村山覚 18年9月8日放送
星のはなし 人工流れ星
いつの時代も、国や宗教、言葉が違えど
人々はまたたく星に魅せられてきた。
コンパスやGPSがなかった時代は
方角や季節を知るために星が活用されていたし、
星座にまつわる物語は世界中にある。
そして、人々が崇めたり、時に恐れたり、
願いを込めたりしてきたものといえば、流れ星だ。
いつどこに現れるか予測できず、見えたとしても
1秒ほどで消えてしまう儚い存在。そんな流れ星を
人工的につくろうというプロジェクトがある。
上空400km。地球上を周回する小型の人工衛星から
直径1cmの金属粒を放出。何十もの流れ星が
5秒から10秒間、夜空を彩るという。
予定では2年後に、広島にて。
この星の平和を願う人たちが、
宇宙初の流れ星を見上げるだろう。
大友美有紀 18年9月2日放送
ロシアの昔話 コトフェイ
19世紀半ば、ロシアの昔話を蒐集した人物がいた。
アファナーシエフ。彼は昔話を知ることで、
最古の人々の暮らしを知ることができると考えた。
コトフェイという名の猫と暮らしていた。
「ねことキツネ」という昔話に登場する猫の名だ。
いたずらな猫・コトフェイは、家を追い出されて森へ行く。
そこでずる賢いキツネと結婚して、
どんな獣もびくつかせるほどになった。
力のない庶民が生き抜くため知恵が、
ここに隠れているのかもしれない。
大友美有紀 18年9月2日放送
ロシアの昔話 プーシキン
ロシアの文豪、プーシキンも民話の編纂を行っている。
「ルスランとリュドミラ」の序章は、ばあやが語ってくれた
昔話をヒントにしたのではないかと言われている。
入り江のほとりに樫の木があり、
その樫の木には金の鎖がかかっている。
金の鎖を伝って、ねこが歩く。
のぼるときには昔話を語ります。
おりるときには歌を歌います。
ねこが語る昔話は、お坊さんや寺男、お坊さんの娘が登場する。
爪を研いで皇帝に見せつけ「たいそう恐い」と思わせようとする。
昔話には、庶民の欲望が隠れている。
皇帝の護衛は昔話の語り手をむち打ったという。
大友美有紀 18年9月2日放送
ロシアの昔話 ドモヴォイじいさん
古代ロシアの地に住んでいたスラブ族の言い伝えには、
かまどの神様が登場する。
スラブ人にとって、家で大切な場所はかまどだった。
かまどの火は豊かさと安全としあわせの守り神だ。
その神が人格をあたえられてドモヴォイじいさんになった。
小柄なずんぐりした老人
半コートか青い裾長上着に赤い帯をしめている
白いあごひげ
髪の毛はもじゃもじゃ、全身毛むくじゃら
かまどの後ろに住んでいる
ドモヴォイは、家を見張ってくれる。
家畜も守る。一家の富も守る。
でも、それだけじゃなくて、いたずらもする。
夜になると、馬のたてがみやしっぽ、一家の主のあごひげを
三つ編みにしたりする。
よその家のドモヴォイと戦うこともある。
日本にもかまどの神様がいる。
家の守り神であり、農耕の神様だ。
ドモヴォイじいさんと違って、
こちらはいたずらはしないようだ。
大友美有紀 18年9月2日放送
ロシアの昔話 眠り
ロシアの昔話では、主人公が手柄を立てる前や
後に眠っていることが多い。
眠りとは、冬のことではないかと考える歴史学者がいた。
冬になると植物はすべて枯れてしまって
死んでしまったようにみえる。
春の雨が降ると、大地が目覚め
緑と花々が芽吹く。
春と夏の実りは、主人公の手柄に見立てられる。
その後の長い冬が眠り。
雨と太陽のキスで目覚める。
昔話は、自然がつづる物語なのかもしれない。
大友美有紀 18年9月2日放送
ロシアの昔話 おんどりとめんどり
ロシアの昔話、おんどりとめんどり。
ふたりは森へクルミをとりにいく。
おんどりが木にのぼり、クルミをおとし、めんどりが拾う。
ところがクルミが目に当たって、片方がつぶれてしまう。
めんどりが泣いていると大貴族がやってきて
なぜ泣いているのかと聞く。
おんどりが私の目をつぶしたのです。
おんどりは、クルミの木がズボンを破ったせいだと答えます。
クルミの木は、ヤギたちが足をかじったという。
ヤギたちは、牧童が守ってくれないから。
牧童は、おかみさんが祝祭日のクレープを
食べさせてくれないから。
おかみさんは、ブタがねり粉をこぼしたから。
ブタは、オオカミが子ブタをさらったから。
オオカミは、はらぺこだったから子ブタをさらった。
これも神様のおぼしめしだという。
これは大貴族をバカにした話のようだ。
批判を口にできない市井の人々の、はけ口だったのかもしれない。
大友美有紀 18年9月2日放送
ロシアの昔話 バーバ・ヤガー
ロシアの昔話に出てくる、バーバ・ヤガー。
深い森の中、にわとりの足の上に建つ小屋。
必要なときに向きを変えることができる。
その小屋のなか、いっぱいに寝ているのが
バーバ・ヤガー。
バーバ・ヤガーの不思議なところは、
善にも悪にもなるところ。
ひとふりすると橋が現れる魔法のタオルをくれたかと思うと
さらってきた子どもをペチカで焼いて食べようとする。
いいおばあさんなのか、鬼婆なのか。
骨の足のバーバ・ヤガーは、臼にのっていて、
杵でこぎながら、箒で跡を消して去って行く。
優しくもあり恐ろしい、森そのものような存在だ。
大友美有紀 18年9月2日放送
ロシアの昔話 大きなカブ
カブが育ちすぎて抜けなくなる。
おじいさんがカブをひっぱり
おばあさんが助けにきて、
次に孫娘、犬がやってくる「大きなカブ」
ついに猫もネズミも手伝って、やっとカブは抜ける。
この昔話のバリエーションには
一本足が次々に助けに来るバージョンもある。
足が一本登場し、続いて二本目、三本目と
次々に足がやってくる。
最初の足は犬をひっぱって、
次の足は前の足をひっぱる、
その次の足はその前の・・と続いていく。
なぜ足なのか。それは今では誰もわからない。
昔のロシアでは、大きな収穫を得るには
「足」が肝心だったのかもしれない。
「足」で大地を踏みしめ、家畜を追いかける。
「足」が活躍する暮らしだったのだろう。
大友美有紀 18年9月2日放送
ロシアの昔話 どこか知らんがそこへ行け、なにか知らんがそれをもってこい
ロシアの昔話
「どこか知らんがそこへ行け、なにか知らんがそれをもってこい」。
なんとも無責任な題名だ。
これは皇帝がりりしい若者を遠ざけるために言った言葉。
皇帝は若者が破滅するだろうと思ったのだ。
けれど若者は皇帝の知らない道を見つけ、知らない何かを探し出す。
若者は森に入って、キジバトを見つける
キジバトは、自分を殺さないで、家にもって帰って
窓辺におけ、という。そしてうとうとしたら
右手で思いきりぶてと。
はたして若者が思い切りぶつと、
キジバトはこの世のものとは思えぬ美しい娘に変わる。
荒唐無稽な題名と意外すぎる展開。
ロシアの昔話は、奥が深い。
佐藤延夫 18年9月1日放送
RenoTahoe
世界のお祭り ラ・トマティーナ
スペイン東部、バレンシア州の小さな街ブニョールでは、
8月の終わりに「ラ・トマティーナ」というトマト祭りで賑わう。
トマトを大量に積んだトラックが現れ、
午前11時の号砲をきっかけに、
人々はトマトをぶつけ合う。
投げて、拾って、投げ返して、
トマトの海が広がっていく。
このお祭りでは、
100トン以上のトマトが消費されるそうだ。
スペインの8月は、
街も人も、赤く染まる。