藤本宗将 17年4月9日放送
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鎌倉の大仏と大統領
今年1月、8年間の任期を終えた
アメリカのバラク・オバマ大統領。
2009年に大統領として初来日した際の演説では、
少年時代に母親と鎌倉に行ったエピソードを披露した。
まだ小さかったオバマ少年は、
大仏よりも抹茶アイスクリームのほうに
夢中だったそうだ。
その翌年、再び来日したオバマは、
鎌倉を訪れている。
大仏さまに見守られながら
思い出の抹茶アイスを味わった大統領は、
ゲストブックにこう書き残した。
日本文化のすばらしい宝と再会できて光栄だ。
この美しさは何年も私の記憶に残っている。
藤本宗将 17年4月9日放送
campra
鎌倉の大仏と女流歌人
鎌倉大仏の裏手には、
有名な与謝野晶子の歌碑がある。
かまくらや みほとけなれど 釈迦牟尼は
美男におはす 夏木立かな
与謝野晶子は「釈迦牟尼」と詠んだが、
正しくはこの大仏は「阿弥陀如来」。
美男と褒められたはいいが、
名前を間違えられては
大仏さまも複雑な気分だろう。
藤本宗将 17年4月9日放送
京の大仏と天下人
大仏といえば奈良と鎌倉。
しかし、かつては三大大仏に数えられる
もうひとつの大仏があった。
天下を統一した豊臣秀吉が、
晩年になって京都・方広寺につくらせたものだ。
記録によれば、その高さは19m。
奈良の大仏が15mほどだから、その巨大さがわかる。
しかし、そんな方広寺の大仏も
慶長伏見大地震によって倒壊してしまう。
倒れた大仏を見て秀吉はこう言い放ったという。
かように、わが身を保てえざる仏体なれば、
衆生済度(しゅじょうさいど)は、なかなか思いもよらず。
自分の身も守れない仏に
人々を守れるものか、と激怒したのだ。
さらに大仏めがけて矢を射かけたという話まで残っている。
もしかしたら、自分亡き後の不安が
秀吉をそこまで苛立たせたのかもしれない。
方広寺の鐘の銘をきっかけにして
豊臣家が滅んだのは、
それから19年後のことである。
渋谷三紀 17年4月8日放送
「悪妻」夏目漱石の妻(鏡子)
夏目漱石と妻、鏡子の出会いは、見合いの席。
歯並びの悪さを気にもせず、
ケラケラと笑う鏡子を、漱石は気に入った。
家事が苦手。朝も苦手。
朝食をつくらない鏡子は、
良妻賢母が当たり前の時代からすれば、
立派な悪妻。
「眠いものは眠い。嫌々やってもいいものはできない。」
そう口を尖らせる鏡子に漱石は、
「それも理屈だな。」と答えた。
並の神経では、
漱石の妻は務まらなかっただろうし、
漱石は漱石になれなかったかもしれない。
渋谷三紀 17年4月8日放送
「悪妻」森鴎外の妻(しげ)
森鴎外の妻、しげ。
気の強かったしげは
姑の峰子と折り合いがつかず、
実家に帰ってしまった。
失望した鴎外は、
母と嫁の諍いを書いた小説「半日」を書き上げる。
ほどなくして、なんと、しげも、
二人の新婚生活を元にした小説「波乱」を発表。
小説を通じて、二人は互いにやりあった。
実はこれ、離婚を避けるために
鴎外が考え、しげに勧めたこと。
しげは生涯、鴎外の傍にいた。
渋谷三紀 17年4月8日放送
「悪妻」芥川龍之介の妻(文)
文ちゃんが昔から好きでした。
今でも好きです。
芥川龍之介に、
こんなストレートで飾り気のない
ラブレターを書かせた女性が、妻の文。
芥川が自殺した時、
文は「お父さん、良かったですね」と
声をかけたというが、
その真意は文にしかわからない。
夫亡き後も、二人の息子を
それぞれ演劇人、音楽家として
立派に育て上げた妻に、
夫は空の上でも頭が上がらないはずだ。
渋谷三紀 17年4月8日放送
「悪妻」与謝野鉄幹の妻(晶子)
やわ肌のあつき血汐にふれも見でさびしからずや道を説く君
挑発的に恋を歌った、歌人、与謝野晶子。
雑誌「明星」を主宰する夫の鉄幹は、
晶子がいながら多くの女性と浮名を流した。
鉄幹は編集者としての才はあったけれど、
歌は明らかに晶子が上。
晩年の鉄幹は、日本を代表する歌人となった
晶子のマネージャーとして生きた。
晶子のそれは、耐えて終わる器ではなかった。
渋谷三紀 17年4月8日放送
「悪妻」谷川俊太郎の妻(佐野洋子)
画家でエッセイストの佐野洋子は、
詩人谷川俊太郎の妻だった。
谷川さんは佐野さんと結婚して、
詩の書き方が変わってしまうほどの影響を受けたという。
一方、佐野さんは、「私は何も変わらなかった。」とピシャリ。
妻は僕のお抱え批評家で、
僕は妻のお抱え執事なんだ。
谷川さんをして、こう言わせる女性は、
佐野さんの他にいるはずもない。
大友美有紀 17年4月2日放送
「プリンセスは大変」かぐや姫
わたくしも、心ならずこうして去るのでございます。
せめて天に昇っていくところをお見送りくださいませ。
かぐや姫は帝に手紙と不死の薬を手渡し、天の羽衣をまとう。
すると、喜怒哀楽の感情を失ってしまった。
情念が消え去ってしまうことを知っていたから、
誰の愛にも応えなかった。
帝は手紙と薬を最も天に近い
駿河の富士の頂上で燃やすように命じた。
薬を焼いた煙は不思議に途切れること無く
今も立ちのぼっているという。
帝が永遠の命を手にしていたら、
再びかぐや姫と出会う日が来たのだろうか。
優しさなのか呪いなのか女心は複雑だ。
大友美有紀 17年4月2日放送
「プリンセスは大変」シンデレラ
「シンデレラ」のもととなったとされる物語がある。
1635年前後にイタリアで出版された
民話集「五日物語」に収録された「灰かぶり猫」。
主人公の姫は、
父親の再婚相手に意地悪されている。
彼女は家庭教師に愚痴をこぼす。
あなたがお母さんならいいのに
家庭教師は今のお母さんがいなくなれば
自分が母親になれると
姫に継母殺しをそそのかす。
果たして家庭教師が母親になると、
また姫君はいじめられる。
めでたしめでたしとなるには、
過酷な試練を乗り越えなければいけない、
と物語は伝えたいのだろうか。