熊埜御堂―憧れの所作
収録の現場でうっとりさせられる所作がありました。
ディレクターのCさんが、
ガラス越しにDJブースのVieVieさんに送るその合図。
指揮者が、演奏の幕を開けるタクトを振るように。
そっと、でも、その場を確かに操る、
手を天にかざす仕草です。
最初は、なんだろ、あれは?と思っていました。
でもだんだんと、
ああ、あの手つきを合図にVieVieさんは
原稿の読み始めを判断しているんだな
と分かってきました。
つまり、それはQ出しの合図です。
私たちコピーライターがラジオCMをつくるスタジオには
キューボタンといわれるスイッチが機材に組み込まれています。
そのボタンを押すと
防音ガラスに隔てられたナレーターさんの目の前のランプが光って
「今から原稿を読み始めて!」という合図が
送れるようになっているのです。
まさにそれと同じやりとりが
ガラス越しに向かい合うCさんとVieVieさんの間では
かざした手とまなざしの交換で行われていました。
単に習慣の違いと言えば、それまでなんですが
そのQ出しの所作が、Cさんのダンディないでたちと相まって、
なんとも言えずかっこいい!!
次、私がラジオCMを演出・収録できる機会がきたら
かざしたその手で、Q出ししてみようかなー
なんて思いました。 (つづく)