門田陽

高田麦 14年2月15日放送



料理する人 森茉莉

真のお嬢様、森茉莉。
16歳まで父の膝の上で育ち、
お嫁に行っても
召使いにごはんを口元まで運ばせた。
 
中年になり貧乏になったときも、
彼女は決して「贅沢」を忘れなかった。
 
食にまつわる彼女のエッセイには、
こんな描写がある。

 マヨネエズの壜を出し、
 鎌倉ハムを出し、
 牛酪(バタ)を出し、

 片兎で卵(かたうでたまご)を出し、
 薔薇色がかった朱色の玲瑯珠(れいろうたま)の如きトマト

 (les tomates vermeilles)を二つ出し…

ただのサンドイッチだというのに、
こだわりが感じられ、実においしそう。
 
彼女にとって
料理をおいしくする一番のスパイスは、
高級な食材でも調味料でもなく、
「贅沢な精神」だった。

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岡安徹 14年1月25日放送


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壊す人(陸上選手:アレン・ジョンソン)

立ちはだかるハードルは、なぎ倒す
そんな豪快な走りで
世界陸上で4度の金メダルを獲得した選手がいた。
その名はアレン・ジョンソン。
通称「ハードルなぎ倒し男」。

シドニーオリンピックでは
4着とメダルを逃してしまったが、
そのインタビューはユーモアに溢れていた。

「結果には不満足だが、
 ハードルを倒した台数には満足した」

ハードルは飛び超えるもの、
なんて常識を軽く飛び越えた時、
彼は記録にも記憶にも残る男になった。

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岡安徹 14年1月25日放送


meilev
壊す人(作曲家ジョン・ケージ)

これは、実験音楽家と呼ばれた
ジョン・ケージがつくった曲の通称。

世界で唯一、最初から最後まで
演奏者が全く音を出さない曲である。

楽譜には第一楽章から第三楽章まで、
「休む」と記されている。
4分33秒は、初めてこの曲が演奏された時の
演奏時間。

音楽は音を楽しむもの、という常識が
崩れていくような感覚。

ジョン・ケージは、
心の中で凝り固まった何かが壊れる音こそ
音楽と言いたかったのかもしれない。

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伊藤健一郎 14年1月25日放送



壊す人(映画監督:園子温)

アクション、ホラー、サスペンス、コメディー、ヒューマンドラマ。
ジャンルにとらわれず様々な映画を撮り続ける、園子温監督。

彼は、あるインタビューでこう話している。

 イメージを常に壊し続けることが重要だ。
 ピカソのように、画風をどんどん変えていく。
 実験がなかったら、やる必要がない。

そんな園監督はこのたび、お笑い芸人デビューを果たした。
どうやら、映画というジャンルにもとらわれていなかったらしい。

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伊藤健一郎 14年1月25日放送


Coyau
壊す人(映画監督:園子温)

映画監督、園子温。
大物俳優の起用が話題をよぶ日本映画界で、
園監督が起用する役者は、ほぼ無名。

予算のせいもあるだろう。
けれど、その理由について、彼は、こんな言葉を残している。

 日本には、
 シンデレラストーリーが
 少なすぎる。

『紀子の食卓』でデビューを飾った吉高由里子しかり、
『愛のむきだし』で女優のイメージを定着させた満島ひかりしかり。
園監督作品でひと皮むけた役者は多い。

彼は、知っているのだろう。
大物を起用するよりも、大物に育て上げることのほうが、
これからの映画界を、はるかに面白くできることを。

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宮田知明 13年6月22日放送



夫婦の話(石田純一と東尾理子)

不倫は文化。

そんな大胆な言葉で
プレイボーイといえば
真っ先に名前のあがる人、
石田純一。

なぜ、石田純一?
という言葉を、
妻である東尾理子は、
何度もかけられたことだろう。

しかし彼女には彼女の、
夫に対するしっかりした考え方がある。

 嫌なところをぜんぶ直したら、
 良いところまでなくなってしまう。

夫の良いところを、ちゃんと理解している。
それを考えると、表面的に
見えていることなど、小さいことなのかもしれない。

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岡安徹 13年6月22日放送


mckaysavage
夫婦の話(ゲルリンデ・カルテンブルンナー)

夫婦にとって最も大切な思い出の1つ、プロポーズ。

オーストリアの登山家ゲルリンデ・カルテンブルンナーは、
世界中の誰も真似できない場所でプロポーズされた女性だ。

「デスゾーン」の女王と呼ばれ、8,000m級の山に次々と
登頂していった世界的登山家、ゲルリンデ。
彼女は結婚して子供を作るという選択枝を明快に否定し、
山に全てを捧げていた。
その心を溶かし、プロポーズを成功させたのは同じく登山家の
ラルフ・ドゥイモビッツ。

彼が、文字通り決死の覚悟でプロポーズを行ったのは
ヒマラヤ山脈、標高7,250m地点のキャンプ地。

雪と氷に囲まれた極限の状況こそが互いの心の温もりを際だたせ、
夫婦で居ることの幸せに気づかせたのかもしれない。

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岡安徹 13年6月22日放送



夫婦の話(ドリス・デューク)

暗殺者に、惚れた。

そんな危険すぎる恋をしたのは、ドリス・デューク。
タバコ王として知られた父から莫大な財産を受け継ぎ、
若くして大富豪となった美女である。

数多くのプレイボーイ達と関係をもち、
奔放で、刺激的な恋愛に駆り立てられていったドリス。

彼女の心をとらえたドミニカ共和国の外交官、
ポーフィリオ・ルービローザは、政治的な暗殺計画への
関与も噂される危険な男だった。

しかも彼との結婚は、彼の妻に100万ドルもの大金
を支払って「買い受けた」ものだったという。

夫婦のカタチさえも、型にはめないから面白い。
稀代のセレブの人生は、危険な恋がくれる甘美さを
私たちに教えてくれるようだ。

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伊藤健一郎 13年6月22日放送



夫婦の話(ゲーテとシュタイン夫人)

ドイツの文豪、ゲーテ。
数々の恋愛遍歴でも有名な彼が、
いちずに求愛しつづけた女性がいた。
彼女にゲーテは、こんな詩を贈っている。

 私たちはどこから生まれてきたか。
 愛から。
 私たちはいかにして滅びるか。
 愛がなければ。
 私たちは何によって自己に打ち克つか。
 愛によって。
 私たちも愛を見つけることができるか。
 愛によって。
 私たちを泣かせるのは何か。
 愛。
 私たちをつねに結びつけるのは何か。
 愛。

女性の名は、シャルロッテ・フォン・シュタイン。
彼女には、夫と3人の子供がいた。

ゲーテの熱心な求愛は、11年にも及んだが、
シュタイン夫婦の愛の結びつきを断ち切ることは、ついにできなかった。

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伊藤健一郎 13年6月22日放送


ゼロ
夫婦の話(内田裕也と樹木希林)

ロックンローラーの内田裕也と、女優の樹木希林といえば、
芸能界でも異色な夫婦だろう。

もう、かれこれ四十年も別居生活。
墓参りの時期など、数ヶ月に一度しか、二人は顔を合わせないという。

とあるインタビューで樹木は、こんなことを語っている。

 「目も合わせない夫婦なんてのもありますが、
  うちはめったに会わないから(会うと)ずっと向き合ってますよ。
 『私に言わせろ』『いや、おれに先にしゃべらせろ』なんてね」

夫婦関係には、適度な距離感が必要だという。

別居というと、一般的には不仲に聞こえるが、
ロックな夫婦のベストな距離感は、
このぐらいビッグでちょうどいいのだろう。

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