佐藤延夫 18年4月1日放送
4月1日的な実験 チャールズ・ブラグデン
1774年。物理学者のチャールズ・ブラグデンは、
熱に関する実験を行なった。
人間の体が、どれほどまでの高温に耐えられるか・・。
蒸気で暖めたサウナルームに被験者を入れる。
その温度は45℃から始まり、
最終的には127℃まで上昇した。
生のステーキ肉を持ち込んだが、
45分後、カラカラに乾いていたという。
生肉は焼けてしまったのに、
呼吸をする生身の人間は無事。
チャールズ・ブラグデンは、こんな結論を導き出した。
生物は、熱を破壊する能力を持つ。
今日はエイプリルフールですが、
これは嘘のような、本当の実験。
佐藤延夫 18年4月1日放送
4月1日的な実験 ドナルド・O・ヘッブ
1951年。アメリカの心理学者、ドナルド・O・ヘッブは、
人間をあらゆる刺激から隔離したらどうなるか、という実験を始めた。
被験者の学生たちは、防音室のベッドにただ横たわっているだけ。
視界を遮るため磨りガラスのメガネをかけ、
腕にはダンボールの筒がはめられた。
結果から言うと、この実験に3日以上耐えた者はいなかった。
あらゆる刺激が失われると、
次第に考える事柄が尽きてしまい、
平常心を保てなくなるそうだ。
そして、被験者全員が、幻覚を見ている。
この実験結果に、軍やNASAが強い関心を示したという。
今日はエイプリルフールですが、
これは嘘のような、本当の話。
佐藤延夫 18年4月1日放送
4月1日的な実験 ウィンスロップ・ケロッグ
1931年。インディアナ大学のウィンスロップ・ケロッグ教授は、
子どもの発育に関する実験を行なった。
生まれたばかりのチンパンジーを人間の赤ん坊と一緒に育てたらどうなるか・・。
妻の反対を押し切り、
チンパンジーと暮らす赤ん坊には、自分の息子ドナルドを選んだ。
環境要因と遺伝的要因、どちらが成長に大きく影響するのか。
実験を進めるにつれ、
チンパンジーは人間として扱われることにしっかり適応し、
ドナルドよりも早い成長を見せた。
一方ドナルドはというと、
チンパンジーの真似をすることが上手くなっていた。
つまり、チンパンジーが食べ物を欲しがる声、
甘える声などを真似するようになり、
人間のドナルドが、チンパンジーに近づいてしまったのである。
通常なら、単語を50個くらい理解できる年齢のとき、
ドナルドが知っていた単語は、わずか3つだったそうだ。
スタートから9ヶ月後、何の説明もなくこの実験は打ち切られている。
おそらく妻の逆鱗に触れたのだろう。
今日はエイプリルフールですが、
これは嘘のような、本当の話。
佐藤延夫 18年4月1日放送
Photo by Sérgio Alves Santos on Unsplash
4月1日的な実験 マイケル・カニンガム
1984年。ルイビル大学のマイケル・カニンガム教授は、
女性を誘うときに効果的な言葉の研究をした。
100種類の口説き文句を、大きく三つに分類し、
シカゴのバーで実験を始めた。
平均的な魅力の男性が、一人で来ている女性客に声をかける。
好意的な反応が多かった口説き文句は、
「勇気を振り絞って声をかけました」という率直なもの。
反対に不評だったのは、
「君は昔好きだった人に似ている」などのような
軽薄な言葉だったそうだ。
こんな実験を大真面目にやっている人がいた。
今日はエイプリルフールですが、
これは嘘のような、本当の話。
佐藤延夫 18年4月1日放送
danielfoster437
4月1日的な実験 パトリックとギルバート
1895年。アイオワ大学の心理学研究員、
パトリックとギルバートは、
90時間起きたままだと人間はどうなるか、という実験を行った。
被験者の男は、
普通に仕事をこなし、ゲームを楽しみ、
1日目はのんびり過ごしていたが、
50時間を過ぎるころから、パトリックとギルバートを慌てさせた。
常に監視の目を光らせていないと、
男が居眠りを始めてしまうからだった。
なんとか眠らないままで迎えた2日目の夜。
被験者の男は幻覚が見え始め、
まともに歩くことすらできなくなった。
あとで理由を尋ねると、
床が、小刻みに揺れ動く小さなベタベタした粒子の層に見えたそうだ。
しかしパトリックとギルバートの興味は尽きない。
不眠不休で90時間を迎え、
ようやく眠りについた被験者を
電気ショックで目覚めさせる実験も行っている。
今日はエイプリルフールですが、
これは嘘のような、本当の話。
佐藤延夫 18年4月1日放送
chrisinphilly5448
4月1日的な実験/グロスとドゥーブ
1966年。スタンフォード大学の学生、グロスとドゥーブは、
心理学の奇妙な実験を行った。
信号が青になっても動かない車に対し、
後ろのドライバーは、どれくらいの時間でクラクションを鳴らすか。
動かない車は、大衆車と高級車の2種類を用意した。
ちなみに結果は、
ボロボロのフォードにクラクションを鳴らす時間は、平均6.8秒。
高級車クライスラーの場合は、平均8.5秒だった。
人は皆、金持ちに弱いのである。
こんな実験が、大真面目に行われていた。
今日はエイプリルフールですが、
これは嘘のような、本当の話。
佐藤延夫 18年4月1日放送
Photo by Louis Blythe on Unsplash
4月1日的な実験 ユルゲン・クラップロット
1976年。ドイツのユルゲン・クラップロット教授は、
「大学教授のあごひげが学生に及ぼす影響」というテーマで
実験を行なった。
最初の二学期は、ひげのない顔で授業をして、
次の一学期はあごひげをたくわえた風貌で。
最後の一学期は、ひげを剃った状態に戻した。
その印象について学生にアンケートを取ったところ、
決断力、緻密さ、知性など多くの面で
「ひげのない状態」のほうが優れた結果を残した。
ただし、気取らず大らか、という点では
「ひげのある状態」が上回った。
こんな実験が、大真面目に行われていた。
今日はエイプリルフールですが、
これは嘘のような、本当の話。
佐藤延夫 18年4月1日放送
Tibor Kelemen
4月1日的な実験 バーバラ・J・ロールズ
1976年。ペンシルベニア州立大学のバーバラ・J・ロールズ教授は、
空腹感についての実験をした。
実際に、試してみましょう。
質問。次のメニューのうち、どれが一番、お腹いっぱいになると思うか。
1、チキンと野菜のシチュー。
2、チキンと野菜のシチュー、そして、コップに入った350cc程度の水。
3、チキンと野菜のシチューに350ccの水を加えて、スープ状にしたもの。
カロリーは変わらないのに、
被験者たちが最もお腹いっぱいに感じたのは、
3番のスープだった。
ロールズ教授は、こう結論づけた。
「おそらく、スープの見た目に、満腹効果がある」
こんな実験が、大真面目に行われていた。
今日はエイプリルフールですが、
これは嘘のような、本当の話。
名雪祐平 18年3月31日放送
一円五千円 樋口一葉
小説で、母と妹を養いたい。
樋口一葉の覚悟は、
日本女性初の無謀な賭けだった。
生活は苦しかった。
なじみの質屋、伊勢屋に走る。
数着の着物を、
数枚の一円札に。
何度も、何度も。
24歳の若さで一葉が亡くなったとき、
伊勢屋の主人は、一円の香典を包んだという。
一円に困っていた自分の顔がまさか、
五千円札の肖像になるなんて。
一葉が知ったら、どんな顔しただろう。
現金書留に五千円札を入れて、
明治の一葉宛、送ってみたくなる。
名雪祐平 18年3月31日放送
たにぐち
二眼二行 樋口一葉
樋口一葉、名は奈津。
七つのころから、
本が好きで好きで、しょうがなかった。
羽子板より、お人形より、読書。
読むのが抜群に速く、
「眼が二つあるから二行ずつ読める」
「里見八犬伝全98巻を三日で読んだ」
と伝わるほど。
読書への熱中を
母はよく思わなかったので、
奈津はこっそり薄暗い蔵で眼を輝かせ、
むさぼり読んだ。
奈津から一葉へ。
好奇心と読書が、
近代初の職業女性作家の芽を育んだ。