森由里佳 19年1月13日放送
djwtwo
酒の肴 竹鶴政孝のお気に入り
ニッカウヰスキーの創業者、竹鶴政孝。
スコットランドで修行をつんだ竹鶴が、
好んで飲んだウヰスキーは何でしょう?
それは当時1本500円という安さで人気を博した「ハイニッカ」。
では、竹鶴が好んだ酒の肴は?
それは、くちどけ滑らかなチョコレートでもなければ、新鮮な牡蠣でもない。
極薄焼きの小さな四角い煎餅だという。
醤油の香ばしい香りと程よい塩味が、
パリパリと小気味よい音と共に、ウヰスキーの香りを引きたてたに違いない。
ウヰスキーと煎餅のマリアージュ。
竹鶴の、この意外なエピソードは、
いつかあなたの酒の肴になるかもしれません。
厚焼玉子 19年1月12日放送
麒麟坊
歌会始
宮内庁の記録を読むと
宮中で行われていた新年の歌会始に
一般人が参加できるようになったのは
1874年、明治7年のことらしい。
当時は歌会始ではなく
歌御会始(うたごかいはじめ)と呼ばれていた。
歌御会始が歌会始になったのは昭和3年からだ。
1962年1月12日
歌会始にとって画期的な出来事があった。
初めてのテレビ中継である。
初めて一般の参加が認められた
明治7年の応募が4139首。
いまは2万首を超える応募があるのも
テレビの影響かもしれない。
厚焼玉子 19年1月12日放送
歌会始
明治2年、15歳の少年だった明治天皇は
歌会始でこんな歌を詠んだ。
千代よろづ 変わらぬ春のしるしとて 海辺を伝う 風ぞのどけき
この年のお題は
「春風来海上」(春風、海上より來る)
翌年は「春来日暖」(春来たりて日あたたかし)
漢字ばかりのお題は
意味はわかっても読み下すのがむづかしいが
当時の歌会始は天皇とその側近だけで行われていたので
格別の支障もなかった。
このお題が誰にでもわかるやさしいものになったのは
戦後の昭和22年からだ。
ちなみに今年は「光」
16歳の高校生も入選を果たしている。
厚焼玉子 19年1月12日放送
歌会始
歌会始に使われる言葉はむづかしい。
天皇陛下の歌は「御製(ぎょせい)」
皇后陛下の歌は「御歌(みうた)」
司会役を「読師(どくじ)」
歌を読み上げる役を「講師(こうじ)」
天皇から招かれて歌を詠む人は「召人(めしうど)」
歌会始のテレビ中継はあっても
ラジオ中継がない理由がよくわかる。
歌会始で発表される歌は
まず読み上げられ
それから節をつけて歌われる。
聞きなれない言葉やメロディは
千年の昔から伝わる文化でもある。
厚焼玉子 19年1月12日放送
歌会始
歌会始にはお題がある。
とはいえ、歌の種類は多岐にわたる。
風景を詠んだ歌、出来事を詠んだ歌、
季節の歌、そして恋の歌。
そういえば、と気づくことがある。
天皇には恋の歌がない。
歌会始に限らず、恋の歌がない。
10万首の歌を詠んだ明治天皇でさえ
ごく数首が数えられるくらいだ。
恋の歌をお読みになれないお立場なのだと
今更ながらに気づくのだ。
厚焼玉子 19年1月12日放送
歌会始
太平洋戦争がはじまった翌年の昭和17年、
歌会始に一般から寄せられた歌は
46106首にも及んだ。
空前絶後の応募数だった。
激動の時代に
人は思いを歌に託すのだろうか。
この年のお題は「連峰雲(れんぽうのくも)」
昭和天皇はこんな歌をお読みになっている。
峰つづき 覆うむら雲 吹く風の 早く祓えと ただ祈るなり
厚焼玉子 19年1月12日放送
歌会始
人々が集まって同じお題で歌を詠み、披露する歌会。
年のはじめに開かれる歌会始は
宮中の行事として長い歴史を持っている。
明治時代から一般の応募を受け付け、
昭和の中ごろからテレビ中継もされている。
2万を超える応募がある。
外国人で入選した人もいる。
最年少は12歳だ。
今年、平成最後の歌会始は1月16日。
お題は「光」
新しい時代をどんな光が照らすのか
楽しみではある。
大友美有紀 19年1月6日放送
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「雪国の暮らし」ケの汁
平成最後の正月、お節料理やお雑煮、
楽しみましたか?
青森県、津軽地方にケの汁という
郷土料理があります。
大根、にんじん、ごぼうなどの根菜類、
ワラビ、ゼンマイなどの山菜、
油揚げや凍み豆腐などを煮込んで醤油や味噌で味を付けます。
家庭によって味付けや具は違うのでしょうけれど、
大晦日につくって、正月は餅を入れて、
雑煮のようにして食べるといいます。
「ケ」は、粥、飢饉の飢、会うという字の会から
来ているなど、諸説あります。
新鮮な野菜が手に入らなかった雪国の正月、
囲炉裏にかけた大鍋でケの汁をグツグツ煮込む。
それを囲んで親戚が集う。
かつてはそんな光景があったのかもしれません。
大友美有紀 19年1月6日放送
「雪国の暮らし」キドい山菜
キドい、という方言があります。
においや刺激が強い、という意味のようです。
山形のある地方では、
キドい山菜を食べて冬の穢れを落とす、といいます。
キドさの強い山菜には、血行を良くしたり、
便秘を解消する作用がある。
冬の穢れ、つまり、冬の間にたまった悪いものを
山菜のキドさが除いてくれるというのです。
その昔、雪国では冬の間、生野菜が手に入りにくく、
食のバランスを欠くこともありました。
膨満感や閉塞感、鬱屈なども感じてしまいます。
それを解放してくれるのが、キドい山菜。
コゴミ、ワラビ、ウド、ふきのとうなど。
雪国でなくても、冬は憂鬱な日が多いですよね。
鬱憤がたまったら、キドい山菜、ためしてみませんか。
大友美有紀 19年1月6日放送
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「雪国の暮らし」ツララ
都会ではめったにみることができないツララ。
最近は雪国でも、
太くて長いツララを見かけることは
少ないそうです。
地球温暖化の影響もあるかもしれません。
萱葺き屋根が減ってきたこともひとつの原因です。
トタンや瓦、スレートの屋根には太くて長いツララは
つきにくいのだそうです。
萱を伝って、少しずつ落ちる雪水が、
夜ゆっくりとツララに育っていくのです。
富山のある地方では、ツララのことを
カネコロと呼びます。
金氷の意味なのでしょう。
カネコロ落としは、朝早くやると危ないからと、
10時ぐらいにお年寄りが竹の棒で叩いて落としたそうです。
カネコロを叩くと、美しい音がして、音楽のようだったともいいます。
澄んだ空気の中に響く、ツララの音色。
冬にだけ聞くことができる、自然の音楽です。