寒さの季節に 中村草田男
きんと澄み切った空気。
見上げれば輝く星。
昭和の俳人中村草田男(なかむらくさたお)は
そんな冬の夜の星を
寒い星と書いて寒星(かんせい)と詠んだ。
寒星(かんせい)や神の算盤(そろばん)ただひそか
冷え切った夜。
きらめく星。
不変のリズムで動き続ける天体。
空を見上げ、立ちすくむ私。
人知を超えた
はるかな時間が、
寒々と広がっている。
寒星(かんせい)や神の算盤(そろばん)ただひそか
寒さの季節に 中村草田男
きんと澄み切った空気。
見上げれば輝く星。
昭和の俳人中村草田男(なかむらくさたお)は
そんな冬の夜の星を
寒い星と書いて寒星(かんせい)と詠んだ。
寒星(かんせい)や神の算盤(そろばん)ただひそか
冷え切った夜。
きらめく星。
不変のリズムで動き続ける天体。
空を見上げ、立ちすくむ私。
人知を超えた
はるかな時間が、
寒々と広がっている。
寒星(かんせい)や神の算盤(そろばん)ただひそか
葱
寒さの季節に 西郷隆盛と黒田博樹
西郷隆盛は晩年、
親戚の青年に
こんな言葉を贈った。
雪に耐えて梅花(ばいか)麗し
梅の花の美しさは、
雪降る寒さを耐えた先にある。
この言葉、
100年の時を経て、
一人のプロ野球選手の座右の銘となった。
元広島カープ、黒田博樹投手。
高校時代は控え投手だったが
大学で力をつけ広島に入団。
低迷期にあったチームを支え、
メジャーリーグに挑戦。
そして再び古巣に戻り、
日米通算200勝という大きな花を咲かせた
雪に耐えて梅花(ばいか)麗し
今日は大寒。
梅の季節はゆっくり近づきつつあります。
寒さの季節に ロバート・リンド
人は眠りから起きるときに
体温が上昇する。
冬の朝の目覚めにくさは、
体がなかなか温まらないことも
関係しているという。
20世紀前半の
イギリスで活躍したエッセイスト、
ロバート・リンドは
「冬に書かれた朝寝論」という
エッセイでこう書いている。
私の経験からすると、
仕事を怠けたいという気持ちは、
気温が下がるのに比例して強くなると思う。
今日は大寒。
無理せず
のんびりお過ごしください。
寒さの季節に 後藤正文
あの日も寒かった。
東京にいる自分は何もできなかった。
今でも震災後の無力感を思いだす。
ミュージシャン、後藤正文はそう呟く。
たとえ何もできなくても、
何かしたいという小さな想いを持ち寄れば、
「何か」に辿りつけるんじゃないか。
そう考えて、未来を語る言葉を集めることにした。
中世ヨーロッパの吟遊詩人達は、
さまざまな国を渡り歩いて情報を伝達する
新聞のような役割を担っていた。
音楽家である自分がその役割を再現できるんじゃないかと考えた。
未来を考える誠実な声が、ひとつふたつと集まってくる。
紙に刷って、無料で配り歩いた。
新聞の名前は『The Future Times』。
未来とは、わたしたちの声である。
NanakoT
寒さの季節に 月山志津温泉
出羽三山へつづく道へ車を走らせる。
6mの雪壁をくぐり抜けると、
雪でできた旅籠がぼんやりと光っている。
幻想的な風景が人気の、
山形県にある月山志津温泉。
江戸時代に宿場町だったこの街の風景を
雪で再現できないかと
若者たちが試したのがはじまりだった。
雪旅籠をつくるルールはひとつだけ。
雪を無理やり積み上げるのではなく、
初雪の頃から自然に積もった雪を掘り込んで形づくること。
雪旅籠の街並みは、2月が終わりに近づく頃に10日間だけ現れて消える。
Arturo Espinosa
よりよき世界の破片たち ミヒャエル・エンデ
この作品で伝えたいメッセージは何ですか?
作家や映画監督をはじめ、
あらゆるアーティストを悩ませるこの質問。
『モモ』や『はてしない物語』で知られる
小説家ミヒャエル・エンデは、
作品の意味を問う大人の読者からの手紙にこう答えた。
よい詩とは、世界をよりよくするためにあるのではありません。
その詩そのものが、よりよき世界の破片(かけら)なのです。
そこにあるものを、丸ごと味わうこと。
エンデの本の最も熱心な読者である子どもたちには
自然とできていることかもしれません。
よりよき世界の破片たち オスカー・ニーマイヤー
ブラジルの高級住宅街。
広い庭で空想のスケッチを
楽しんでいた少年はやがて、
104歳まで現役を貫いた伝説の建築家となった。
オスカー・ニーマイヤー。
若き日に現代建築の巨匠ル・コルビジェとともに設計した
国連本部ビルをはじめ、
首都ブラジリアの都市計画など、
その100年を超える人生、
80年を超える建築人生は、
最後まで情熱が絶えることはなかった。
『ニーマイヤー 104歳の最終講義』
という本で、彼は人生についてこう語る。
人生は一瞬だ。
それゆえに私たちは学ばなければならず、また、
礼儀正しくそこを通過しなければならない。
誰よりも学び、誰よりも礼儀正しかった建築家。
そして、その生涯を終えるまで
空想のスケッチを楽しむ心を
忘れなかった人だった。
whologwhy
よりよき世界の破片たち 橘曙覧
江戸時代に生きた歌人、
橘曙覧(たちばなのあけみ)。
短歌の伝統といえば、
花鳥風月を歌に詠むこと。
けれど橘曙覧は、
日々の何気ない「たのしみ」を歌にした。
たのしみは妻子(めこ)むつまじくうちつどひ頭(かしら)ならべて物をくふ時
(たのしみは、妻と子が仲良く集まり、頭をならべてごはんを食べる時)
たのしみは朝おきいでて昨日まで無かりし花の咲ける見る時
(たのしみは、朝起きて、昨日まで咲いてなかった花が咲いているのを見た時)
たのしみは心をおかぬ友どちと笑ひかたりて腹をよるとき
(たのしみは、気がねない友だちと語り、笑いあって、お腹をよじるとき)
何百年もたって、インターネットにAIと
社会はずいぶん変化したけれど、
人が「いいなあ」と思う対象って、
そんなに変わらないのかもしれません。
よりよき世界の破片たち 伊藤菜衣子
注文の多い夫と暮らして
日々のありかたを模索するうちに、
これは冒険なんじゃないかしらと気づいた。
暮らしかた冒険家・伊藤菜衣子(いとうさいこ)。
これまでの暮らしの常識を見直し、
これからの暮らしかたとは何かを探っている。
夫婦で住む場所を探す旅にでて、
たどりついたのは北海道の地だった。
DIY を繰り返していくうちに、断熱性と気密性の高い、
リノベーションハウスができあがった。
2040年には、日本の40%が空き家になる。
「ないものねだりより、あるものみっけの暮らしかた」
そういう感覚がこれからきっと大事になると伊藤は語る。
zacktionman
よりよき世界の破片たち 森栄喜
LGBTという言葉がうまれるずっと前から、
男と男の愛情も、女と女の愛情も、普遍的にそこにあった。
でも、いまの自分はまだセクシャルマイノリティ。
そう公言する写真家・森栄喜(もりえいき)は、
写真を通じて、家族とは何か、恋人とは何か、
社会に問いを立ててきた。
森は、時に、街の人にもシャッターを押してもらう。
ウエディングドレスを思わせる
白い衣装に身を包んだ男性二人を、
商店街の通りすがりの、老夫婦が撮る、小学生が撮る。
そこには森と、パートナーの、くったくのない表情がきざまれる。
世界が変わることは、私達が変わることだと、その作品は教えてくれる。
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