渋谷三紀 17年8月19日放送
Chris Campbell
茨木のり子と珈琲
詩人、茨木のり子。
毎朝、電動ミルで珈琲を挽き、
ケトルでお湯を沸かして、朝食に飲んだ。
のり子の書いた「食卓に珈琲の匂い流れ」という詩がある。
農家の納屋の二階に住んでいた戦時中に飲んだ
インスタントコーヒーの味を思い出し、
「豆から挽きたてのキリマンジャロ」や
「一滴一滴したたり落ちる液体の香り」をよろこぶのり子。
「やっと珈琲らしい珈琲がのめる時代」と綴った。
当たり前のように見えて、
当たり前ではない。
それは、しあわせの匂いだった。
蛭田瑞穂 17年8月13日放送
左利き サウスポーの由来
映画「ロッキー」。
主人公のロッキー・バルボアはフィラデルフィア出身の
サウスポーのボクサーという設定である。
劇中、ロッキーが恋人のエイドリアンに
サウスポーという言葉の由来を説明する場面がある。
昔々、200年も前の大昔、
フィラデルフィアにケンカに滅法強い男がいた。
そいつは左利きだったから腕はいつもニュージャージーを向いていた。
つまり、南を向いていたってわけだ。
だからそいつは「サウスポー」と呼ばれるようになったのさ。
もちろん、これは映画の中のホラ話。
だが、映画のフィナーレでフィラデルフィア出身のサウスポー、
ロッキー・バルボアは見事、世界チャンピオンの座を勝ち取る。
蛭田瑞穂 17年8月13日放送
Chris Yarzab
左利き サウスポーのボクサー
映画「ロッキー」。
無名のボクサーのロッキー・バルボアが
世界チャンピオンのアポロ・クリードに勝てたのは
ロッキーがサウスポーだったことが大きい。
アポロがロッキーを対戦相手に指名すると、
トレーナーは激しく反対した。
チャンプ、こいつはサウスポーだぞ!
サウスポーだけはやめておけ!
右利きのアポロ・クリードは左利きのボクサーを苦手としていた。
だが、アポロは相手の力を見くびっていた。
ロッキーはサウスポーという数少ない利点を活かし、
格上の世界チャンピオンをノックアウトした。
蛭田瑞穂 17年8月13日放送
左利き シルベスター・スタローン
1970年代の頭、シルベスター・スタローンは売れない役者だった。
生活は貧窮の底にあった。
1975年29歳の時、観戦したヘビー級タイトルマッチに感銘を受け、
わずか3日で脚本を書き上げたスタローンは映画会社に売り込みに行く。
これが無名のボクサーが一夜にして世界チャンピオンの座を射止める
映画「ロッキー」の脚本である。
映画は世界的に大ヒットし、その年のアカデミー賞も受賞する。
ロッキー同様、スタローンもまた
この映画によってアメリカンドリームを手にした。
主人公のロッキーがサウスポーのボクサーなのは
スタローン自身が左利きだから。
佐藤日登美 17年8月13日放送
derekbruff
左利き 左利きの大統領たち
8月13日は、左利きの日。
イギリスにある「Left-Handers Club」によって制定された。
彼らの目的は、左利きの人々の生活環境の改善や、
左利きグッズの普及をメーカーに呼びかけること。
記念日である今日は、
左利きに焦点を当てたイベントが開催される。
左利き対右利きで試合。
左利きの人のためのティーパーティー。
パブでは左利き用の栓抜きで酒が開けられ、
左手を使ってカードゲームを楽しむ。
右利きの人も、今日だけは左手を使ってみては。
佐藤日登美 17年8月13日放送
左利き 左利きの大統領たち
ジェラルド・フォード、
ロナルド・レーガン、
ジョージ・ブッシュ、
ビル・クリントン、
バラク・オバマ。
彼らに共通するのは、
アメリカの大統領だったこと、そして左利きであること。
左利きのアメリカ国民は人口の10%しかいないと言われるが、
ここ十数年で見ると大統領の二人に一人は左利き。
利き手が左だと脳が発達するとも、
クリエイティビティスキルが優れているとも言うが、
果たして関係はあるのだろうか。
ちなみに、現大統領のドナルド・トランプは、右利き。
佐藤日登美 17年8月13日放送
ドラ狂
左利き わたしの彼は左きき
わたしの わたしの彼は 左きき
1973年、麻丘めぐみが歌った「わたしの彼は左きき」。
「左利き」という歌詞が出るたび
くるりと左手を返す仕草が可愛らしく、
キャッチーなリズムとともにこの曲は大ヒット。
麻丘自身は右利きだったが、
曲のキャンペーン中は左手でサインをしたり箸を使ったりと、
「左利き」をアピールした。
この曲をきっかけに、
それまで矯正されることが多かった左利きはちょっとした憧れの的になった。
森由里佳 17年8月13日放送
左利き 素直な手
20年以上も左利きの人の生活を研究されている、
左利きライフ研究家のレフティやすおさんをご存じだろうか。
その
の通り左利きの彼は、
話すときや楽器を弾くとき、
自然と左手が動き出すことに気がついた。
そりゃ、「利き手」だからね。
と片付けずに考えてみると、ある答えに行き着いたのだという。
何かにつけて自己主張するのは、
いつも利き手なんですね。
それは、利き手が心につながっているからではないか、
と思うようになりました。
なるほど、そう思って利き手を見ると、
なんだか素直でかわいいやつに見えてくる。
森由里佳 17年8月13日放送
Garrett Wade
左利き 手を取り合って
とある文房具店が、世界人口の約1割のために立ち上がった。
「レフティー21プロジェクト」。
人口の約1割といわれる左利きの人のための道具を増やし、
彼らが活躍しやすい環境を作るプロジェクトだ。
旗振り役は、「左利きを幸せにする店」として取材されたこともある
文房具店の店主、浦上裕生さん。
自身も左利きで、店には左利き用グッズを多く取り揃えている。
大手文具メーカーも参画するこのプロジェクト。
立ち上げのきっかけを、浦上さんはこう語る。
「世界でも珍しい左利きグッズを開発し、
2020年に向けて世界にアピールしたい。
少数派にも優しい社会につなげたい」
日本らしい心配りが、手と手をとりあい、またひとつ。
川野康之 17年8月12日放送
Copperdog ~ Diane
マーメイド号が太平洋を横断した日
高校のヨット部ではじめてヨットに乗った時、少年は感嘆した。
「風だけでよう走るもんや」
人が何かに魅了されるのは、シンプルな驚きによってである。
少年は魅了された。風だけを動力として海の上を自由に走る乗り物に。
この時の感動が、少年の人生に影響を与え、数年後には太平洋横断の冒険にまで連れ出すことになる。
太平洋を渡るための小さな船を作った時、堀江謙一は、わざわざ設計に手を加えて、船体にエンジンを乗せられないようにした。
風だけで走るのでなければ冒険の値打ちはないと考えたのである。
1962年、5月13日。
単独太平洋横断に向け、マーメイド号は出発した。
西宮港は無風だった。
エンジンのないヨットはピクリともしない。
防波堤を抜け出すまでに、1時間半もかかった。
翌日になってもまだ大阪湾の真ん中に浮かんでいた。
やっと冒険が始まったのに、肝心の風が吹いてくれないのだ。