佐藤延夫 18年12月1日放送
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Christmas Sweets シュトレン
切り口がトンネルのような形をしているため、
ドイツ語で「坑道」という意味を持つ。
それはクリスマス定番のお菓子、シュトレン。
洋酒に漬け込んだドライフルーツ、
ナッツなどが練りこまれ、
表面には真っ白な粉砂糖がまぶされる。
クリスマスの4週間前から薄くスライスして食べるのが
本場ドイツの習慣となっている。
一気に、ではなく、少しずつ楽しむ。
さすがヨーロッパのクリスマスは、歴史が違う。
佐藤延夫 18年12月1日放送
RGloucester
Christmas Sweets ダンディー・ケーキ
焼いたバターケーキの上には、アーモンドが放射線状に並ぶ。
イギリスのクリスマスで定番のお菓子といえば、
ダンディー・ケーキが挙げられる。
スコットランドのダンディー地方で生まれたケーキは、
オレンジの風味が特徴だ。
18世紀、地元のマーマレードメーカーが、
当時手に入りやすかったオレンジとアーモンドを使ったケーキを考案し、
ブームになったという。
流行も、長く愛されると、伝統になる。
佐藤延夫 18年12月1日放送
John Orford
Christmas Sweets クリスマス・プディング
イギリスのクリスマス。
デザートには、クリスマス・プディングが登場する。
プラム・プディングとも呼ばれるが、
材料にプラムは含まれていない。
一般的なプリンとは違い、
ずっしりと重く、濃厚な味わいを持つデザートだ。
材料には、レーズンなどのドライフルーツ、
スエットという牛のケンネ脂、
ブランデーなどのアルコール、
シナモンやナツメグなどのスパイスが加えられる。
ちなみに15世紀には、牛肉や玉ねぎなどで
作られていたそうだ。
佐藤延夫 18年12月1日放送
Mitantig
Christmas Sweets ビュッシュ・ド・ノエル
フランス生まれのクリスマススイーツといえば、
ビュッシュ・ド・ノエル。
クリスマスの薪、という意味だ。
丸太や薪をクリスマスに燃やす風習は
昔からヨーロッパ各地にあり、
その炎には神秘的な力が宿ると信じられていた。
ビュッシュ・ド・ノエルがお菓子に変わったのは、
19世紀後半と言われている。
「クリスマスが終わっても、希望の炎は消えないように。」
大きな暖炉も、本物の丸太もいらないお菓子にすれば、
どんな家庭でも、その願いは叶えられる。
今や世界中で、クリスマスの美味しい丸太が出回っている。
佐藤延夫 18年12月1日放送
Nicola from Fiumicino (Rome), Italy
Christmas Sweets パネットーネ
イタリアのクリスマスで代表的なスイーツは、
ミラノ生まれのパネットーネ。
ドーム型の柔らかい菓子パンで、
レーズン、オレンジピールなど
ドライフルーツが混ぜ込まれている。
生地は、イースト菌ではなく、
仔牛の小腸からとれるパネットーネ酵母で発酵させる。
天然の保存料にもなるため、常温で3ヶ月もつという。
最近は日本でも手に入りやすくなった、パネットーネ。
今年はミラノ風クリスマスを楽しんでみませんか。
薄景子 18年11月25日放送
靴のはなし ハイヒールのルーツ
ハイヒールというのは、
おでこにキスされた女性が発明したもの。
そう言ったのは、アメリカの作家、クリストファー・モーレー。
なんてロマンチックな言葉だろう。
しかし、実際のルーツには諸説あり、
ファッションとしてのハイヒールが生まれたのは16世紀のこと。
太陽王と呼ばれたルイ14世が
背を高く見せるために履きはじめ
脚線美を競うのに欠かせないアイテムに。
「ルイヒール」と呼ばれたその靴が
今のハイヒールの原型となる。
意外にも女性の靴として
定着したのは20世紀に入ってから。
足元を魅せるファッションの広がりとあわせて、
ハイヒールは世界に広まっていく。
コツコツと鳴る高い音。
あぶなげでセクシーな曲線美。
ハイヒールは、もはや女性そのものより
女の魅惑を秘めている、かもしれない。
石橋涼子 18年11月25日放送
Photo by Nick Harris1
靴のはなし 靴にまつわるジンクス
幸運を呼ぶアイテムは、世界中の国ごとで様々にある。
ヨーロッパでは、靴が幸運の象徴になることが多い。
玄関にベビーシューズを飾ると
幸運が訪れるという言い伝えがあったり。
マザーグースに由来すると言われているジンクスで、
花嫁の左の靴に6ペンスコインを忍ばせると、
その花嫁はお金に困ることなく結婚生活を送れる
というものもある。
日本にも地方によって様々だが、
新しい靴は3回靴底を合わせて叩くと幸運がやってくる、
などのおまじないがあるという。
幸運も大事だが、靴は身だしなみの一部、という
大人のたしなみも広く知られているところ。
とはいえ休み明けの朝など、慌ただしさのなかで
足先まで気が回らない日もある。
そんなときは、フランスに古くからあるジンクスを思い出そう。
素敵な靴は、あなたを素敵な場所へと導いてくれる。
石橋涼子 18年11月25日放送
靴のはなし
It isn’t the mountain ahead that wears you out;
it’s the grain of sand in your shoe.
人の気力を奪うのは、行く先に横たわる山々ではなく、
靴の中の砂粒である。
これは、イギリス生まれの詩人、
ロバート・W・サーヴィスの言葉。
意気揚々と踏み出した最初の一歩に違和感があると、
あとはもう気になってしようがないのが、人情というものだ。
しかし、そういった小さなトゲのような悩みは
意外と他人にはわかってもらえないもの。
英語のことわざに、こんな言葉がある。
Only the wearer knows where the shoe pinches.
靴のどの場所が痛むかは、履いているものしかわからない。
苦労は他人にはわからない。
靴の中の小石を取り除き、再び歩き出すことは、
自分にしかできないことなのだ。
だからだろうか。
良い表情で歩いている人は、良い見栄えの靴を履いている。
しょんぼり歩く人は、しょんぼりした靴を履いている。
オシャレな人が多いイタリアのことわざでは、
靴は、その人の人格を表す。
という。
熊埜御堂由香 18年11月25日放送
靴のはなし ブレア氏の高い靴
元イギリス首相のトニーブレアは
1997年の首相就任以来、定例の議会質疑応答で、いつも同じ靴をはいていた。
「安い靴は不経済だからね」と冗談交じりに語っていたそうだが、
その靴を18年間履き続けた。
さて、その靴のお値段は?
イギリスの老舗靴メーカー、チャーチでブレア氏が購入した当時は、
150ポンド、約3万7千円で売られていた革靴だそうだ。
今ではそのモデルは、約7万円で売られているという。
ブレアが履き続けることで靴の価値も上がったのだろうか。
いずれにせよ、一つの靴を大事に、大事に履き続ける。
その行為には、ブレア氏の素敵な生き方が宿っている。
熊埜御堂由香 18年11月25日放送
靴のはなし シューシャイナー井上源太郎
靴磨きは近頃では「シューシャイン」と呼ばれ、
2017年には靴磨きをするシューシャイナーの
技術を競う世界大会も行われている。
そんな靴磨きのステータスがピカピカに磨き上げられる前から、
「SHOE SHINE」という小さな靴磨きのお店を営む人がいる。
今年73歳になる井上源太郎さんだ。
今まで、歴代首相や、来日したビートルズやマイケル・ジクソンなど
名だたる著名人の靴を磨いてきた。戦後、ホテルのボーイ時代に将校たちの靴磨きを買って出たところ瞬く間に評判になった。
フランスの名門ブランド、ベルルッティにスカウトされ
専属の靴磨きアーティストとして、5年間活動したのちに、
2005年末に「SHOE SHINE」を開店した。
靴磨きは奥深いものじゃない、誰でもできる。
井上さんはそう語っている。
ただうまく磨けた時、お客さんの顔がパッと輝く、それが嬉しい。
だから今日も、世界で一番有名なシューシャイナーは店に立ち続ける。