佐藤理人 18年11月17日放送
巴里の灯
世界で初めて飛行機で大西洋を横断した、
チャールズ・リンドバーグにはもう一つの世界初があった。
それは人工心臓の開発。
彼には心臓弁膜症に苦しむ姉がいた。
機械で全身に血液を送ることができないか
アメリカ初のノーベル賞受賞者アレクシス・カレル博士と協力し、
1935年、「カレル・リンドバーグポンプ」の開発に成功。
残念ながらその前年、姉は帰らぬ人になってしまったが、
彼は心臓病に悩む大勢の人の希望に灯をともした。
田中真輝 18年11月11日放送
Photo by Josh Wilburne
漆黒の誘惑
秋と言えば食欲の秋。
食欲をそそる香り、と聞いてあなたが
思い浮かべるのは、どんな香りだろう。
焼き鳥屋や、焼きトウモロコシの屋台から
流れてくる、香ばしい匂い。
あの焦げたしょうゆの香りを思い浮かべた人も
多いのではないだろうか。
実はしょうゆの香りは非常に複雑。
ウイスキーやコーヒー、バナナやリンゴ、
バラなどの香り成分がなんと300種類も
含まれているらしい。
複雑で豊かな香りが立ち上る漆黒のスパイス。
今日も、その香りの誘惑に負けた人々が、
嬉しそうにのれんをくぐっていく。
澁江俊一 18年11月11日放送
食欲と落語
秋と言えば食欲の秋。
人間の「食べたい」という
抑えがたい欲望を見事に描いた
古典落語「千両みかん」。
病に倒れ、みかんを食べたいと願う
若旦那のため、真夏にも関わらず
探し回る番頭。
ようやくひとつだけ見つけた
腐っていないみかんには
なんと千両もの値がついてしまう。
それでも旦那はせがれを救うため
惜しげもなく大金を投じる。
念願果たした若旦那の
食べ残したわずかなみかんを
思わず持ち逃げする番頭・・・
笑いながら聞いているうちに
なんともみかんが食べたくなる、
粋な噺である。
澁江俊一 18年11月11日放送
Cea.
食欲と神様
秋と言えば食欲の秋。
食欲は性欲や睡眠欲と並ぶ
人間の根源的な欲求だ。
今でこそ食欲旺盛な人は多いが
かつて宗教は食欲を
良からぬものとみなしていた。
ブッダの言葉では
およそ苦しみが起こるのは、
すべて食料を縁として起こる。
諸々の食料が消滅するならば、
もはや苦しみの生ずることもない。
と断食を大切な修行の一つとするし、聖書にも
あなたが食欲の盛んな人であるなら、
あなたののどに短刀を当てよ。
と食べ過ぎをたしなめる。イスラム教では
ラマダンという断食の期間があるほどだ。
いつでも食欲を満たせるのは幸せなこと。
でもだからこそ、時には食欲を我慢してみると、
意外な悟りが開ける…かもしれない。
田中真輝 18年11月11日放送
食欲色の季節
秋と言えば食欲の秋。
食欲と色との間に密接な関係があることを
ご存じだろうか。
赤や黄、橙などの暖色は人間の食欲を
促進する「食欲色」と呼ばれている。
また、赤の補色である緑も、差し色として
使うことで、強すぎる赤を抑えつつ、
お互いを引き立てることができる。
また、白や黒も日本人にとっては食欲を
そそる色。そう、それは白米と海苔の色。
一方、外国の人にとって、黒は食欲を損なう色。
カリフォルニアロールが海苔を内側に
巻き込んでいるのは、それが理由なのだ。
秋といえば紅葉。まさに食欲色に色づく季節。
食欲の秋と言われる理由はそのあたりにも
あるのかもしれない。
澁江俊一 18年11月11日放送
aron1937
食欲と進化
秋と言えば食欲の秋。
この食欲とどう向き合うかが、
人類の進化につながったという説がある。
サルはエサをはさんで向かい合うと
弱いほうが手をひっこめる。
強い者が独占する。それがサル社会のルールだ。
しかし類人猿は食物を分配する。
しかも弱いほうが強い方に
それをねだって獲得するのだ。
類人猿のルールでは
サルとは真逆の方向に食物が移っていく。
人間はもっと気前よく
相手と一緒に食べようとする。
だからこそ助け合う関係が生まれた。
こういう説を聞くと
人間って捨てたもんじゃないと思えてくる。
さて今夜は誰と、何を食べようか?
田中真輝 18年11月11日放送
erin & camera
カワイイ臓器
秋と言えば食欲の秋。
お腹いっぱい食べて満腹のはずなのに、デザートを
見ると食べたくなる。いわゆる「別腹」。
もちろん、胃袋が二つあるわけもなく、
この別腹、いったいどこにあるのか。
実は人間の食欲は、脳からの命令によって
コントロールされている。
大好きな食べ物を見ると、脳の視床下部から、
「オレキシン」というホルモンが分泌され、
このホルモンが、胃袋の蠕動運動を刺激すると…
あら不思議。さっきまで一杯だった胃袋に
新たなスペースが生まれる、という仕組み。
英語ではdessert stomachとも言う別腹だが、
つまり、デザートに限らず、肉でも魚でも
大好物が出てくれば、別腹は生まれるということ。
食べたい気持ちに反応して頑張ってくれるなんて、
胃袋って、なんだかカワイイ臓器だな、と思えてくる。
田中真輝 18年11月11日放送
銀猫 夏生
おいしい一瞬
秋と言えば食欲の秋。
コマーシャルやテレビ番組などで、食品を美味しそうに
見せる映像を「シズルカット」と呼ぶ。
もっとシズル感を強く、というのは、
もっと美味しそうに、という意味だ。
この「シズル」という言葉、
肉がジュージュー焼けて、肉汁がしたたり落ちている
様子を表す英語が由来だという。
「シズル感」は、食品のコマーシャルではとても重要な要素。
一瞬で美味しそう!と思わせられるかどうかに
制作スタッフは心血を注ぐ。
ふわっと立ち上る湯気、グラスの表面を流れ落ちる水滴、
シズル感溢れる瞬間をとらえるために、何時間も撮影を
続ける。あなたが美味しそう!と感じたその一瞬は、
膨大な撮影素材の中の、一番おいしいひとくちなのだ。
澁江俊一 18年11月11日放送
shiniwate.kouhou
食欲と昆虫
秋と言えば食欲の秋。
少しだけ未来の食欲の話をしよう。
今、新たな食料として昆虫が
注目されているのをご存知だろうか?
コオロギやバッタ、芋虫など
タンパク質や脂質が豊富で
必要な栄養を満たす昆虫は多いという。
しかもアンモニアやメタンガスを出す家畜より、
地球にダメージを与えにくい。
蜂の子やイナゴなど
日本ではもともと昆虫をよく食べていたから
心理的ハードルは、意外と低いはずだ。
この星の人口は今後も増え続け
いずれは食糧難も予測されている。
人類が昆虫を見る目も、変わるべき時かもしれない。
厚焼玉子 18年11月10日放送
vicjuan
東京の紅葉
日比谷公園の木々は
11月上旬から色づきはじめる。
イチョウ並木にハナミズキの林、
藤棚の藤の葉も黄色に染まる。
鶴の噴水のあるあたりでは
黄色のイチョウと真っ赤なモミジが隣り合わせで
美しさを競う。
見ごろは今月の末から12月の初めだが、
木の種類によって美しさのピークが違うので
お昼休みに立ち寄れるかたは
どうぞお見逃しなく。