佐藤延夫 17年12月2日放送
againstthetide
絵本作家の心 エリック・カール
アメリカの絵本作家、エリック・カール。
色をつけた紙を切り、貼り付けていくコラージュという手法は、
美術学校時代に身につけたという。
「はらぺこあおむし」
「くもさん おへんじ どうしたの」
「だんまりこおろぎ」
「さみしがりやのほたる」
彼の代表的な四部作は、
どれも主人公が虫であり、
元のタイトルは、
「The Very Hungry Caterpillar」
「The Very Busy Spider」
「The Very Quiet Cricket」
「The Very Lonely Firefly」
全てに「Very」という言葉がつくのは
エリックの遊び心。
そして全ての絵本に独特の仕掛けがある。
「私は自分の直感を信じ、自分に正直に絵本を作っている。
この点では決して妥協をしない。」
その楽しげなデザインだけではない。
しっかり筋が通った絵本なのである。
佐藤延夫 17年12月2日放送
Dolph Kohnstamm
絵本作家の心 ディック・ブルーナ
絵本の中のミッフィーは、いつも口をつぐんでいる。
その理由は、
絵の表情に左右されることなく、
子どもが想像力で楽しむ余地を残すため。
オランダ出身の絵本作家、ディック・ブルーナは、
そんなシンプルさを追い求めた。
キャラクターは表情を変えないが、
後ろ姿やレイアウトで心情を表現する。
言葉にリズムが生まれるように、
文章は何度も何度も書き直す。
子どもが2回読めば暗記できてしまうほどシンプルに。
子どもの気持ちを一番に考えた絵本作家は
今年、89歳でこの世を去った。
だが、彼のスタイルは永久に本の中で微笑み続ける。
石橋涼子 17年11月26日放送
JeepersMedia
香りの話 香りと味の関係
料理の味は、8割近くが香りだという。
香ばしい醤油の匂い、肉の脂が焼ける匂い、
爽やかな柑橘の匂い、温かい煮込みの匂い。
美味しい匂いは、私たちの食欲を刺激する。
その一方で、こどもが苦手なピーマンに代表されるように、
体に良いものが、いい香りとは限らない。
アメリカのコラムニスト、ダグ・ラーソンの言葉。
緑の野菜がもしベーコンのような匂いだったら、
人間の平均寿命は格段に長くなっていただろう。
すっかり深まった食欲の秋。
栄養バランスも、大切に。
石橋涼子 17年11月26日放送
Dovima-2010
香りの話 ジバンシィのつくった香り
デザイナーのジバンシィは、
女優オードリー・ヘップバーンを
ファッションの面で支えた存在でもある。
『ティファニーで朝食を』と聞いて
誰もが思い浮かべる黒のドレスも、彼の作品だ。
ジバンシィはオードリーのために
ドレスだけでなく、香りもデザインした。
香水の名前は、ランテルディ。
「禁止」を意味するフランス語で、
この香りを気に入ったオードリーがジバンシィに
私以外に使わせてはダメよ
と言ったことから命名されたのだとか。
オリジナルのレシピは、
清楚でフローラルな中に芯の強さが感じられる、
ジバンシィのミューズにふさわしい香りだったという。
小野麻利江 17年11月26日放送
wiserbailey
香りの話 香りの街・グラース
フランス南東部の都市・グラースは
世界的な「香水の都」と称され、
今もなお、フランス産の香水の半分以上は
ここで生産されている。
もとは革製品が主要産業だったが、
革手袋を外したときに手に残る臭いの対策として
「香り付き手袋」を売り始めたのが、香水づくりの始まり。
ラベンダー、ジャスミン、ローズマリー、
ミモザ、オレンジフラワー・・・。
温暖な気候に恵まれたグラースには
香りの原料となる花たちが数多く自生し、
今もなお、稀代の調香師たちの感性を刺激する。
エルメスの香水を手がける調香師、ジャン・クロード・エレナも、
グラースで調香師をしていた父親から、
香りについての「教育」を施されたことを語っている。
父は何か食べる前あるいは飲む前に
その一つ一つの素材をまず嗅がせるということを
僕と兄弟にさせてきました。
慌てて飲み込まず、ゆっくりと呼吸し、
思考することの喜びを発見しました。
熊埜御堂由香 17年11月26日放送
香りの話 土屋耕一さんのキャッチフレーズ
香りは、女の、キャッチフレーズ。
ある化粧品メーカーの広告に使われたフレーズだ。
言葉にしないで、香りで伝える。
すべての女性が、あらゆる時に、そうできたなら。
きっと世界から、男と女の喧嘩はなくなるだろう。
薄景子 17年11月26日放送
romana klee
香りの話 CHANEL NO.5
伝説の香水、「CHANEL NO.5」
ココ・シャネルがその調香を依頼したのは、
天才調香師といわれた、エルネスト・ポーだった。
彼の試作品の瓶には1から5、20から24の数字が貼られ
その中からシャネルは5番を選んだという。
5という数字はシャネルにとって、純粋で神秘的なものだった。
幼少期、修道院の孤児院で過ごした彼女が通った聖堂の通路には、
この数字が模様のように描かれ、
修道院の庭には、5つの花びらをもつ
ゴジアオイが咲いていたという。
特別な数字を纏ったシャネル初の香水は
自身の5度目のコレクションの日、5月5日に発表された。
かのマリリン・モンローが「何を身に着けて寝るのか」と
尋ねられたときの答えにも、この神秘の数字は秘められる。
「シャネルの5番を5滴よ」
茂木彩海 17年11月26日放送
welshwitch36
香りの話 「ロードゥ イッセイ」
イッセイミヤケがはじめて手がけた香水、
「ロードゥ イッセイ」。
意味は、「イッセイの水」。
自立した女性が身に着ける香りは
水のようにクリアでありたい。
衣服を一枚の布として考える
イッセイならではのシンプルな思想が、
香りにも受け継がれている。
「ロードゥ イッセイ」が完成して、25年。
イッセイによってデザインされた香りは、
いまなお世界中の女性を、香りで応援し続けている。
茂木彩海 17年11月26日放送
香りの話 「鉄の女」の香り
鉄の女、マーガレットサッチャーが愛用した香水は、
Penhaligon’s(ペンハリガンズ)の
「Bluebell(ブルーベル)」だと言われている。
香りの特徴はというと、
はじめにグリーン系のさわやかな香りがただよい、
しばらくするとヒヤシンスやジャスミンなどのフローラルへ。
最後はスパイスが、香り全体を引き締める。
甘くセクシーなわけでもなく、
かわいらしいわけでもない。
強く、重厚感のあるリッチな香りを選んだサッチャーから、
香りは女性にとって大切な意思表示のひとつであると
気づかされる。
熊埜御堂由香 17年11月26日放送
Mohmed Althani
香りの話 ジョー・マローン夫妻
日本でも知られるイギリスのフレグランスブランド
ジョー・マローン。
ブランドを設立した調香師ジョー・マローンさんは
カリスマ的な人気をほこる。
彼女のこだわりは、自分の手と嗅覚だけを信じて
機械を使わずに調香すること。
ブランドをここまで大きくしたのは、19歳で出会い、
経営を支えた夫の存在だ。
彼女は、夫の匂いを、どんなささやかな
ものからでも嗅ぎ分けられるという。
ブランドを代表する香りは、夫のために調香したものだ。
フレグランスとは香る人によって感じ方が違うもの。
きっとその香りの中には、
彼女にしか甘受できない夫の香りが含まれている。