
「頼むから、仕事をさせてくれ」
これが、手塚の最後の言葉とされている。

好きなものに、すべてを捧げること。
手塚治虫の心は
いまもその漫画から語りかけてくる。

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宮田知明 14年7月26日放送

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darkmatter
アツい人 城島茂

TOKIOのリーダー、城島茂。
その、のほほんとしたキャラクターから、
「やさしい人」というイメージが強い。

あるとき、
24時間テレビのマラソンランナーに選ばれた。
別の番組の打合せと説明されて入った会議室には、
日本テレビの社員の人たちがズラリと並んで
深々と頭を下げていた。
「お願いします」
その状況に戸惑いながらも、彼もこたえた。

「逆に、お願いします。

 24時間走らせてください。自分ひとりで走るんじゃない。
 いろんな思いを背負って走りたい。」

城島はアツイ。
それを知っているからこそ、
メンバーたちはこう思うのかもしれない。
「TOKIOのリーダーは、彼しかいない。」

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伊藤健一郎 14年7月26日放送

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アツい人・野茂英雄

もっと見たい!と、
活躍を望まれるなかで引退する。
スポーツ界には、そんな「引き際の美学」があるという。

けれど、野球選手、野茂英雄が貫いたのは、
それとは真逆のものだった。

「花があるうちに辞めるんじゃなくて、
 落ちぶれてボロボロになっても、投げ続けようと決めました」

メジャーリーグからマイナーリーグに降格しても、
ベネズエラリーグでプレイすることになっても、
決して曲げなかった、野茂英雄の「引かない美学」。

引退会見で彼の口をついて出たのは、
「悔いが残る」という一言だった。

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