藤曲旦子 20年7月18日放送
ひまわり
孤高の天才画家、
フィンセント・ファン・ゴッホ。
ゴッホのひまわりには、
当時としては珍しい「クロムイエロー」という
新作の絵の具が使われている。
この画材、光の影響を受けやすく、
時間の経過とともに、独特の色褪せ方をするそう。
生前、評価されることのなかったゴッホの絵が
今、世界中で愛されているのは、クロムイエローの
わずかな変色が、絵に深みを与えたからなのかもしれない。
藤曲旦子 20年7月18日放送
Damitr
ひまわり
植物にとって、開花とは、
運命の相手を見つけるための、
プロポーズだ。
ひまわりが、光の中で堂々と咲き誇る太陽の花ならば、
月の花は、月下美人だろうか。
鮮烈な香りとともに、一夜だけ咲く白い花。
まるでひまわりとは正反対な性格なのに、
ひまわりと同じ、夏に咲く。
それぞれの、恋がはじまる。
夏の恋は、いつだって、忘れられない。
藤曲旦子 20年7月18日放送
Crowcombe Al
ひまわり
ドイツの園芸家ハンス・ピーター・シファーさんは、
これまでに4度、ギネス記録を更新している。
記録名は、Tallest Sunflower 最も背の高いひまわり。
その記録はなんと、9メートル17センチ。
屋根より高いひまわり。
電柱と並ぶひまわり。
そして先端から見下ろすのは、大きなひまわりの花。
私たちはまだ、ひまわりの本当の姿を、
知らないだけなのかもしれない。
佐藤日登美 20年7月12日放送
ちぃこ
涼をたのしむ そうめん
暑い夏に食べるなら、そうめんがいい。
つるりとしたのどごしに、ひんやりとしたつゆ。
食欲がないときもするすると食べられるのがありがたい。
いつもの食べかたに飽きたら、
日本各地のそうめんアレンジを試すのはどうだろう。
例えば愛知や静岡ではそうめんの上に酢味噌を乗せ、
かき混ぜて食べる地域がある。
鹿児島ではスイカやみかんなど、フルーツを入れて楽しむ。
沖縄のそうめんチャンプルーも忘れてはならない。
旅行が難しい夏でも、
各地の味を家に運んでくることはできる。
蒸し暑い毎日、そうめんで涼をたのしむのはいかがですか。
佐藤日登美 20年7月12日放送
涼をたのしむ 天然氷
自然の中で凍らせた、天然氷。
山陰に池をつくり、水を張って凍らせて作る。
簡単そうに聞こえるが、手間と根気が必要な仕事だ。
池に木の葉やごみが入らないよう掃除するところから始まり、
氷づくりに適した気温になるまでは、
中途半端な氷が張らないように何度も水をかき混ぜる。
氷が張ったあとも雪かきや箒はきが欠かせない。
2週間から20日間ほどかけて凍らせた氷は硬く溶けにくいが、
削り出すとふわふわ。
そこに甘い蜜をかければ幸せな一皿ができあがる。
暑い夏、涼をたのしむにはやっぱりかき氷が欠かせない。
蛭田瑞穂 20年7月12日放送
涼をたのしむ 麦茶
江戸時代、麦茶は麦湯と呼ばれ、「麦湯売り」と呼ばれる屋台が流行した。
天保に書かれた『寛天見聞記』には次のような記述がある。
夏の夕方より、町毎にといふ行燈を出し、
往来へ腰懸の涼台をならべ、茶店を出すあり。
これも近来の事にて、昔はなかりし也。
炎天下に喉を鳴らして飲む麦茶もおいしいが、
夕涼みに味わう麦茶もまた格別。
蛭田瑞穂 20年7月12日放送
涼をたのしむ 浴衣
もともと湯上がりに着る下着の一種だった浴衣が
町中でも着られるようになったのは江戸時代から。
盆踊りの流行と共に、
見栄えのする模様を染め抜いた踊り浴衣が普及。
風流な柄を着る歌舞伎役者が人気に火をつけ、
浴衣は夏の衣服として定着した。
今も昔も「映える」は強い。
星合摩美 20年7月12日放送
想回家的
涼をたのしむ 金魚
ゆらゆらと涼しげに泳ぐ、金魚。
ルーツは1700年前、中国で突然変異した、
赤いフナだと言われている。
日本では、江戸時代から養殖が盛んになり、
金魚売りや金魚すくいが、夏の風物詩となった。
当時は、桶や鉢の中で育てたので、
上から見て美しい姿へと、様々な品種改良がなされた。
背びれのない「らんちゅう」は、その代表だ。
金魚の赤い色は「病魔を遠ざける」と言われている。
この夏の不安も、暑さと共に吹き飛ばしてくれるかもしれない。
星合摩美 20年7月12日放送
涼をたのしむ 風鈴
チリーンチリーン。
涼しげな風鈴の音色に、すーっと暑さが引くように思える。
実はこれ、単なる気のせいではない。
20~60代の男女数人を対象に、
蒸し暑い部屋で、風鈴の音を聞かせたところ、
実際に皮膚温度が2、3度下がった、という実験がある。
ただし結果は、日本で生まれ育った人に限ったこと。
風鈴を知らない人には、同じ現象は起こらないという。
風鈴が運ぶ涼しさは、思い出から届くのかもしれない。
森由里佳 20年7月12日放送
nakimusi
涼をたのしむ 打ち水
暑い夏、アスファルトからたちのぼる熱気を鎮めるかのように、
優雅に動く柄杓ときらめく水しぶき。
パシャッ、パシャッと小気味いい音を立てて撒かれる”打ち水”は、
客人を茶室に招き入れる前、地面を清めるために行ったという、
茶の湯の文化が起源だそうだ。
家族や道行く人が、すこしでも涼やかに過ごせるように。
人に水がかからぬよう、手際よく打たれるそのきらめきは、
打つ人の心配りをそのまま映し出す。
うだるような暑さでも、心にすうっと涼しい風が吹く。
打ち水の効果は、そんなところにもあるようだ。