大友美有紀 18年10月7日放送
「低い山・近い山」 北区・飛鳥山
北区の飛鳥山。標高は25メートルほど。
東京の低地との境界、武蔵野台地の北端にある。
飛鳥明神神社が祀られていたことが山名の由来だ。
8代将軍徳川吉宗が1270本もの桜を植えさせた。
桜が根付いて、花が咲くようになると、
水茶屋をつくることを許可し庶民に開放した。
今でも飛鳥山は花見の名所として知られている。
江戸名所図会に「春花秋草夏凉冬雪眺あるの勝地なり」と記されている。
(しゅんか・しゅうそう・かりょう・とうせつながめ・あるの・しょうちなり)
富士山や筑波山を眺めることもできた。
近隣には王子稲荷や滝などの見どころもあった。
現在、飛鳥山には
ソメイヨシノ・サトザクラなどが約600本。
つつじは約10種・15000株。
京浜東北線沿いには、あじさいが約1300株。
芽吹き、花が咲き、新緑となり、葉が落ち、枝振りを楽しむ。
かつてと変わらず、四季を通じて訪れたくなる場所である。
大友美有紀 18年10月7日放送
Photo by Quercus acuta
「低い山・近い山」 横須賀市・鷹取山
神奈川・横須賀市と逗子市の境界近くにある、鷹取山。
標高139メートル。
石材採取の山だったため、垂直に切り立った岩壁と
岩峰(いわみね)が残っている。
なんとも奇怪な印象を受ける山だ。
鎌倉時代、三浦氏の領地で
猟師が巣立鷹を献上していた
太田道灌が鷹狩りに訪れていた。
鷹取の山名の由来はさまざまだが、
高いところを示す「タカットー」という言葉が
「タカトリ」となり、
猛禽類の鷹と取るの文字を当てたという説もある。
見上げる岩山に圧倒された思いが伝わってくる。
大友美有紀 18年10月7日放送
Photo by studio-IRONY
「低い山・近い山」 目黒区・西郷山
国道246号線を渋谷を背にして進み、
旧山手通りを左に入って少し行くと西郷山がある。
ここは正確には山ではない。
台地の端で、目黒からは登っていくことになる。
だから「山」と呼ばれていた。
下野した西郷隆盛のために
弟、従道(じゅうどう)が手に入れた屋敷があった。
地形を生かした広い庭園には、洋館、書院造りの和館などを配し、
回遊式とした。東京一の名庭園とも言われた。
今では西郷山といえば、桜の名所だ。
20メートル落差がある人工の滝や、
晴れた日には富士山が見える展望台もある。
地形を生かした公園となり、多くの人をくつろがせている。
大友美有紀 18年10月7日放送
Photo by Thirteen-fri
「低い山・近い山」 富士塚
江戸時代、富士信仰があり、
各地に富士山に見立てた富士塚が築かれた。
都内に富士塚は100ヶ所以上あるといわれている。
なかでも、最も古いとされるのが
千駄ヶ谷の鳩森八幡神社の富士塚だ。
寛政元年、1789年に築造されたといわている。
富士山の溶岩が頂上近くに配され、
登山道は自然岩の階段になっている。
6月の終わりから7月のあたまの、
富士山の開山日に合わせて、富士塚も山開きを行なう。
この日にだけ登ることができる都内の富士山に、
チャレンジしてみてはどうだろう。
佐藤延夫 18年10月6日放送
Photo by gsiener
美しい村 ソーリオ
その村を、「天国への入り口」と呼んだのは、
イタリアの画家、ジョヴァンニ・セガンティーニだ。
スイス東南部、マローヤ峠から続くブレガリアの谷。
その奥にある小さな村、ソーリオ。
険しい山々に囲まれた隠れ里には、
石葺き屋根の家が並ぶ。
このあたりは古くから栗を主食にしてきた地域で、
あたりにはヨーロッパ最大級の栗林が広がっている。
ちょうど今の季節は、
栗粉でつくったパンやパスタなど、
採れたての栗料理が楽しめるそうだ。
この秋、癒しの旅へ。
佐藤延夫 18年10月6日放送
Photo by mariusz kluzniak
美しい村 レーヌ
ノルウェーで最も美しい村と言われる、レーヌ。
ロフォーテン諸島にある人口300人ほどの小さな村だ。
氷河によって侵食されたフィヨルドが、
絶景をつくりだす。
水面に映るレーヌブリンゲン山、
そしてカラフルなコテージに目を奪われる。
もしも冬に訪れたとき、
オーロラを眺めることができたら、
それは、世界で最も美しい景色かもしれない。
佐藤延夫 18年10月6日放送
Photo by Saffron Blaze
美しい村 バイブリー
19世紀イギリスの詩人ウィリアム・モリスが、
「イギリスで最も美しい村」と称えたのは、
コッツウォルズの中央に位置する村、バイブリーだ。
有名なアーリントン・ロウは、
羊毛の生産地として栄えた14世紀ごろ、
修道院のウール倉庫として建てられたものだ。
17世紀になるとコテージに改築され、
今でも村人が暮らしているという。
秋の夕暮れ。
蜂蜜色の家々にオレンジ色の夕陽があたる瞬間、
多くの人が息を飲むことだろう。
佐藤延夫 18年10月6日放送
Photo by Koocheekoo
美しい村 サン・ポール・ド・ヴァンス
フランス、プロヴァンス地方の山間にある
芸術に愛された村、サン・ポール・ド・ヴァンス。
のどかな村というよりも、
堅牢な壁に囲まれた中世の城塞都市だ。
門をくぐって中に入ると、いくつものギャラリーが並ぶ。
クリーム色の壁。
石畳。
端正な路地。
城壁を包むように生い茂る植物。
芸術家たちがこの村に魅了される理由がよくわかる。
ピカソもマティスもコクトーもこの街を訪れ、
創作活動の拠点にしたそうだ。
この村を愛し、20年ほど暮らしたシャガールは、
村の墓地に埋葬されている。
アートに選ばれた村は、偉大だ。
佐藤延夫 18年10月6日放送
Photo by gianfranco.vitolo
美しい村 ピティリアーノ
イタリアで最も美しい村に選ばれている、ピティリアーノ。
ローマの北西に位置するこの村は、
切り立つ崖の上に悠然と佇んでいる。
火山活動で堆積した凝灰岩が、この断崖絶壁をつくった。
昼間の風景はもちろん、
夜もまた美しい。
漆黒の森の中、
村だけがオレンジ色の明かりに照らされ、
まるでおとぎ話の世界に迷い込んだような感覚に陥るだろう。
石橋涼子 18年9月30日放送
Photo by Rob Bye
大地のはなし 母なる大地の土
「母なる大地」という言葉があるように
人は自分を育ててくれた大地に愛情を持つ。
ロシアでは古代、長旅に出る際に
故郷の土を一握り持って行ったという。
江戸時代の旅人の心得として書かれた本には
船旅の不安を防ぐ方法として
陸の土を包んで持つように書かれていた。
さて、あなたがホッとする大地はどの辺りでしょう。