中村組・三國菜恵

三國菜恵 16年12月24日放送

161224-03

今夜はクリスマスイブ 岩田徹(いわたとおる)

北海道砂川市にある本屋「いわた書店」。
へんぴな場所にありながら、
いま日本でいちばん忙しい本屋と言われている。

店主の岩田徹さんのもとには、
毎月3000通ものメールが届く。
そのメールは「カルテ」と言われ、
どんな本を求めているか
どんな人生を送ってきたかを
事細かに記入する必要がある。

カルテをもとに、
岩田さんが1万円分の本を選ぶ。

そして、遠く離れたひとりひとりの元へ
処方箋のような本が届く。

岩田さんは毎日、サンタクロースのように忙しい。

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三國菜恵 16年12月24日放送

161224-04

今夜はクリスマスイブ こぐま社

『しろくまちゃんのほっとけーき』などで知られる
絵本の出版社、こぐま社。

子どもたちに、クリスマスの起源を
教えるためにつくられた
『クリスマスおめでとう』という絵本がある。

イエスキリストがうまれたその日、
羊たちも、天使たちも、空の星までもみんな、いそいそと現場に向かう。
こんな言葉を口にしながら。

 みんなが まっていた うれしいことって なんだろう

街に溢れるあたたかい祝福感が、
絵本をめくると伝わってくる。

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三國菜恵 16年11月26日放送

161126-04

ペンは動く 羽田圭介

芥川賞作家、羽田圭介。
小説家デビューは17歳。
ある作家の登場に焦りを覚えたのがきっかけだった。

17歳の高校生・綿谷りさの新人賞受賞。

その衝撃に突き動かされ、
羽田は小説家になる練習を始めた。

 文芸誌のバックナッバーをまとめ読みした。
 テストの傾向と対策を練るかのように。

目指す為に、まず、学ぶことから始めた。

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三島邦彦 16年11月26日放送

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psycho.mato
ペンは動く 東村アキコ

人気漫画家、東村アキコ。

育児、オタク女子、地元で出会った面白い人。
さまざまな視点から漫画を描いてきた。

ある日ペンを動かす中でふと、
ある人のことを思いだした。
自分に「絵」を描くことを教えてくれた、アトリエの先生。
その先生にはもう会えない。
だからこそ、漫画の中に生き生きと描きだそうと思った。

「ウソを描くと紙のなかの先生に怒られるんじゃないか」
計算も、演出も排除して、ペンは進んだ。

漫画の中によみがえった先生の言葉に、
いま、沢山の人が心を揺さぶられている。

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三國菜恵 16年10月22日放送

161022-05
mai
そのとき聞こえた音楽 夕方帰巣BGM

夕方になると、日本のあちこちでメロディが聞えてくる。

ある街の商店街のスピーカーからは、
「夕焼け小焼け」。

ある街の緑豊かな公園からは、
ドヴォルザークの「遠き山に陽は落ちて」。

ある街の公民館からは、
ビートルズの「イエスタデイ」。

ある街の防波堤からは、
警報にも似たけたたましいサイレンが鳴り響く。

それらは帰っておいで、の合図に思えるが、
もともとは、畑仕事にいそしむ人への
仕事終わりを告げる合図だったとも言われている。

きょうも、おつかれさまです。
肌寒くなってきたので、早くお家に帰りましょう。

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三國菜恵 16年7月30日放送

160730-04
*key1jp
音楽に生きる人 井上陽水

2002年。
日本を代表する夏フェス、フジロックフェスティバルに呼ばれた井上陽水。

いわゆるフェスなんかははじめてで、
若いお客さんは多いし、
いつもと勝手が違う。

一体何を歌ったらいいんだろう。
陽水は悩み、忌野清志郎に相談した。
するとこんなアドバイスをくれた。

「フジにくるお客さんは君のことはあまりよく知らないんだから、
 売れた曲から順番にやればいい」

少年時代、アジアの純真、氷の世界。
ヒット曲満載のステージを陽水は全力で届けた。

大御所と呼ばれるのは、
目の前のお客さんの反応を気にしてばかりいるからこそ、なのかもしれない。

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三國菜恵 16年7月30日放送

160730-05
Atos International
音楽に生きる人 峯田和伸と大森靖子(おおもりせいこ)

ある日ライブハウスで、
マイクに向かって自分のアドレスを叫んだ。
すると何人かのファンがメールを送ってくるようになった。

ロックバンド・銀杏BOYZのボーカル、峯田和伸は、
ファンから日々受信するメールを、
高円寺のアパートでスクロールしていた。
その中に、いつも同じタイトルで送ってくる女の子がいた。

メールタイトル:大森靖子

おそらくそれは彼女自身の名前。
学校でうまくいかない、バイト先で面倒が多い。
そんなことが、妙に文学的な長文でつづられていた。

峯田はそれを見ながら思った。

 誰かに毎日メールを送ってくるのってすごい。
 力も使うし時間も使うし。
 そんぐらいのことをやってる人が
 楽器とか持って曲とか書いたらたぶんすごいのにな。

数年後、彼女は夏フェス会場を埋める
シンガーソングライターになって登場する。

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三國菜恵 16年6月25日放送

160625-04

雨や植物や木のはなし Isabel Joy BearとR.G.Thomas

雨がふると、雨独特のにおいがする。
その正体が気になって、
1964年、鉱物学者のIsabel Joy BearとR.G.Thomasの
2人が研究に乗りだした。

においの源は、植物が発する油分だとわかった。
コンクリートの街よりも、
農村の山道の方が雨のにおいを強く感じるのはそのためである。

研究者の2人はこのにおいに名前をつけている。

 “ペトリコール”

ギリシャ語が由来らしいけれど、
ふしぎな名前の本当のところは、ふしぎを愛する2人にしかわからない。

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三國菜恵 16年6月25日放送

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雨や植物や木のはなし 松田素子

絵本編集者であり作家でもある、
松田素子(まつだもとこ)。

彼女の代表作にこんなものがある。
屋久島の木々を主人公に書かれた
『わたしは樹だ』という絵本。

執筆にあたって、
松田は初めて屋久島を訪れた。
本もたくさん読んでいったけど、
知識なんかは置いておいて、
ゼロの気持ちで島の空気に浸りに行った。

驚いたのは、木の「根っこ」だ。
土が少ないため根がむきだしで、
生きるぞ、という執念のようなものが伝わってきた。

そうして、タイトルになったこの一行を書いた。

 わたしは樹だ

不自然な創作はせず、
淡々と事実を書くことに専念した。
自然が示し続けている巨きな合図をしっかり受け取って。
最初の一行を書いたあと、気づけば、
松田の手は止まることなく作品を書きあげていた。

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三國菜恵 16年3月19日放送

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もう会えないひと。 森田一義

今年は赤塚不二夫の生誕80周年。
「生誕何年」という文字は、その人がもうこの世にいないことを色濃くする。

赤塚に見いだされ、芸人となった
森田一義ことタモリ。
人生で一番最初に読んだ弔辞は、
よりにもよって、赤塚に向けてだった。

森田は仏壇の前に立ち、はじめてお礼を言った。
言う機会はいくらでもあったけれど、
こんな気持ちがいつも邪魔をしていた。

 肉親以上の存在にお礼を言うのは気がひける

そのことをふと人に漏らしたら、
赤塚も同じことを言っていたと知らされた。

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