三島邦彦 18年1月20日放送
寒さの季節に ロバート・リンド
人は眠りから起きるときに
体温が上昇する。
冬の朝の目覚めにくさは、
体がなかなか温まらないことも
関係しているという。
20世紀前半の
イギリスで活躍したエッセイスト、
ロバート・リンドは
「冬に書かれた朝寝論」という
エッセイでこう書いている。
私の経験からすると、
仕事を怠けたいという気持ちは、
気温が下がるのに比例して強くなると思う。
今日は大寒。
無理せず
のんびりお過ごしください。
三國菜恵 18年1月20日放送
寒さの季節に 後藤正文
あの日も寒かった。
東京にいる自分は何もできなかった。
今でも震災後の無力感を思いだす。
ミュージシャン、後藤正文はそう呟く。
たとえ何もできなくても、
何かしたいという小さな想いを持ち寄れば、
「何か」に辿りつけるんじゃないか。
そう考えて、未来を語る言葉を集めることにした。
中世ヨーロッパの吟遊詩人達は、
さまざまな国を渡り歩いて情報を伝達する
新聞のような役割を担っていた。
音楽家である自分がその役割を再現できるんじゃないかと考えた。
未来を考える誠実な声が、ひとつふたつと集まってくる。
紙に刷って、無料で配り歩いた。
新聞の名前は『The Future Times』。
未来とは、わたしたちの声である。
三國菜恵 18年1月20日放送
NanakoT
寒さの季節に 月山志津温泉
出羽三山へつづく道へ車を走らせる。
6mの雪壁をくぐり抜けると、
雪でできた旅籠がぼんやりと光っている。
幻想的な風景が人気の、
山形県にある月山志津温泉。
江戸時代に宿場町だったこの街の風景を
雪で再現できないかと
若者たちが試したのがはじまりだった。
雪旅籠をつくるルールはひとつだけ。
雪を無理やり積み上げるのではなく、
初雪の頃から自然に積もった雪を掘り込んで形づくること。
雪旅籠の街並みは、2月が終わりに近づく頃に10日間だけ現れて消える。
佐藤日登美 18年1月14日放送
Tom Simpson
犬 犬という生きかた
2018年が始まりました。
戌年の今年、世界一有名なビーグル犬、スヌーピーの言葉をひとつ。
ぼくは犬以外のものになりたい、なんて思ったことないな。
犬であることを誇りに思い、
犬であることを楽しむ。
それがスヌーピーの生きかた。
私たち人間は犬にはなれないけれど、
スヌーピーのように自分を思いきり楽しめる年になりますように。
佐藤日登美 18年1月14日放送
犬 ノアの方舟の犬たち
犬の鼻が濡れている理由には諸説あるが、
一説では、聖書の時代に由縁があるという。
かの有名な「ノアの方舟」。
あらゆる動物が乗り込んだその舟には、もちろん犬も二匹いた。
船内を見回っていたその二匹の犬は、
方舟に小さな穴が空いているのを発見する。
そこから流れ込んでくる水を止めるため、
一匹は自分の鼻の頭を穴に突っ込み、もう一匹は助けを呼びに走ったという。
犬たちが身を呈したおかげで、
ノアの方舟は水没することなく航海を続けることができた。
この出来事がなければ、
犬の鼻は濡れていなかったし、
人類の歴史は変わっていた、かもしれない。
佐藤日登美 18年1月14日放送
犬 ジョージ・ワシントンの犬たち
アメリカの初代大統領、ジョージ・ワシントンは大の犬好きだった。
その愛は、雌犬たちにつけていた名前からも見てとれる。
「女神」を意味するヴィーナス。
「可愛らしいくちびる」を意味するスイートリップス。
「真実の愛」を意味するトゥルーラブ。
それに引きかえ、雄犬たちの名前は。
「のんだくれ」を意味するティップラー。
「利き酒屋」を意味するテイスター。
「大酒飲み」を意味するドランカード。
犬を愛する初代大統領は、無類の酒好きでもあったらしい。
森由里佳 18年1月14日放送
Bouldernavigator
犬 わさお:初めての演技
タレント、俳優、お笑い芸人。
彼らに引けを取らないほどの人気者がいる。
しろくて長いふさふさの毛をもつ、秋田犬のわさおだ。
観光客のブログがきっかけでファンが増え、
なんと映画化が決まったほどの人気ぶりだ。
とはいえ、タレント犬でも訓練犬でもないわさお。
もちろん演技は初めてだ。
そこで、錦織良成監督はこんなスローガンを決めていたという。
「わさおのNGカットはなし!」
わさおを信じ、どんなに長い時間でも待って、待って、待ち続ける。
そうして完成した映画「わさお」。
スクリーンの中のわさおの自然な笑顔が
多くの人の心を奪ったことは、言うまでもない。
森由里佳 18年1月14日放送
merec0
犬 わさお:キャストとして
実在する秋田犬が主役を演じた映画、「わさお」。
監督・錦織良成は映画を撮る時にこんなことを意識したという。
わさおは僕たちの言葉も気持ちも汲み取るから、
本当に優しい気持ちで撮らなければならない。(中略)
そして、ペットとして動くぬいぐるみのようにかわいがるのではなく、
わさおも犬としてそこに存在していることを尊重したうえで対峙するんです。
犬だからといって、動物として接するのではなく、
キャストのひとりとしてまっすぐに向き合う。
わさおの人間味あふれる笑顔は、
そうした制作スタッフの心がけによって
生まれたものなのかもしれない。
森由里佳 18年1月14日放送
merec0
犬 わさお:本当の名前
白くてふさふさな毛が印象的な秋田犬が主人公の映画「わさお」。
監督の錦織良成は、初めてわさおに会ったとき、
“孤高の犬”だと感じたという。
簡単にしっぽは振らないし、
人間に媚びないというのがかっこよかったですね。
実は、わさおの本当の名前は「レオ」。
飼い主の菊谷節子さんがもともとつけていた名前だ。
手塚治虫の漫画「ジャングル大帝」からつけたのだという。
たしかに、大きなわさおはまるで白いライオンのよう。
愛らしい笑顔とは裏腹に、
簡単にはなびかない誇り高い犬なのだ。
蛭田瑞穂 18年1月14日放送
犬 犬に聞かせる話
チェコスロバキアの国民的作家、カレル・チャペックが
愛犬の子犬について綴ったエッセイ集『ダーシェンカ』。
その中に「ダーシェンカに聞かせるお話」と題された一編がある。
これはチャペックが創作した子犬のための寓話集。
チャペックは「人間」についてこう書く。
動物たちの中には、人間たちは悪党だ、と言い張るものがいるし、
そう言っている人間もたくさんいる。
だからといって、それを信じてはいけないよ。
ダーシャ、人間とおまえを結んでいるものは、
血よりもずっと不思議でやさしい何かなんだよ。
その何かっていうのは、信頼と愛なんだ。