佐藤延夫 18年5月5日放送
NASA Goddard Photo and Video
宇宙な人 エドウィン・ハッブル
アメリカの天文学者、エドウィン・ハッブル。
法律を学ぶためシカゴ大学に入学したものの、
実際は天文学と数学に熱中したという。
のちに彼の発見は、宇宙論の基礎を作った。
星の集団が宇宙、ではなく
銀河の集団が宇宙であること。
そして銀河の大半が我々から遠ざかっていくこと。
これは、やがて宇宙膨張と
ビッグバン理論につながっていく。
今日はこどもの日。
8歳のとき、望遠鏡を買ってもらったハッブル少年は、
天文学に興味を持つようになった。
愛読書は、「海底二万マイル」だったそうだ。
佐藤延夫 18年5月5日放送
宇宙な人 ジョスリン・ベル・バーネル
イギリスの女性天体物理学者、ジョスリン・ベル・バーネル。
ケンブリッジ大学の大学院で電波天文学の研究をしていた彼女は、
電波望遠鏡の製作に力を尽くす。
テニスコート57面分の面積に、
1000本以上の鉄柱を立てて完成した望遠鏡で、
ベルの研究チームは、奇妙な電波信号を発見する。
パルサーと呼ばれるこの信号は、
高速で回転する中性子星によるものだった。
パルサーの発見は、ノーベル物理学賞を受賞している。
今日はこどもの日。
読書家だった父の影響を受けたベルは、
天文学の本に興味を持つようになったという。
佐藤延夫 18年5月5日放送
宇宙な人 カール・セーガン
アメリカの天文学者、カール・セーガン。
シカゴ大学で物理学を勉強した彼は、
生命の起源の研究と惑星科学で博士号を取得している。
金星を居住可能な空間に変える「テラ・フォーミング」、
核戦争による気候変動で地球が氷河期になる「核の冬」など、
宇宙のみならず、地球環境にも積極的に発言している。
また、スタンリー・キューブリック監督の映画、
「2001年宇宙の旅」のコンサルタントも務めた。
今日はこどもの日。
4歳のとき、セーガン少年は、ニューヨークの万国博覧会を見物している。
科学技術と未来都市の展示に感動した彼は、
のちにこの経験が「人生の転機になった」と語っている。
佐藤延夫 18年5月5日放送
宇宙な人 フランク・ドレイク
アメリカの天文学者、フランク・ドレイク。
ハーバード大学の大学院を卒業したあと、
彼は国立電波天文台で働いた。
もし知的生命体が存在すれば、
何らかの電気信号を発するはずだ。
そんな仮説から生まれたのが「オズマ計画」。
この計画は失敗に終わったが、
のちにドレイクの方程式を生み出すきっかけになった。
ドレイクの方程式とは、
銀河系の中でコンタクトすることが可能な
地球外生命体の数を推定する計算式。
ドレイクは、こんな言葉を残している。
「人、動物、植物、そして宇宙人は、みな星のかけらでできた兄弟です。」
今日はこどもの日。
8歳のころのドレイク少年は、
夜空を見上げ、宇宙をまわる惑星と
そこに暮らす宇宙人を想像していたという。
佐藤延夫 18年5月5日放送
宇宙な人 カール・シュヴァルツシルト
ドイツの天文学者、カール・シュヴァルツシルト。
ミュンヘン大学卒業後、
天文学の教授などを経て、
ドイツで最も権威のあるポツダム天文台のトップに就任した。
彼の偉大な功績は、
アインシュタイン方程式のシュヴァルツシルト解の発見。
つまり、アインシュタインでも導き出せなかった、
ブラックホールの存在を示唆したのだ。
今日はこどもの日。
幼いころから優秀だったカール少年は、
16歳のとき、星の運動についての論文を2つも発表している。
熊埜御堂由香 18年4月29日放送
jens johnsson
わたしのはなし 平野啓一郎とわたし
わたしとは、なんだろう。
この普遍的な問いに
作家の平野啓一郎さんこう答えた。
他者との関わりで変化する複数の自分が「わたし」を
構成していて、唯一無二の「本当の自分」は存在しない。
それは、「わたし」を「あなた」に
開いていくとっても素敵な回答だ。
薄景子 18年4月29日放送
わたしのはなし たいせつなこと
わたしとは、なんだろう。
そんな問いがよぎるとき
ふと開きたくなる絵本がある。
マーガレット・ワイズ・ブラウン作
「たいせつなこと」。
スプーン、ひなぎく、りんご、そら…。
あらゆるモノにとって、
「たいせつなこと」を
やさしいことばで教えてくれる。
最後のページには、こう書かれてある。
あなたにとって たいせつなのは
あなたが あなたであること
わたしは、ほかの誰でもなく、まるごとわたし。
それを100%受け入れたとき
わたしはもっと、わたしになれる。
小野麻利江 18年4月29日放送
わたしのはなし パブロ・ピカソと模写
わたしとは、なんだろう。
画家、パブロ・ピカソは、
生涯の中で作風を
目まぐるしく変えていった。
青色を主に用い陰鬱なテーマを描いた、「青の時代」。
恋人をモデルにし、明るい色調の作風が続いた「ばら色の時代」。
セザンヌからの影響をきっかけとした、「キュビズムの時代」。
丸みを帯びた写実的な描写になった
「新古典主義の時代」。
そして、非現実的で怪物のようなモチーフを
数多く描いた、「シュルレアリスムの時代」。
なぜここまで、過激に変化したのか。
そのヒントが、ピカソのこんな言葉から読み取れる。
他人を模写するのは
必要なことである。
しかし、
自分を模写するのは哀れなものだ。
ピカソにとっての「わたし」。
それは、一瞬たりとも同じであることが
許されない存在、なのかもしれない。
小野麻利江 18年4月29日放送
Ars Electronica
わたしのはなし 石黒浩とアイデンティティ
わたしとは、なんだろう。
自分そっくりのアンドロイドをつくり、
人間とロボットの未来を模索する
ロボット工学者・石黒浩は、
こんな持論を展開している。
相手に伝わってこそのアイデンティティですから。
名前なんか、毎日変えたっていいんです。
顔はあんまり変えないほうがいい。
服は絶対に変えないほうがいい。
石橋涼子 18年4月29日放送
わたしのはなし ヘルマン・ヘッセと内面性
わたしとは、なんだろう。
詩人でありノーベル文学賞作家でもある
ヘルマン・ヘッセ。
苦悩の多い人生からか、
わたしとは何か、を問いかけるような
文学作品を多く残している。
ヘッセは繊細で静かな文章で、
青春の悩みや人間らしい弱さを描いたが、
それはときに、悩める読者の希望となった。
書物というタイトルの詩で、ヘッセはこう語る。
君自身の中に、
君が必要とするすべてはある。
「太陽」も「星」も「月」もある。
君の求める光は、
君自身の内にあるのだ。
ヘッセの元には、世界中の悩める読者から
何千通もの手紙が届いた。
彼は、仕事の時間を割いて、
ひとつひとつに返事を書き続けたという。