寒さの季節に 後藤正文
あの日も寒かった。
東京にいる自分は何もできなかった。
今でも震災後の無力感を思いだす。
ミュージシャン、後藤正文はそう呟く。
たとえ何もできなくても、
何かしたいという小さな想いを持ち寄れば、
「何か」に辿りつけるんじゃないか。
そう考えて、未来を語る言葉を集めることにした。
中世ヨーロッパの吟遊詩人達は、
さまざまな国を渡り歩いて情報を伝達する
新聞のような役割を担っていた。
音楽家である自分がその役割を再現できるんじゃないかと考えた。
未来を考える誠実な声が、ひとつふたつと集まってくる。
紙に刷って、無料で配り歩いた。
新聞の名前は『The Future Times』。
未来とは、わたしたちの声である。