名雪祐平 19年3月30日放送
跡地に誰かいた
2016年、リオオリンピックで、
華やかな開会式を行った
マラカナン・スタジアム。
オリンピックからわずか半年で、
美しさを誇った緑の芝生は枯れ果て、
数千もの座席が何者かに破壊され、
TVモニターなど盗めるものは盗まれた。
巨額な未払いの電気代や
経営の分裂などの理由で
いまも閉鎖状態となっている。
2020年、東京のあと。
施設の維持費の合計は
いったい、おいくら?
おしえてください。
名雪祐平 19年3月30日放送
mtchlra
跡地に誰かいた
ニューヨーク、ヤンキースタジアム。
その隣りに、
旧ヤンキースタジアムの跡地があり、
普通の草野球場になっている。
1923年からここで、
伝説の名プレイヤーたちが活躍した。
ベーブ・ルース、
ルー・ゲーリック、
ミッキー・マントル……。
彼らは、いま同じ場所で
ボールを投げ、打つ子どもたちを
見守っているのかもしれない。
外野には、こんな文章が掲げられている。
SOMETIMES YOU WIN
SOMETIMES YOU LOSE
SOMETIMES IT RAINS
勝つときもあれば
負けるときもあるさ
雨も降るしね
名雪祐平 19年3月30日放送
fabfotophotography
跡地に誰かいた
ニューヨーク、グラウンド・ゼロ。
9.11同時多発テロで崩壊した
ワールドトレードセンタービル跡地。
水が流れ落ちる巨大な2つのプールがある。
犠牲者を慰霊する
サウスプールとノースプール。
プールを取り囲むブロンズには、
1993年の爆破テロ事件の
犠牲者もふくめ、
2983名の名前が彫られている。
名前はアルファベット順ではなく、
亡くなった場所、日時などでわけられ、
ネット上でどこかを調べることもできる。
いくつかの彫られた名前に、
一輪の白いバラがさされ、
風に揺れていた。
澁江俊一 19年3月24日放送
時を超える野菜
亀戸大根に練馬大根
千住葱
谷中しょうが
小松菜
のらぼう菜・・・
江戸野菜と呼ばれる
野菜たちをご存じだろうか?
その多くは
参勤交代で江戸にやってきた
全国各地の大名たちが
地元の味を懐かしく味わうために
種を持ち込んで庭で育てたことから
広まったと言われている。
日本各地の味を
遠く離れた江戸の地で
味わうために生まれた江戸野菜は
日本の歴史の味がする。
今は江戸東京野菜と呼ばれ
50種類近い野菜が登録されている。
江戸と東京をつなぐ悠久の時間に
想いを馳せながら
ゆっくりとかみしめてみたい。
澁江俊一 19年3月24日放送
きんちゃん
酒米の王様
山田錦。
日本酒好きならぜひ覚えてほしい
酒米の王様と呼ばれる品種である。
日本酒に使用するのは
米の中心部「心白(しんぱく)」がほとんどだが
山田錦の心白は雑味となるタンパク質が少なく、
吸水性・消化性が抜群にいい。
これにより麹菌糸が繁殖する度合いが高くなり、
質の良い麹ができあがっていく。
大正12年。
兵庫県明石市の県立農事試験場で
人工交配により生まれた種子が
試験を繰り返して昭和11年に山田錦と命名された。
世界中にファンが増えている日本酒。
山田錦はアメリカでの栽培も
進んでいるらしい。
海のむこうで戦っている日本代表は
スポーツ選手だけではないのだ。
澁江俊一 19年3月24日放送
MarvinBikolano
ソウルフードの原点
陸羽132号
というお米の名前を
聞いたことがあるだろうか?
日本で初めて
人工交配で生まれた品種で
大正10年に秋田県の
農事試験場陸羽支場で育成された。
寒さに強く、
おいしいけれど病気に弱い「亀の尾4号」と
病気に強い「陸羽20号」を
交配してつくられた陸羽132号。
交配はハサミとピンセットを使った根気のいる作業。
風に邪魔されないよう温室で行うのだが、
真夏の温室はまさに灼熱地獄。
得られた種子はたった2粒だったという。
翌春に見事その種子は発芽し、
品種改良を進めることができた。
昭和6年にはじまる大冷害にも
よく耐えて実りをもたらした。
あの宮沢賢治も陸羽132号をほめたたえたという。
私たちが食べている
コシヒカリもあきたこまちもひとめぼれも
この陸羽132号のいわば子孫である。
偉大な祖先に、感謝。
澁江俊一 19年3月24日放送
サイトウ
どちらが支配者か
人類にとって
最も価値ある農作物のひとつが、
小麦であることは間違いない。
パンやパスタやピザ
クッキーやケーキなど
大昔から世界中で
食文化の中心を担っている小麦。
人類がここまで繁栄したのも
小麦のおかげ…と言いたいところだが、
人類を奴隷にして繁栄したのは
小麦のほうだという
まったく逆からの視点で語る学者もいる。
小麦はもともと競争力が弱く、
中東のごく限られた地域に自生する草にすぎなかった。
栽培にも手間のかかる小麦が
今や日本の面積の6倍ほども地表を覆っている。
なるほど人類を利用することで
大繁栄を成し遂げたとも言える。
小麦はなかなかしたたかな
植物なのかもしれない。
田中真輝 19年3月24日放送
Valcenteu
立ち上がる農業
今、世界中でスタートアップ企業が農業における
イノベーションに果敢に挑んでいる。
その一つが、都市における「垂直農業」。
狭い敷地に垂直方向に栽培棚を積み上げ、
土を使わず水耕栽培を行うことで、
効率的かつスピーディに野菜を育てる農業が、
ニューヨークなど大都市で実際に行われ、注目を集めているのだ。
食の工業化への批判もある一方で、
栽培や収穫のプロセスをオープンにできるので、
むしろ安全だという声も少なくない。
2050年には、世界人口の7割が都市部に住むようになるという。
遠方から取り寄せた野菜ではなく、
自分が住む街の中で管理され生産される野菜の方が安心できる、
人々の嗜好も、そのように変化していくのかもしれない。
田中真輝 19年3月24日放送
Lifetec18
自動化する農業
日本の農業従事者は、今、急速に減少し、高齢化している。
この喫緊の問題に対して、多くの人々や企業が挑戦を続けている。
その一つが、農業機械の自動運転。
昨年末、人気を博した連続ドラマでも、
自動運転トラクタの開発競争がテーマとして取り上げられていたのを、
ご存知の方もいらっしゃるかもしれない。
ドラマはフィクションだが、自動運転トラクタは、
既に実用化されているれっきとした事実。
衛星からのGPS信号を受けて夜間でも
数センチの誤差の範囲で作業が可能だという。
近い将来、誰もいない広大な圃場で、自動化された農業機械が
黙々と働き続ける風景が、当たり前のものとなるかもしれない。
願わくば、その傍らに農業の使命に燃える若者の姿があって欲しい。
田中真輝 19年3月24日放送
Tpa2067
宇宙で育てるなら
火星に長期滞在する宇宙飛行士が栽培すべき食用植物とは何か。
それば「ウキクサ」である、
というのが日本の研究者が提案した答え。
和名「アカウキクサ」学名「アゾラ」という水生シダ植物は、
驚くほど栄養価が高く、また、米や魚と一緒に水耕栽培することで、
空気や水を浄化するエコシステムを作ることができるという。
加えて窒素を固定する能力を備えているので、
米など他の作物の育成に欠かせない窒素肥料が
不要になるというおまけつき。
そんなミラクルな植物であるアゾラだが、一つだけ問題が。
食用にあたってはその匂いが問題になるだろう、
と研究者は指摘しているのだ。
宇宙だけに「くうき」がなくなる話ではある。