小野麻利江 18年5月27日放送
うたのはなし 越路吹雪のうた
いいうたって、なんだろう。
圧倒的な表現力でシャンソンを歌い上げた、
歌手・越路吹雪。
しかし何千回も歌っている「愛の讃歌」ですら、
歌うたびに、1からつくりあげようとした。
「あなたの燃える手で」とは、どんな手?
むつかしい。どうやって歌おうか。
じっくり掘り起こし、
稽古が終わる頃には、クタクタになっていたという。
越路自身も晩年、
TV番組のインタビューの中で、こう語っている。
歌になるまでには時間がかかります、消化するまで。
いいうたには、愚直なまでの情熱が宿っている。
渋谷三紀 18年5月26日放送
白石准
絵本のひと かこさとし
絵本作家になる前の、
かこさとしさん。
自作の紙芝居で
子どもたちをよろこばせようと
意気込んでいた。
ところが、かこさんが話し始めると、
一人減り、二人減り、
ついには赤ちゃんをおんぶした
おばあさんだけになってしまった。
みんなザリガニを採りに行ったと聞かされ、
地団太を踏む、かこさん。
こんちくしょう。
なんて小憎たらしい!
でも・・・
小憎たらしいって、生きてる感じがするな。
かこさんの絵本に優等生は登場しない。
わがままで愛らしくて、
なによりいきいき生きている。
渋谷三紀 18年5月26日放送
絵本のひと 五味太郎
絵本作家の五味太郎さん。
編集者にこんな質問をされた。
「五味さんは子どもたちに何を伝えたいですか?」
「特にありません。」
「じゃ、どうして描いたんですか?」
「おもしろかったから。」
子どもは教わりたいなんて思わない。
と、五味さんはいう。
小学生の頃、穴を掘るのに夢中で、
授業中も穴のことばかり考えていた五味さん。
あの日の気持ちのまま描いた絵本が、
おもしろくないはずがない。
渋谷三紀 18年5月26日放送
絵本のひと 安野光雅
走るなメロス
と書いたのは、
絵本作家の安野光雅さん。
「走れメロス」のような
友情のための自己犠牲は、
物語として確かに美しい。
けれど、本当に正しいのか。
美談や教訓を疑う姿勢は、
戦争体験から来ているのだという。
生きることは単純じゃない。
書かれたことが正解じゃない。
自分の頭で考える自由は、
手放したくない。
渋谷三紀 18年5月26日放送
ha-suha
絵本のひと せなけいこ
絵本作家のせなけいこさん。
ある日、同居する娘さんが
子どもをしかる様子に目を奪われた。
「そんな悪いことするなら、おおかみさん呼びますよ。」
受話器をとり、「もしもし、おおかみさんですか?」と演技をつづける。
子どもはたまらず「いやーん。ごめんなさい。」
その傍らでほくそえんでいた、せなさん。
後日、「おおかみのでんわ」という絵本を描いた。
真剣だからおもしろい。
どの家の子育ても、
世界に一編の物語だ。
渋谷三紀 18年5月26日放送
Vintage Japan-esque
絵本のひと 石井桃子
絵本なんて子ども向けでしょ。
なんて思っている人には、
絵本作家の石井桃子さんが色紙に書いた言葉を
読んでほしい。
おとなになってから
老人になってから
あなたを支えてくれるのは
子ども時代の「あなた」です。
澁江俊一 18年5月20日放送
flickrohit
ジーンズの誕生日
今日はジーンズの誕生日。
ゴールドラッシュに沸くアメリカ。
人々はとにかく丈夫な作業着が欲しかった。
仕立屋ジェイコブ・デイビスは
生地屋のリーバイ・ストラウスから仕入れた
丈夫な布でズボンをつくり、
ポケットをリベットという小さな金具で補強する。
これはのちに本人も忘れてしまうほどの
些細な思いつきだった。
それがまさかの大ヒット。
アイデアを守るための
特許出願にかかる費用は68ドル。
しかしジェイコブにはこれが払えず
リーバイと折半して出願する。
特許が承認されたのが1873年の今日だった。
史上最大の発明ジーンズは
仕立て屋と生地屋の
偶然のコラボから生まれたのだ。
澁江俊一 18年5月20日放送
shio
ジョブズとジーンズ
今日はジーンズの誕生日。
労働者の作業着として
生まれたジーンズ。
やがてアーティストやミュージシャン
映画スターに愛されるようになり
今や大企業の社長までもが
こぞってジーンズを履いている。
国境も性別も職業も
あらゆる境界線を越えるジーンズ。
いつも同じ服しか着なかった
スティーブ・ジョブズもジーンズをこよなく愛した。
iPodもiPod nanoもプレゼン中の彼の
ジーンズのポケットから初めて登場した。
こんな遊びゴコロがある限り
人類がジーンズを履かなくなる日は、
きっと永遠に来ないだろう。
奥村広乃 18年5月20日放送
マリリン・モンローとジーンズ
今日は、ジーンズの誕生日。
丈夫で破れない。
ブルージーンズの始まりは、男性の労働着であった。
その実用的でしかなかったジーンズを、
女性のファッションアイテムに価値転換をした人。
それが、マリリン・モンローだった。
1961年。
映画『荒馬と女』でブルージーンズを履いたモンロー。
第二の皮膚のように、彼女にフィットしたジーンズ。
馬に乗って駆け回る時も、
寝そべって休憩する時さえも、美しい。
映画を見た当時の女性たちは、
そのジーンズ姿に魅了された。
「ほんとうの魅力は、女らしさによって生まれるものよ。」
そう、モンローは言う。
彼女の魅力は、男性向けのジーンズを履いてもなお
隠れることはなかった。
魅力的なスタイルを保つために
運動を欠かさなかったモンロー。
ジョギングの時にも、ブルージーンズを履いていたという。
奥村広乃 18年5月20日放送
Sharon Mollerus
アンディ・ウォーホールとジーンズ
今日はジーンズの誕生日。
ブルージーンズに嫉妬した。
そんな、アーティストがいた。
ポップアートの教祖、アンディ・ウォーホール。
彼は、非常に高尚であった絵画の世界に
キャンベルスープ缶やマリリン・モンローなど
大衆文化を持ち込んだ。
その反逆スタイルは、
彼のファッションにも通じている。
黒いタキシードの上着に、
カジュアルなブルージーンズを合わせて
パーティに参加したのだ。
彼は著書で、こう語っている。
「ぼくもブルージーンズみたいなのを発明したかった。
あれだけ大衆的で、人に覚えてもらうものをさ。」