大友美有紀

大友美有紀 19年5月5日放送



「レオ・レオニ」 ねずみ

今日は、絵本作家レオ・レオニの誕生日。

あるときレオは、アトリエに向かう途中、
足元で固まっている、小さな地ねずみに気づく。
レオがねずみを見ると、ジャンプして、
どこかへ行ってしまった。
そのあと昼寝からさめると、
言葉があふれてきた。

そして描いたのが、
ねずみのお話『フレデリック』。
芸術家の社会的な役割が、
やわらかく語られている。

小さな「ねずみ」を通じて
小さな「ひと」に
大切なことを伝えている。

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大友美有紀 19年5月5日放送


Photo by David Clode on Unsplash
「レオ・レオニ」 スイミー

今日は、こどもの日。
そして、絵本作家レオ・レオニの誕生日。

小学校の教科書にも載っている「スイミー」の作者。
彼は、このお話の鍵は「自伝的」だという。
「スイミー」は黒い魚。赤い魚の中で、異分子だった。
レオ・レオニは、住む場所や仕事を転々とし、
ようやくニューヨークで、
絵本を描くという自分の道を見つけた。
黒い魚のスイミーは「ぼくが目になろう」と言う。
自分が赤い魚と違うことを認めて、
自分にしかできないことを担うという、
決意表明なのだという。
それは自分とは何者かを知ること。

そして、こどもたちも無意識のうちに
自分とは何者かを
強く知りたがっているのだという。

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大友美有紀 19年5月5日放送



「レオ・レオニ」 こどもとのワークショップ

今日は、こどもの日。
そして、絵本作家レオ・レオニの誕生日。

レオはこどもたちと
絵本づくりのワークショップも行なっていた。
こどもたちに次々と質問する。
主人公は?
どんな性格?
他と違う?同じ?
妥協することなく、
全力で、こどもたちと向き合った。

レオはこどもがうらやましいという。
いいものができたときに、
お母さんに駆け寄っていって、
自慢できるからと。
自分もこどものように
自慢したいのだという。
こどものような人だったのだ。

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大友美有紀 19年5月5日放送



「レオ・レオニ」 平行植物

今日は、こどもの日。
そして、絵本作家レオ・レオニの誕生日。

『スイミー』の作者、レオ・レオニには、
あまり知られていない作品がある。
『平行植物』。
レオが生み出した、架空の植物。
そのスケッチと特徴を書き記した博物誌。
夢見の杖、カラツボ、ツキノヒカリバナ。
レオのアトリエには平行植物のブロンズ像が並べられた
「幻想の庭」もあった。
レオ・レオニ。
こどもたちに、こどもだった大人たちに、
いくつもの、自分を信じるお話を届けてくれた。

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大友美有紀 19年4月7日放送



作家とアパート 萩原朔太郎

新年度、新しい場所での暮らしを
始める人もいるでしょう。

詩人・萩原朔太郎の作品に
「乃木坂倶楽部」という詩がある。
アパートでひとり寂しく
眠る心情が描かれている。
妻と別れて、実家からも追い払われ、
三好達治に紹介されたアパートだった。
詩の描写から察するに、白壁の洋室、
ベッドで眠るような暮らしだ。
しかも、場所は乃木坂。

今だったら、洋館のようなアパートでの
華やかな都会暮らし。
でも「ひとり」である寂しさが、胸に迫ってくる。

ひとり暮らしを始めたばかりのあなたは、
きっと読まないほうがいい。

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大友美有紀 19年4月7日放送



作家とアパート 萩原葉子

さあ、この春から新天地で暮らす!
という人も多いことでしょう。
でも若い頃は、思うような場所に住めないことも多い。

萩原朔太郎の長女、葉子が
小説「木馬館」で描くアパートは、凄まじい部屋だった。
壁はボロボロ、畳のヘリは破れている。
天井は雨のシミ、水場もない。
そのうえ夫は小心で疑い深い。
干渉してくる近隣の住人もいる。

父、朔太郎が描くアパート暮らしの寂しさとは
また違う厳しさがそこにある。

やがて「木馬館」の主人公は、
このアパートから出てゆくことができる。
厳しさがあるからこそ、
出てゆく「希望」を見つけられるのかもしれない。

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大友美有紀 19年4月7日放送



作家とアパート 江戸川乱歩

新年度が始まって、ひとり暮らしを
始める人も多いでしょう。

かつて、上京した学生は、
「下宿」を借りて暮らしていた。
推理小説家・江戸川乱歩は、
下宿屋を営んでいたこともある。
現在の西早稲田にあった「緑館」だ。

当時のチラシには、
室内電話、浴室、
「閑静ニシテ便利」「美室ニシテ低廉」と書かれている。

なかなかよさそうな下宿だが、
当の乱歩は下宿の運営には無関心。
住人の学生との騒動が起こって、
新聞沙汰になり下宿を廃業してしまった。

もしかしたら、それは表向きの話で、
とても人に言えないような、奇々怪界の
事件が起きていたのかもしれない。
と、乱歩ファンなら勘ぐるところだろう。

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大友美有紀 19年4月7日放送



作家とアパート 明智小五郎

新年度です。
新しい環境での暮らしには、
期待もあるし不安もある。

ひとところに定住できない、
というタイプの人がいます。
推理小説家・江戸川乱歩は、
生まれてから40歳で池袋に定住するまでに
40回も住処を変えたそう。
彼が生み出した探偵の明智小五郎も
住む場所をいくつか変えている。

最初はタバコ屋の2階の4畳半、
そして次は、御茶ノ水のモダンな「開化アパート」、
そのあとは、麻布竜土町のこぢんまりとした白い西洋館。

住む場所が変わると、
自分のキャタラクターも少し変わる。
転々とするのも、悪くなさそうです。

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大友美有紀 19年4月7日放送


江戸村のとくぞう
作家とアパート 山の上ホテル/御茶ノ水文化アパート

4月、新しい暮らしの始まりですね。
一度はやってみたいホテル暮らし。

お茶の水の「山の上ホテル」は、
文豪たちの定宿としても知られている。
川端康成、三島由紀夫、池波正太郎。
出版社の多い神田神保町の近くということもあり
作家が「カンヅメ」になることもある。
山の上ホテルの設計者は、W.M.ヴォリーズ。
日本初の純洋式アパートメントハウス、
御茶ノ水文化アパートメントも設計した。
江戸川乱歩が生み出した、探偵・明智小五郎の事務所、
開化アパートのモデルでもある。
西洋式の暮らしを前提にした間取り、バスルーム、
共用のゲストルーム、カフェや社交室もあったという。

ヴォリーズの考える住宅は、
ハウスではなくホーム。
家族が健康で幸せに生活できること。
そこには西洋も東洋もない、考え方があった。

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大友美有紀 19年4月7日放送



作家とアパート 花園アパート

新年度、新しい暮らしが始まり、
新しい仲間ができる季節です。

稀代の目利き、
骨董の世界を完成させたとも言われる、
青山二郎。彼のもとには、若い文士たちが集まった。
小林秀雄、河上徹太郎、大岡昇平、そして中原中也。
芸術を語り、人生を語り、酒を飲み、揉み合い、
修羅場を繰り広げる。

その舞台となったのは、木造の薄汚いアパート。
「花園アパート」だった。
萩原朔太郎が暮らした「乃木坂倶楽部」とは大違いだ。
でも、ここには寂しさがない。
中原中也は、毎日誰かが来るので
幸せだと手紙に書いている。

本気でぶつかり合う仲間、
それこそが若い時代に必要なのかもしれない。

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