原央海 17年7月16日放送
スポーツ ゴルフカップ篇
2020年が近づき、人々のスポーツ熱が高まるこの頃。
そういえば、「スポーツ」といえばこんな話が…
100年以上前、
まだゴルフに統一されたルールがなかった頃、
カップはシャベルで適当に穴を開けていた。
しかし、いちいち穴の大きさを決めるのも面倒だし、
緑も崩れて使いづらい。
そんな時、
セント・アンドリュースのコース管理人トム・モリスが、
たまたまグリーンの側にあった土管を使ってみたところ
このサイズ感が大好評。
すべてのカップの大きさが
土管の直径108ミリメートルに統一されたそうだ。
ちなみに、その土管とは、
イギリスのセントアンドリュース市で使われている水道管。
今も街では、同じ直径の水道管が使われているとか。
三島邦彦 17年7月15日放送
大きな魚、あるいは瞑想 デイヴィッド・リンチ
伝説の経営者スティーブ・ジョブズ、
世界最高峰のテニス選手ノバク・ジョコビッチ。
彼らに共通している日々の習慣、それは毎日の瞑想。
「エレファントマン」「マルホランド・ドライブ」など
独特の作品世界で知られる映画監督デイヴィッド・リンチもまた、
30年以上に渡り午前と午後の瞑想を欠かさない瞑想者の一人。
撮影現場でも静かな場所を用意して瞑想するという彼は、
瞑想の必要性についてこう語る。
アイデアとは魚のようなものだ。
小さな魚をつかまえるなら、浅瀬にいればいい。
でも大きな魚をつかまえるには、深く潜らなければならない。
三島邦彦 17年7月15日放送
Sam Soffes
瞑想、あるいはスタイル 村上春樹
映画監督デイヴィッド・リンチが
瞑想によって内なる世界へ
深く潜りアイデアを得るというように、
小説を書くときの精神状態を
井戸や地下室に例える村上春樹もまた、
「深く潜る人」に他ならない。
1982年、インタビューを受けた村上春樹は
小説を書く上で大切にしていることについてこう語った。
ボクの場合、なるたけ、思いを減らそうとしてるのね。
なるたけ文体から始めようと思ってる。
それから35年後、
2017年の村上春樹はこう語る。
僕にとっては文体がほとんどいちばん重要だと思う。
英語で文体はスタイル。
35年に及ぶ深い探求と一貫したスタイルが
村上春樹と読者の間の信頼関係を作っている。
三國菜恵 17年7月15日放送
ryumu
妄想、あるいはエネルギー 横澤夏子
同窓会の帰りにはかならず泣いてしまう。
吉本芸人・横澤夏子は18歳のときに上京。
地元で就職はせず、芸人の道へすすんだ。
彼女が選べなかった方の人生が、彼女はうらやましい。
「地元のOLの友達に負けたくない」という気持ちが、
なぜだかずっとぬぐえない。
大学を卒業して、社会人の肩書きを得ること。
地元の子と結婚して、実家のお墓を守ること。
恋愛に疲れたと言えるほど、たくさん恋愛してみること。
地元に置いてきたものすべてがまぶしく見えるから、
同窓会の帰りにはかならず泣いてしまう。
帰らなければ傷つきはしないけれど、
そこで得る反動のエネルギーが、ふしぎな原動力になる。
三國菜恵 17年7月15日放送
月、あるいはタンパク質 Spiber
クモの糸が繊維になる。
そんな夢のような話を実現させてしまった企業がある。
山形県鶴岡市に拠点を置くカンパニー、Spiber(スパイバー)。
クモの糸の成分であるタンパク質は、
アミノ酸との人工合成によって多様な繊維をうみだせる。
そのポテンシャルに着目して、開発に踏み切った。
石油に変わる繊維として注目され、
2016年には、アウトドアブランドのTHE NORTH FACEと共に
アウタージャケットを開発した。
金色に輝くジャケットは、
MOON PARKAと名付けられた。
持続可能な環境をめざす、人類の夢がそこに光っている。
厚焼玉子 17年7月15日放送
トゥシューズ、或いは空へのあこがれ
400年ほど昔、
バレエの客席が舞台を見おろす構造になっていたときは
誰もダンサーの足など気にしなかった。
220年前、ロンドンシアターではじめてフライングマシーンを使った。
ダンサーはワイヤーの助けを借りて爪先で踊るようになった。
1827年、マリー・タリオーニがはじめて自力で爪先で立って踊り、
空を飛ぶイメージを表現した。
そのときのシューズはただのサテンの布で、
爪先が少し強化されているに過ぎなかった。
しかし、トゥシューズの歴史はここからはじまる。
タリオーニに刺激されたダンサーは技術の向上にはげみ
靴職人はダンサーの要求にこたえていった。
手仕事でつくられるトゥシューズ。
空気のように軽い存在でありたい、
風のように漂いたい、空へ昇りたい。
そんなあこがれのために存在する。
森由里佳 17年7月9日放送
叫び 絶叫マシンと老紳士 「そのはじまり」
アメリカのジェットコースターは、
日本のそれとは比べものにならない。
そんな話を聞いたことがある人もいるだろう。
アメリカに、
絶叫マシン設計会社U.S. Thrill Ridesを創業し、
現役設計士として活躍する男がいる。
彼の名前は、ビル・キッチン。
やんちゃな若者かと思いきや、60歳を超える老紳士だ。
40歳の時に、人生を変えるような体験をしようと考え
スカイダイビングに挑戦したのが創業のきっかけだという。
とんでもないスリルの虜になったビルは、以来、
絶叫アトラクションに乗るたびに、
それをいかに面白くするかで頭がいっぱいになり、
ついには会社まで作ってしまった。
初老となったビルの人生は、まだまだ加速中のようだ。
森由里佳 17年7月9日放送
叫び 絶叫マシンと老紳士 「その人生」
絶叫マシン設計会社U.S. Thrill Ridesを創業し、
現役設計士として活躍する男、ビル・キッチン。
これまで数々の新しいジェットコースターを開発してきた。
彼の地元、フロリダの新聞は、
ビルを“inventioneer”として紹介する。
『発明家』のInventorと『エンジニアengineer』を
組み合わせた造語だ。
この表現は的確だと思います。
みんなが楽しめて、いつまでも記憶に残るような体験を思い描き、
それを現実のものにしていくのが私の仕事ですから。
40歳までは、放送業界でサラリーマンとして働いていたビル。
それが一転、発明家・エンジニアとして世界中に作品を送り出している。
その様はまさに、
「人生はジェットコースターのようだ」という言葉がぴったりだ。
森由里佳 17年7月9日放送
Das Bobby 2000
叫び 絶叫マシンと老紳士 「その目指す先」
以前提供したものと全く異なる新しい体験をつくり出したい。
そう語るのは、
120を超える世界のテーマパークに絶叫マシンを送り出す
U.S. Thrill Ridesの創業者、ビル・キッチンだ。
絶叫マシンは広大な面積を必要とするため、
ラスベガスなどの混み合う市街地では、土地の確保は難しい。
そこで、ビルは考えた。
ならば、その分高さで勝負すれば良い。
そして、173メートルもの柱を駆け登るジェットコースター
「The Skyscraper」を構想した。
お客さまの絶叫は、私の笑顔の源です。
そう笑うビル・キッチンの創作意欲は、
60歳を超える今なお、上昇し続けている。
佐藤日登美 17年7月9日放送
叫び 花の叫び1
「廃棄花」。
パーティーやテレビ番組、イベントなどで
一日、ときには数時間だけ飾られ、捨てられる花のことをこう呼ぶ。
この花を助けたい、と立ち上がった女性がいた。
コピーライター・古橋あや香。
古橋は「廃棄花」に「SHY FLOWER」という可愛らしい名前をつけ、
「SHY FLOWER PROJECT」を立ち上げた。
捨てられる運命だった花を回収し、クリエーティブに再生することで
価値を変えるアートプロジェクト。
コンセプトは、
「助けてと叫ぶ事のできないすべての花のために」。