小林慎一

山本貴宏 19年12月22日放送



雪がふるとき ~雪あかり~

晋時代の中国に、
車胤(しゃいん)と孫康(そんこう)という若者がいた。

官僚を目指して勉強していた二人だが、共に貧しい家計で
夜中に必要な明かりを灯す油すら買うことができなかった。

そこで、
車胤(しゃいん)は夏の夜に蛍を捕まえて明かりの代わりを作り
孫康(そんこう)は冬の夜に窓辺に雪を積み上げて明かりの代わり
としたことから
苦労して勉学に励むことを意味した「蛍雪の功」という言葉が生まれた。

なんとしてでも合格してみせようという中国の偉人たちの想いは
卒業式で歌われる「蛍の光」を通して、現代の学生たちに伝えられている。

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山本貴宏 19年12月22日放送



雪がふるとき ~神様のお掃除~

雨かんむりの下にあるカタカナの「ヨ」に似た字は、
古くは「彗(ほうき)」という字が由来になっている。

つまり雪とは
ほうきで集めることができる「雨」のことを指していたのだという。

もう一つの説には
雪が積もり、あたり一面が真っ白になった様子をみた昔の人が
「神様が世の中を掃除して、掃き清めてくれたようだ」と感じ
「彗(ほうき)」という字を
当てたとも言われている。

漢字は三千年以上前の人たちからのメッセージ。
成り立ちの想いを感じ取ってみると、雪の見方も変わってくる。
嫌なことがあった日に雪が降ってきたら、
「神様が気を利かせてくれたのかな」と思ってみてもいいかもしれない。

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山本貴宏 19年12月22日放送


MIKI Yoshihito. (#mikiyoshihito)
雪がふるとき ~雪ぶつけ~

雪が降れば、雪合戦。
雪玉を作り、人に投げてみるという遊びは
自然に生まれてきたということは容易に考えられる。

記録に残っている最古のものは源氏物語の中の「雪ぶつけ」だ。
平安時代に、長時間に及び戦いを繰り広げていた二人の武将が
矢も刀も体力も限界を迎えたころ、雪玉を投げて戦ったことから
「合戦」という名がついたという。

現在では約10ヵ国において国際スポーツとして
世界でプレイされている。
この冬、未来のオリンピックを想像しながら
無邪気に大人同士で雪合戦をしてみるのも、楽しそう。

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山本貴宏 19年12月22日放送


Wongm
雪がふるとき ~スキー場とジェット機~

雪が降れば、スキー場に行きたくなる。
寒さを忘れて真っ白な景色を滑り下りるスリルは
誰しも味わったことがあるだろう。

そんなスキー場、
雪不足で困ったときには、人工降雪機が役に立つ。

実はその人工降雪機が、
偶然の産物であったということはあまり知られていない。

ジェット機のエンジンテストをしていた時に
氷がエンジンに与える影響を
調査するべく冷たい水を吹きかけたところ
霧状になった水が小さな氷の結晶を作り上げた。
これが、人工降雪機の始まりだ。

発明はいつも意外なところから降ってくるものだと
エンジンテストをしていた彼も、驚いたことだろう。

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山本貴宏 19年12月22日放送


wanko
雪がふるとき ~めでたい予兆~

一般的に寒さを想起させる雪には、高い保温効果がある。

かまくらの中が暖かいのはそれが理由であり、
氷点下10度を下回っても、
積もった雪の下は0度より下がらないという。

地温を高めたり、凍結をゆるめる効果で
雪の多い年は豊作に結びつくと話題になり

中国には「瑞雪(ずいせつ)の降った年は五穀豊穣となり幸せが訪れる」
ということわざもある。

ふと、雪を見て心が暖かくなるのは
めでたい予兆の雪という意味が、国や文化を越えて
私たちの心の中にも残っているからなのだろう。

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山本貴宏 19年10月12日放送



百里の道も一足から。 〜ローファー〜

「狩猟の休憩中、気軽にはける靴が欲しい」
というオーダーを
当時のイギリス国王ジョージ4世から受けた。

王室も御用達だったワイルドスミス社という靴屋は
主流だった革靴の革を薄くして
靴ひもを無くしたところ、王様は大満足

こうして王様のわがままから
現在も愛されるローファーは誕生した。

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山本貴宏 19年10月12日放送


mharrsch
百里の道も一足から。 〜黄金のサンダル〜

遡ること3000年、
古代エジプトでサンダルは
霊界へ行った後の履物と考えられていた。

かの有名なツタンカーメンはお墓の中で
黄金のサンダルを履いたまま発見されている。

その後、
砂漠の熱から足を守るために
サンダルを使い始めたことから
一般人にも広まっていったのだとか。

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河田紗弥 19年10月12日放送



百里の道も一足から。 〜ハイヒール〜

「捨てます!」と周囲に宣言すれば、
建物の2階からでも、
汚物を捨ててもいいというルールがあったほど、
16世紀のヨーロッパは街中に汚物が平然と捨てられていた。

臭いはもちろん、
路面に置き去りにされた汚物が
スカートの裾を汚してしまい、人々を悩ませていたという…。

そこで注目されたのが厚底靴である。

歩き辛さやファッション的に好まれていなかった厚底靴を
かかと部分のみを厚底にし、
歩きやすく、見た目も細く美しいハイヒールへと変化させた。

こうして
今では女性を象徴するアイテム
ハイヒールは誕生した。

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野村隆文 19年10月12日放送



百里の道も一足から。 〜マラソンと靴〜

世界最古のマラソンランナー、古代ギリシャのフィディピデスは、
マラトンからアテネまでの約40kmを、36時間かけて走破した。
このとき彼は、裸足だった。

日本人として、初めてオリンピックの舞台を走った金栗四三。
彼が代表選考レースで世界記録を更新したとき、履いていたのは
特製の「マラソン足袋」だったという。

その後、通気性の高いメッシュ素材が生まれ、
衝撃を吸収するソールの開発されていく。
マラソンの記録更新は、常に靴の進化が支えてきた。

2017年には、今までにない厚底のランニングシューズを履いた選手が、
日本記録を16年ぶりに更新。

2019年現在、マラソンの世界記録は2時間1分39秒。
2020年には、どんな靴を履いた選手が、
世界を沸かせてくれるのだろうか。

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河田紗弥 19年10月12日放送



百里の道も一足から。 〜スリッパ〜

家の中で靴を脱ぐ文化は日本独自のもの。
欧米をはじめとした海外では基本的に
家の中でも靴を履いたまま生活をしている。

明治時代に海外の人が来日するようになり、
この文化の違いが原因で
至るところでトラブルが発生していたんだとか…。

そこで、誕生したのがスリッパだ。

靴の上から被せるようにして履くものが原型と言われているが
今でもスリッパの構造にはその名残があるように思う。

“つっかけ”て履く気楽さや
足も床も汚さない利便性は
日本独自の文化とぴったり。
瞬く間にスリッパは日本人の毎日に定着していった。

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