小野麻利江 18年11月25日放送

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Prioryman
靴のはなし 「小さな軍靴」というあだ名で呼ばれた皇帝

「靴」という意味をあだ名に持つ、ローマ皇帝がいた。

ローマ帝国第三代皇帝・カリグラ。
本名は、ガイウス・ユリウス・カエサル・アウグストゥス・ゲルマニクス。
皇帝に即位してしばらくは穏健な君主だったが、
その後、暴君へと変貌し、
「残忍で狂気じみた独裁者」として、後世に伝えられている皇帝だ。

彼のあだ名「カリグラ」は、「小さな軍隊用の靴」という意味。
カリグラは2、3歳の頃から、父ゲルマニクスの軍事作戦に同行。
そのさい、甲冑から靴にいたるまで、
特別仕立てのミニチュアの軍服を身につけていたという。
「小さなローマ兵」の姿をしたカリグラの様子を
兵士たちが面白がり、
軍のマスコットとして愛された、という逸話が残っている。

古代ローマ時代の靴は、足首を革紐で固定させる
サンダルの形をしているものが主で、
軍隊用の靴は、1000キロ以上の行軍にも耐えうるよう、
靴の底に、100個近くもの鉄の釘が打ち込んであったそう。

幼いカリグラが履いていた靴に、
そこまでの大掛かりな補強が施されていたかはわからないが、
その後の彼の人生が、
壮絶な道を歩むことになったことは、確かである。

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茂木彩海 18年11月25日放送

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Photo by Sailko
靴のはなし オードリー

ブランドに詳しくない人でも一度は耳にしたことがあるであろう
「サルヴァトーレ フェラガモ」。

その歴史は1927年と古く、フェラガモがわずか11歳の時に靴屋を開業。
その後24歳で自身の店舗をもつようになってからは、
解剖学を学び、足に触れただけで客の体調がわかったと言われている。

デザイン性と機能性を併せ持つフェラガモの靴は
当時の映画スターから注目を集め、
マリリン・モンローやソフィア・ローレンなど名だたる女優から支持を受けた。

なかでもオードリー・ヘップバーンは
生涯フェラガモがつくった靴しか履かなかったと言われているほどの大ファン。

そんな彼女に答えるように、フェラガモも彼女のための靴をつくっている。
靴の名前は「オードリー」。

細身のストラップが付いたフラットのバレエシューズは
動きやすくシンプルなのに、どこか上品。

ブレない芯を持ちながら、しなやかに生きる彼女の名前に
フェラガモは彼の靴づくりにおける美学を込めたのだろう。

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茂木彩海 18年11月25日放送

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靴のはなし 世界で一番古い靴

10年前、アルメニアの洞窟で
5500年前の革靴が発見された。

靴の底には断熱材と思われる草が敷き詰められ
パーツは皮ひもでしっかり縫い合わされ、
贅沢にも牛の一枚皮で作られていた。
あまりに現代的なデザインが、学者たちを驚かせた。

靴のサイズは24.5センチ。
当然、誰が履いていたのか気になるところだが、
時代背景からメソポタミア文明を築いた
シュメール人ではないかと考えられている。

ところがこのシュメール人、
高度な文明を持つものの民族系統が不明の謎の民族。

靴作りの技術をいったいいつ、どこで、どうやって学んだのか。
毎日履く靴にすら、謎は多い。

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名雪祐平 18年11月24日放送

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Photo by Andrey Câmara on Unsplash
種の起源

バナナの遺伝子と、
ヒトの遺伝子。
その約60%は共通しているという。

全ての生物は、
一種、あるいはほんの数種の祖先から
進化したもの。

チャールズ・ダーウィンは
『種の起源』の中で、そう論じた。

運が良いのか、悪いのか。
わたしたちは
バナナにならず、ヒトになった。

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名雪祐平 18年11月24日放送

181124-02

種の起源

戦争でも、天変地異でもなく、
一冊の書物が、
世界をひっくり返すことがある。

159年前のきょう、11月24日。
チャールズ・ダーウィン
『種の起源』が出版された。

その直筆原稿が
ウェブサイト darwin-onlineで
公開されている。

一冊の革命を見よ。

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名雪祐平 18年11月24日放送

181124-03
©️ Linda Hall Library
種の起源

1831年、ダーウィンは
イギリス軍艦ビーグル号に乗った。
生物学史上、最も重要な航海となる。

絶海のガラパゴス諸島で、
フィンチという鳥を見て、
ダーウィンはショックを受ける。

くちばしの形状が、島ごとに異なっていたのだ。
島によって違う餌を捕まえやすいように。

これは神様が、最初から島ごとに創造した鳥なのか。
それより、島ごとに独自に進化した結果ではないか。

そんな疑問が、
進化論『種の起源』の着想につながった。

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名雪祐平 18年11月24日放送

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種の起源

われわれは、どこから来たのか。

この世の全ては、神様が創造したもの。
というキリスト教的な考えは、
根強く信じられていた。

この神の創造説を、
真っ向否定するダーウィンの進化論
『種の起源』は衝撃だった。

英国国教会は、激しく非難した。
サルの祖先と一緒にするな!

ダーウィンは皮肉った。
 
 この理論が受け入れられるのには、
 種の進化と同じだけの時間がかかりそうだ。

ようやく150年後、英国国教会は
これまでの誤りをダーウィンに謝罪した。

ダーウィンの予想よりは早かったが。

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名雪祐平 18年11月24日放送

181124-05
Photo by Franck V. on Unsplash
種の起源

人は神になろうとするのか。

人工知能や生命工学など、
テクノロジーの進化が止まらない。

膨大なビッグデータをさらに膨張させながら、
遺伝子を組み換え、臓器を再生し、
不老不死へ近づくのか。

ダーウィンが『種の起源』を
発表してから159年。

どこかで新しい種の起源が
もう始まっているのかもしれない。

わたしたちは、
ほんとうに進化しているのか。
それとも、退化し、滅びるのか。

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佐藤日登美 18年11月18日放送

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AIと絵画

2018年10月25日。
歴史あるニューヨークのオークションで、
AIが描いた絵画が落札された。
その価格、なんと43万2500ドル。
日本円にして4,800万円にもなる。

描かれているのは、黒い服を身にまとった紳士。
彼の塗りつぶされた顔は、描きかけのようにも見える。

この絵を手がけたのはフランスのアート集団、Obvious。
14世紀から20世紀に描かれた肖像画1万5000点を読み込んだ結果、
生まれた作品だという。

絵画の右下には、
アーティストの署名の代わりに数式が刻まれている。

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佐藤日登美 18年11月18日放送

181118-02
Gwydion M. Williams
AIと小説

「きまぐれ人工知能プロジェクト 作家ですのよ。」

このプロジェクトは、
「ショートショートの神様」と呼ばれた小説家・
星新一が書いた短編を解析し、
新たな物語をAIに書かせる、という試みである。

公立はこだて未来大学が進めるこの活動、
星新一の次女である星マリナはこう話す。

 人工知能によって、父の作品と同程度の、
 またはそれ以上の作品ができる日が来たら、そのとき、
 うれしいのか、悲しいのか、こわいのか、想像がつきません。

発想力だけは、人間のものであってほしい。
そんな気もしてしまう。

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