蛭田瑞穂 18年1月14日放送
犬 犬の写真を撮るには
チェコスロバキアの国民的作家、カレルチャペックが
愛犬の子犬について綴ったエッセイ集『ダーシェンカ』。
「いかにして子犬の写真を撮るか」と題された一編の中で
チャペックはこう書く。
子犬の写真を撮るときには、石炭箱の中で、
握りこぶし大のダイヤモンドを見つけるほどの幸運に恵まれなければならない。(中略)
子犬にカメラを向けてみよう。
それから自分の幸運を試してみるといいだろう。
それはシマウマやベンガルトラを狩るより、ずっとスリルにあふれる体験だ。
これ以上はもう何も言わずにおこう。
まずは自分で確かめてごらんなさい。
川野康之 18年1月13日放送
漫画家水野英子ができるまで
小学校3年生の時、「漫画家になる」と決めた。
独学で、鉛筆で漫画を描き始めた。
中学生の時から漫画雑誌に投稿した。
しかし「水野英子」の名前はいつも入賞一歩手前の佳作どまり。
卒業すると、高校へは進まず、地元下関の水産会社に就職した。
採用通知とほぼ同時に、一通の手紙を受け取った。
東京の出版社からだった。
川野康之 18年1月13日放送
漫画家水野英子ができるまで
出版社からの依頼で、小さなカットを描いた。
いくつも案を作って送ると、
便せんにびっしり書かれた感想やアドバイスが返ってきた。
東京の編集者との間で分厚い封筒のやりとりが続いた。
漫画家水野英子が生まれようとしていた。
初めて完徹をしたときは、
祖母がずっとそばで消しゴムかけの
アシスタントをしてくれた。
夜明けの空がとてもきれいだったという。
川野康之 18年1月13日放送
yoppy
漫画家水野英子ができるまで
山手線の目白駅からバスに乗って10分。
椎名町4丁目の停留所でおりる。
停留所の先が三つ叉交番で、そこを右に入って、
二つ目をまた右へ曲がると左手に「トキワ荘」と書かれた看板が見えた。
水野英子、18歳。
はじめての上京である。
ぎしぎしと鳴るアパートの階段を上がりながら、胸がときめいていた。
川野康之 18年1月13日放送
漫画家水野英子ができるまで
短めのオカッパ頭にシューベルトのような丸ぶちめがね。
セーラー服に黒ズボン。
肘を張った右手で前髪をかきあげながら、
「水野です、よろしく」
とぺこんと頭を下げた。
その姿は、少女というよりはむしろ少年のようだったという。
目の前には同じトキワ荘の住人、
石森章太郎と赤塚不二夫が座っていた。
川野康之 18年1月13日放送
漫画家水野英子ができるまで
トキワ荘の部屋は四畳半。
家賃、月3000円。
トイレ、台所は共同。
石森章太郎、赤塚不二夫、水野英子の3人は、ここで
「U・マイア」というペンネームで漫画の合作をした。
仕事の合間に映画を見たり、夜遅くまで漫画の話をしたり、
仲間と過ごす毎日は刺激と楽しさでいっぱいだった。
七ヶ月をトキワ荘で暮らして、水野はいったん下関に戻る。
だがその七ヶ月は何年分にも相当する素晴らしい時間だったという。
大友美有紀 18年1月7日放送
「電車をデザインする仕事」水戸岡鋭治/800系新幹線
列車の愛称の公募は昭和四年に始まった。
東京、下関間を結ぶ特急列車「富士」と「櫻」が
その第一号だった。次点だったのは「燕」。
現在、九州新幹線800系の名前になっている。
木材や漆、金箔など日本の匠の技がふんだんに
使われたデザインでも話題になった。
デザイナーは水戸岡鋭治。
九州新幹線つばめは普遍性と機能美を追求すると
同時に、日本であり、九州という地域の
アイデンティティを洗練された形で表現すること。
JR九州には「デザイン&ストーリー列車」の
コンセプトで作られた列車が数多く走行する。
そのほとんどを水戸岡が手がけている。
大友美有紀 18年1月7日放送
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「電車をデザインする仕事」水戸岡鋭治/ゆふいんの森
博多から日本屈指の温泉リゾート湯布院までを走るのが、
「ゆふいんの森」。
デザイナーの水戸岡が
リゾート・エクスプレスという発想を徹底して
仕上げた別荘のような特急だ。
カウンター式のビュッフェがあり、
対面する窓は足元まで広げられ、開放感が楽しめる。
大きな特長は「ハイデッカー構造」と
呼ばれる床の高い構造によって、
高い位置に設けられた車窓からの風景です。
他の車両にはない角度から外の風景を見渡すことができます。
現場判断では難しいと言われた。
けれども水戸岡は原寸模型をつくり説得し、実現した。
眺めのいい列車、そしてバリアフリーの通路が出来上がった。
大友美有紀 18年1月7日放送
kimuchi583
「電車をデザインする仕事」水戸岡鋭治/ななつ星 in 九州
工業デザイナー水戸岡鋭治といえば、なんといっても
JR九州のクルーズトレイン「ななつ星 in 九州」だろう。
日本初の陸のクルーズを実現した新しい旅のステージ。
Aクラスの寝台列車、豪華寝台列車をつくることで
世界に負けない「日本における最高のサービス」の提供を
目指した一大プロジェクトだった。
外観については、最初は前面ガラス張りデザインしました。
しかし予算的に難しくあえなくお蔵入りとなりました。
内装は、家具、ファブリック一つ一つ図案を起こした特注品で、
和と洋、新と旧を巧みに融合するというデザインテーマのもと、
国内の技術を使い、上質で洗練された、懐かしくて新しい空間を
目指してトータルデザインしました。
トータルデザインとは「目に見えるものすべて」という意味です。
鉄道デザインの夢とロマンが実現した「ななつ星 in 九州」は、
一両はラウンジバー、一両はレストラン、残りの五両がゲストルーム。
十四組二十八名の乗客のためだけの贅と美を施した列車だ。
一両に二室しかないデラックススイートは、広々とした優美な空間。
最後尾の部屋は全面が窓になっていて、広がる景色を眺めながら旅ができる。
今年の9月まで、すでに予約が埋まっている。
大友美有紀 18年1月7日放送
りんてつ
「電車をデザインする仕事」水戸岡鋭治/いちご、おもちゃ、たま
工業デザイナー水戸岡鋭治がデザインする列車は、
豪華なものばかりではない。
和歌山電鐵貴志川線という路線では、
「いちご電車」「おもちゃ電車」「たま電車」を手がけた。
貴志川特産の「いちご」をテーマにした電車では、
和歌山は「木の国」でもあるので、細かいところまで、
ふんだんに木を使いました。
「おもちゃ電車」では、カプセル入りおもちゃの自動販売機を
並べおもちゃのショーウインドウなどをつくりました。
終点の貴志川駅の猫の「たま」が駅長になったことで話題になり、
猫をイメージした「たま電車」をつくったのです。
楽しいものをつくろう!ナンバーワンではなくオンリーワンをつくろう!
そういったコンセプトで地域を盛り上げる電車を作り上げた。