佐藤日登美 18年2月18日放送
朝ごはん 林芙美子の朝ごはん
小説家・林芙美子。
彼女が描写する料理の品々はたまらなくうまそうで、
想像するだけでのどが鳴る。
もちろん、朝ごはんについても彼女の筆は進む。
このごろだったら、胡瓜をふんだんに食べる。
胡瓜を薄く刻ざんで、濃い塩水につけて洗っておく。
それをバタを塗ったパンに挟んで紅茶を添える。
紅茶にはミルクなど入れないで、ウイスキーか葡萄酒を一、二滴まぜる。
私にとってこれは無上のブレック・ファストです。
きゅうりとバターとパンと紅茶。
思わず買いに走りたくなる。
佐藤日登美 18年2月18日放送
朝ごはん 小林聡美の朝ごはん
女優・小林聡美は、朝ごはんのパンケーキが大好きだという。
ただし、分量の配分がなかなか難しいので
食べるのはもっぱらお店で。
そのとき、他にどんな魅惑的なソースがあろうとも、
必ずメープルシロップをかけるのが彼女のこだわり。
どら焼きはあんこが一番なように、
パンケーキにはメープルシロップなのです。
なぜだと聞かれてもわからない。
ただ、どう考えても、それが一番美味しい、とワタシは思うわけです。
その気持ち、わかる気がします。
佐藤日登美 18年2月18日放送
Aimaimyi
朝ごはん 山崎まどかの朝ごはん
寝起きすぐには、ごはんなんて食べられない。
そんな人は、朝ごはんをイベントにしてみてはどうだろう。
ライター・山崎まどかは、イベントと称して
朝ごはんのために街に繰り出す。
ある日は、西荻窪の洋食屋さんで
トロッとしたオムレツとともに、朝からワインをたしなむ。
別の日には、築地の人気寿司屋を楽しんだ後、
コーヒーとおだんごと卵焼きを堪能する。
毎朝がこんな特別なイベントならば、
きっと毎日おいしい朝ごはんが食べられる。
でも、今日という日は一日しかないわけで、
そうやって考えれば毎日が特別だ。
蛭田瑞穂 18年2月18日放送
Melosh
朝ごはん イングリッシュブレックファースト
イギリス料理はおいしくない。
というイギリスの人々にとってはありがたくない評判がある。
しかし、こと朝食に限ってはその評判は的外れである。
伝統的なイングリッシュブレックファーストはこのようなメニュー。
トースト、タマゴ料理、ソーセージ、ブラックプディング、
ハム、ベーコン、ベイクドビーンズ、ベイクドトマト、
マッシュルームソテー、ジャガイモ料理、そして紅茶。
イギリスの作家、サマセット・モームはこう言う。
イギリスでおいしい食事がしたければ、1日に3回朝食を取ればいい。
蛭田瑞穂 18年2月18日放送
朝ごはん ティファニーで朝食を
オードリー・ヘップバーン主演の映画『ティファニーで朝食を』。
「ティファニー」とはニューヨーク5番街に本店を持つ高級宝石ブランド。
しかし、当時ティファニーにレストランは併設されていない。
なぜ、ティファニーで朝食なのか。
それは主人公ホリー・ゴライトリーのこんな勘違いに由来する。
いつか、ティファニーで朝ごはんを
食べられるような身分になっても私は私でありたいの。
ティファニーとはそれほどまでに高嶺の花だったのだ。
そんな彼女の夢を叶えるためか、
昨年の11月、ティファニーは本店にブランド初の
ダイニングスペース「The Blue Box Cafe」をオープンした。
蛭田瑞穂 18年2月18日放送
Jarod Carruthers
朝ごはん 向田邦子の朝食
向田邦子のエッセイ、「刻む音」。
朝、目覚めると、味噌汁の具を刻む母の包丁の音が聞こえてくる。
顔を洗っているとかつお節の匂いがする。
少し経つと、味噌の香りがプーンと流れてくる。
向田邦子にとっては、それが幼いころの朝食の記憶。
彼女はこう綴る。
このごろの朝の匂いといえば、コーヒー、ベーコン、トーストだが、
私に一番なつかしいのは、あの音とあの匂いなのである。
向田邦子に限らず、日本人にとって、味噌汁の味こそ、
朝ごはんの味かもしれない。
永久眞規 18年2月17日放送
Abhisek Sarda
文豪の朝食 夏目漱石
明治の文豪、夏目漱石は、
当時としては珍しい洋風の朝食を好んでいた。
ロンドン留学から帰国した後、
彼の朝食はもっぱら、紅茶とトースト。
そして、何よりも楽しみにしていたのは、苺のジャム。
大の甘党で、
羊羹を常に持ち歩くほどだったと言われる漱石は
ジャムをトーストに塗るのではなく、
瓶からスプーンですくってそのまま食べていたらしい。
代表作『吾輩は猫である』には、
猫の飼い主が、ジャムを食べすぎて妻に咎められるシーンがある。
元来ジャムは幾缶舐めたかい?
今月は八つ入りましたよ。
〜あんなにジャムばかり嘗めては、胃病の治る訳がないと思います。
この言葉は、漱石が実際妻に言われたものだろうか。
それとも、糖尿病のけがあった自分への戒めの言葉だったのだろうか。
村山覚 18年2月17日放送
Allagash Brewing
作曲家の朝食 ベートーヴェン
一杯のコーヒーはインスピレーションを与え、
一杯のブランデーは苦悩を取り除く。
作曲家・ベートーヴェンの一日は、コーヒー豆を数えることから始まる。
豆の数は、毎朝決まって60粒。
1粒ずつ正確に数えて、満足げに豆を挽くもじゃもじゃ頭の男。
その姿を想像するだけで、なんだか可笑しい。
耳が不自由で、テンポを正確に刻むメトロノームを愛用したという
ベートーヴェンのことだから、コーヒーミルをがりがりと回すリズムも
きっと一定だったろう。
4拍子?それとも3拍子?毎朝同じ数の豆を挽くという単純作業は、
さながら、オーケストラが演奏会の前に行うチューニングのようだ。
はじまりの合図であり、体と心を整える儀式。
さあ、はじめるぞ。がりがりがり。
藤本宗将 18年2月17日放送
benho.sg
ロックスターの朝食 キース・リチャーズ
優雅な朝食の定番である「エッグベネディクト」。
だがローリング・ストーンズのギタリスト
キース・リチャーズの手にかかれば、
破天荒なエピソードに変わる。
ツアー中のある朝、ホテルで事件は起きた。
バンドのサポートメンバーが
ホテルの隣でゴルフをしていたところ、
打ったボールが大きく曲がり、
木立で跳ね返るとキースの部屋に飛び込んだのだ。
着地した先は、なんとキースの朝食。
イングリッシュ・マフィンの上に、
ポーチドエッグではなくゴルフボールがのってしまった。
慌てて駆けつけると、
そこには仁王立ちになったキースがいた。
片手には銃口から煙が立ちのぼった拳銃。
そしてもう一方の手には、
焦げた丸い物体がぶすぶすと煙を上げている。
キースはこう叫んだという。
今のはペナルティ10打くらいのひどいプレーだ!
俺の朝食が台無しじゃねえか!
福宿桃香 18年2月17日放送
Ippei Suzuki
ご長寿姉妹の朝食 きんさんぎんさんの娘たち
赤みそで仕上げた、玉ねぎのお味噌汁。
この一杯を何十年も飲みつづけているのは、
日本中の人気者だった双子のご長寿姉妹、
きんさんぎんさんの4人の娘たちだ。
「自分のことは自分で」という母・ぎんさんの教えを受け継ぎ、
90を超えた今でも、毎朝じぶんで台所に立つ。
たまねぎは、なるべく細かく。
出汁と赤みそを入れ、
あまり溶かさないまま沸騰させる。
「目分量、目分量。」
そう言いながら、切った豆腐と揚げ玉を鍋へ。
そしていちばんのこだわりが、
味噌汁の器に直接落とす生たまごだ。
シラスや梅干しなどのおかずは
それぞれ好きなものを食べるが、
このお味噌汁とお茶碗一杯の白ごはんは、
姉妹みんなの好物なのだという。
聞いているだけで栄養満点の朝ごはん。
これこそが今でも元気でいられる秘訣なのか、と思わされるが、
4人は「そんなものはない」と一刀両断。
代わりに、こんな話を聞かせてくれた。
年をとってからの楽しみは、好きなものを自分でこしらえていただくということ。
年をとると、人に頼むことが多くなる。
朝ごはんだけは自分で好きなように食べて、好きなようにすればいい。