門田陽

岡安徹 13年3月30日放送


eelsmann
チームワーク4 ジャンパーとテストジャンパー

冬期オリンピックで、数多くのメダリストを生んできた
スキージャンプ。

その裏方に、テストジャンパーという存在がいる。
安全に競技を行える状況にあるかを確かめるため、
自らを実験台としてジャンプする危険な役目だ。

1998年の長野オリンピックは、まさにテストジャンパーの勇気が
メダルを引き寄せた大会だった。

競技当日、会場は吹雪。
ジャンプ台に雪が積もりスピードが出ない上、
視界不良で安全にジャンプが出来ない状態だった。
もし今競技中止ということになれば、日本のメダルはない。

そこでテストジャンパー達が行った驚くべき作戦。
それは、前も見えない吹雪の中連続でテストジャンプを行い、
日本選手のために滑走路の雪を踏み固めること。
そして、安全に着地し競技続行を訴えること。

決死の覚悟で次々と大ジャンプを繰り広げる日本のテストジャンパー達。
かくして競技は続行され、日本は金メダルを掴み取る。

金メダルを決めたジャンプの後、原田選手は涙声で言った。
「…俺じゃないんだよ…、みんなで掴んだんだよ…」

何もない空中へ1人で飛び出す、究極の個人競技に見えるスキージャンプ。
その翼には、多くの仲間の想いが乗っていた。

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高田麦 13年3月30日放送



チームワーク5 高畑勲

たくさんの人が関わり、
ひとつの作品ができあがっていく、
アニメーションの制作現場。
いかに、チームとしてまとめていくか、について、
日本を代表する監督・高畑勲は、こう語っている。

チームワークの礎として大事なことは、

仕事の最中というよりは、むしろ、

仕事が佳境に入る以前のことでしょう。


いざ修羅場だというときにも、
おたがいに詳しく話しあわなくても

仕事を進めていけて、
それが悪い結果にならないこと。


仕事を通じてチームワークを築いていく、
というのは、当たり前のことなのかも知れない。
高畑のチームは、その先を行っている。

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高田麦 13年3月30日放送


Bsodmike
チームワーク6 開高健

昭和を代表する文豪、開高健。
彼は、1本の万年筆、
モンブラン149に特別な情を抱き、こう述べている。

こんなに長年一緒に同棲すると、
かわいくてならない。
かわいいというよりは、
手の指の一本になってしまっている。
つねに手もとから話さないようにと心がけているが、
何かのはずみで見つからなくなると。
不安で不安でジッとしていられなくなる。

世の中にはさまざまなチームというものがあるが、
それが、人間同士であるとは限らない。

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高田麦 12年12月9日放送



偶然を集める人 赤瀬川原平

世の中には、
意味のないものを愛でる人がいる。

ただ昇って降りるだけの意味不明な階段、
何を仕切っているのか推察不能なガードレール、
色あせて文字の一部が読めなくなっている看板など…。

70年代、これらの美しさを発見した赤瀬川原平は、
トマソンと名づける。
そして、街中で自分の感性が反応したものに
次々とカメラを向け、採集していった。

今も散歩を続ける赤瀬川の言葉。

 この世は偶然に満ちている。
 街はいづれ老朽化し、その隙間から、
 追い出された偶然がまた顔をのぞかせる。
 カメラにはそれが美味しい。

何の変哲もない風景も、
見る人間次第でまったく違うものとなるらしい。

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岡安徹 12年12月9日放送



靴を集める人 イメルダ・マルコス

フィリピン共和国第10代大統領夫人、
イメルダ・マルコス。独裁者の妻として、
また驚くべき靴コレクターとして
その名を世界に轟かせた美女。

総数3000足と言われたコレクションは
壁一面のクローゼットを埋め尽くし、
ハイヒールから乗馬用ブーツまで
一生かかっても履ききれないほどを集めた。

ある時、華やかな生活を皮肉られ言われた
「3000足もお持ちとはさぞやご満足でしょう」と。

イメルダはこたえた。
「3000足なんて持っていません。1060足です」と。

一見、皮肉に言い返しただけとも思える一言。
しかしそこに、独裁者という悪名に隠された彼女の素顔が見えた気がする。

それは、靴の一足一足にまで愛着を持って接し、
人生を賭けて美を追究した健気ともいえる姿勢だった。

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岡安徹 12年12月9日放送



人を集める人 坂本龍馬

日本の歴史が大きく動いた、幕末期。
多くの若者が新時代の幕開けを期待し
動乱の渦中に身を投じていた時代。

居並ぶ傑人の中でもひときわ多くの者に影響を与え、
心を惹きつける男がいた。その名は坂本龍馬。

なぜ、龍馬の周辺には多くの人は集まったのか。
その答えに近づく言葉がひとつ残されている。

龍馬曰く
事は十中八、九まで自らこれを行い、
残り一、ニを他に譲りて功をなさしむべし。


花道を譲ること。
簡単そうで難しい、功名心にとらわれない生き方を貫いたからこそ
明治維新という険しい道の真ん中を、龍馬は歩いて行けたのもしれない。

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宮田知明 12年12月9日放送



集めるひと 松下幸之助

経営の神様、と言われた男、
松下電器産業、
現Panasonicの創業者、
松下幸之助。

いかにして、良い人材を集めるか、
という問いに、彼はこう述べている。

一流の人材ばかり集めると、会社はおかしくなる。

世の中、賢い人が揃っていれば
万事うまくいくというものではない。
むしろ、うまくいかないことの方が多い。

松下は、優秀な人材を集めるというより、
集まった人を育てる、という考え方をもっていた。
松下曰く、

 松下電器は、人をつくる会社です。
 同時に、電化製品もつくっています。

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宮田知明 12年12月9日放送



集めるひと 野村克也

再生工場、と言われたプロ野球の名監督、
野村克也。

伸び悩む選手や、他球団で戦力外となった選手、
トレードで獲得した選手を、
コンバートや起用法を変えて活躍の場を与えたことから、
そんな異名がついた。

選手たちを、どうやってうまく導くのかを
聞かれたときの、彼の言葉。

監督業とは、気づかせ業である。

活躍している選手を集めてくるのは、
強いチームだからできること。
そうではないチームだからこそ、
野村の、選手の素質を見抜く力が、
いい選手を集めることにつながった。

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宮田知明 12年11月24日放送


nodoca
つづける人 秋本治

こち亀、でおなじみ、
少年ジャンプの長寿マンガ、
「こちら葛飾区亀有公園前派出所」。

作者・秋本治は、
連載の継続の難しい少年ジャンプにあって、
単行本にして182巻、1500話を越える連載を、
38年間、いまだ休んだことがない。

「ジョジョの奇妙な冒険」の作者、
荒木飛呂彦はこのことについて、
「長く続ける秘訣は何か」と尋ねたところ、

秋本曰く、「規則正しい生活をしてください。」

長く続けるヒケツとは、内容如何よりも、
自分が続けられるコンディションを保てるか、
ということ。

漫画家は徹夜が当たり前、
と考えていた荒木は、
その後、秋本の教えを守り続け、
「ジョジョの奇妙な冒険」は今年、
連載25年目を迎える。

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宮田知明 12年11月24日放送


dishhh
つづける人 森田一義

「笑っていいとも!」でおなじみ、
日本屈指のお笑いタレント、
タモリ、こと森田一義。

単独司会者としての
生放送の長寿記録として、
5000回達成の際に
ギネスブックに認定されたのが、
もう10年も前の2003年のこと。

その長く続ける秘訣を聞かれたところ、
タモリ曰く、

「反省しないこと。」

タモリ自身、「今日はすべっちゃったな」
と感じる日もある。
でも、クヨクヨ考えない。
次の日に引きずらない。

彼は、出演するすべての番組において、
一切反省会をしないという。

反省と聞くと、
それだけで正しいことのようにも感じるが、
「反省をしない」という決断の方が、
実は勇気のいることなのかもしれない。

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