大友美有紀

大友美有紀 14年5月4日放送

140504-041
Debris2008
「アクターズ・スタジオ・インタビュー」 スパイク・リー

スパイク・リーはアクターズ・スタジオ・インタビューで、
500人の観衆の前で涙を流した。
それは映画「マルコムX」が資金不足で監督を解雇になった時、
マジック・ジョンソンをはじめ多くのアフリカ系アメリカ人が
援助してくれたエピソードを語ったときだ。

 ぼくは、マルコムの弟子でありたいと思っていた。
 彼はいつだって自助努力を提唱してきた人だ。
 黒人たちは充分に力やパワーを持っている。
 だから自分たち自身に依存することから
 はじめなきゃいけないんだってね。
 税金対策にもならないのに、
 多くの人が小切手を切ってくれた。
 みんな、この映画が非常に大事な映画だとわかっていたんだ。

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大友美有紀 14年5月4日放送

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Thomas Hawk
「アクターズ・スタジオ・インタビュー」 クリント・イーストウッド

アクターズ・スタジオ・インタビューに来るゲストたちは、
クリント・イーストウッドのテイクの始め方と終わり方をよく話題にしていた。
彼は「アクション」とも「カット」とも言わない。

クリントは、それは「ローハイド」からはじまったことだという。
馬に乗っている男たちが4人。隣り合って並ばなければいけない。
クローズアップで撮るのは難しいショットだ。
先端にマイクをつけた棒がビュンビュンふられる。
馬はこれが嫌いだ、イライラし出している。
やっと4頭の馬がワンショットに入りそうになったその瞬間、
男がメガホンの大音声で叫ぶ「アクション!」。
馬はてんでに好きな方向に駆け出した。
 
 どうだろ、アクションって怒鳴らないでやってみては?
 何か他のことを言ったらって僕は言ったんだ。
 でもどうしてもそうはやってもらえなかった。
 俳優は馬じゃない。だけど彼らにだって中枢の神経系統はあるんだ。
 しかも、みんな撮るシーンについて懸念を抱いて待ってる。
 それなのに「アクション」と叫ぶとアドレナリンの量は上がる。
 血圧は上がるで、最高の状態ではない。
 だから、僕はただ「オーケー、いつでもどうぞ、行こう」って言い、
 終わると「ストップ、ありがとう」とか
 「くだらんやつはそこまで」とか
 言うんだ。

彼の映画が多くのアカデミー賞を産む理由がここにあるのかもしれない。

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大友美有紀 14年5月4日放送

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Alan Light
「アクターズ・スタジオ・インタビュー」 トム・クルーズ

アクターズ・スタジオ・インタビューで何度も話題になるのは、
「親の喪失」というテーマだ。
トム・クルーズも彼の人生のほとんど全般にわたって父親は不在だった。
21歳の時、病院で命を終えようとしている父親に再会した。

 手を握ったら親父が言った。
 おいステーキ食いに行こう。こんな病気治ってみせるから。
 ぼくは、ただ彼を愛している、起きたことはしょうがない、
 過去は過去だよって伝えたかった。
 それはとても強烈だった。

トムと父は、それきり会うことはなかった。

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大友美有紀 14年5月4日放送

140504-08
quicheisinsane
「アクターズ・スタジオ・インタビュー」 ジョニー・デップ

ジョニー・デップは、アクターズ・スタジオ・インタビューで、
役を選ぶことについて語った。

 商品でいることに居心地が悪かったんだ。
 我慢できなかった。閉所恐怖症を感じちゃってね。
 だから腹を決めたんだ。
 自分の道は自分で決める、それから絶対はずれないようにする。
 たとえ失敗しても、失敗したってだけのこと。
 努力はしようと。いつだってギター弾きや
 ガソリンスタンドのお兄さんに戻るだけのことだ。

 

自分の仕事にすっかり満足して、どっかの境地に行き着いた、
勝ち取ったって思ったら、それは俳優の死だ思う、とも言う。

アクターズ・スタジオでは、学生のために俳優たちは正直に語る。
だからこそ、多くの人が感銘を受けてきた。 

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大友美有紀 14年4月6日放送

140406-01

「長新太」ペンネーム

絵本画家、イラストレータ、漫画家。
多彩な肩書きを持つ、ナンセンスの作家。
長新太。

最初の仕事は、映画の看板描き。
22歳の時、「東京日日新聞」の懸賞漫画に応募。
「ロング狂」という作品が当選する。
ロングスカートがテーマの作品で、
「ロング」で「長」、新人だから「新」、
太くたくましくいきなさいと「太」。
当時のデスクが命名したペンネームだった。

以来77歳で亡くなるまで、長新太として
絵を描き続けた。

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大友美有紀 14年4月6日放送

140406-02

「長新太」安い絵本

絵本作家、長新太。
生涯で手がけた子どもの本は400冊を越える。
信じられないほどの多作。
73年のエッセイで、安い絵本をつくりたいと言っている。

 絵が良くて、高価な絵本もいいと思うけれど、
 わたしは少し印刷が悪くても、
 というより、たくさんのインクを使用しなくて、
 二色ぐらいでも、それから少しぐらい紙がわるくとも、
 安い絵本がもっとつくれないかな、と思っているのです。
 本屋さんの前のクルクル廻るケースに入っている、
 いわゆる「百円絵本」によいものが出てきてほしいのです。
 そうして百円絵本が子どもたちに広く読まれることをねがう。
 絵本は百円ぐらいで買えなくてはいけない、と思うのです。

多作の影には、こんなねがいが隠れていたのかもしれない。

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大友美有紀 14年4月6日放送

140406-03
Norihiro Kataoka
「長新太」ナンセンス

ナンセンスの絵本作家、長新太。
彼の絵本を見て、なんで子どもが喜ぶのかわからない、
という母親がいっぱいいるという。
たまに自宅にまで電話がかかってきて、
「動物の色が普通と違う」と言われることもあった。
彼は、絵本はお母さん方にわからなければいけない、という。
子どもの本は、お母さん経由で子どもに届くことが多いからだ。

 ぼくの本がわからない、というお母さん方が、
 こわいわけよ。
 それは、ぼくの絵本が子どもに届かないことになるし、
 もっと言うと、ナンセンスとかユーモアを、
 おとながわかりにくくて、子どもに届けない、
 ということになる。
 ところがほんとうは子どもの方がすぐわかっちゃうわけ。

長新太のナンセンスは日常的なものではなく、
抽象であって、シュールレアリズム的なナンセンスだ。
理解するのではなく、楽しむものである。

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大友美有紀 14年4月6日放送

140406-04

「長新太」生理的にここちよい

絵本作家、長新太の「アブアアとアブブブ」という本。
アブの兄弟が、巻いてある紙をパッと誰かの顔の前にたらす。
アブたちはこれをやると気持ちがスーッとする。

 生理的に心地よいということが、
 なににおいてもいちばん大切じゃないか
 という気持ちが、ぼくは非常に強いわけよ。
 それによって、いろいろなことがことが
 決まるんじゃないかと思うんです。

色彩やフォルムも、意識してつくり出すというよりは、
川の流れみたいに自然にそうなってくる、
ひとりでにそうなってくるものこそ大事にしたいと考えていた。

ちなみに、アブアアがおとうとで、アブブブがおにいさん。

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大友美有紀 14年4月6日放送

140406-05
izamu
「長新太」アニミズム

ナンセンスの絵本作家、長新太。
ある講演会で、生まれ変わったら何になりたいか、という質問に、
イカやタコが好きだから、イカやタコになりたいね、と答えた。
それは冗談でなく、本気に近い気持ち。
幼い子が「大きくなったら新幹線になりたい」という気持ちと同じようなもの。
長新太の発想は、自然界のすべてのものに霊魂や精霊が宿るという
「アニミズム」のようなものだ。

 大げさにいうと、机も椅子もコップにしてもフォークにしても
 すべて命があるという感覚があって、
 別に人間だけがいきてるんじゃない、という感じが
 ぼくは非常に強いです。

人間の内蔵だって自分でコントロールできない。
みんなそれぞれ生きていて、自我意識があると思っている。
彼の本には、お尻だけ「ポコリ」とはずれて外出してしまったり、
心臓がとんでってテレビ局に行ってしまったり、
下半身だけが先に歩き出してしまうお話もある。

長新太を本当に理解できるのは、子どもだけかもしれない。

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大友美有紀 14年4月6日放送

140406-06

「長新太」ちへいせんのみえるところ

ナンセンスの絵本作家、長新太は、
だだっ広いところが好きだった。

彼の作品には地平線、水平線が多い。

紙がある。
刷毛でうすいクリーム色の下地をつくる。
そして、横に一本線を引く。
漫画のコマ割りの線を描く。
そして、コマに横線を一本引く。

絵本「ちへいせんのみえるところ」は、
全ページ、同じ位置に地平線が描かれている。
けれども全部の絵が別の絵だ。
ページをめくると、同じようで微妙に違う地平線。
そこに男の子が出てきたり、ゾウが出てきたり、船が出てきたり。

言葉は、「でました」だけ。

何が出てくるか、ページをめくるたびにドキドキする。
読む人のドキドキを思い浮かべて、
長新太はニヤニヤしていたかもしれない。

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