三島邦彦 17年3月25日放送
花ひらく 胡桃沢耕史(くるみざわこうし)
作家の胡桃沢耕史が
直木賞を受けたのは彼が58歳の年。
9歳の時に作家を目指し始め、
既に20年以上文筆で身を立ててきたが、
そのすべては出版社への持ち込み原稿で、
編集者から依頼受けたことは一度もなかったという。
賞さえとればこんなみじめな境遇から抜け出せる。
五十八歳で、先輩諸氏の中にはかなり不愉快に思われる方のいる、
必ずしも全面的に祝福されない状態の中でやっと取った。
それでも運命は一転した。
一晩で、編集者からの扱いががらりと変わる。
遅咲きだからこその深い喜びが
そこにあったに違いない。
中村直史 17年3月25日放送
DesEquiLIBROS
花ひらく グランマ・モーゼス
アメリカの国民的画家、グランマ・モーゼス。
「モーゼスおばあちゃん」と親しみをこめて愛されたこの画家は、
75歳にしてはじめて絵筆をとった。
貧しい農家に生まれ、働きづめの人生。
絵を描き始めた理由も、年老いてリウマチを患い
その「リハビリ」を兼ねてのことだったという。
「屋根つき橋」「冬景色」「散歩道」
彼女の絵には、日々の労働の中で目にした景色が、
生き生きと描かれている。
色のひとつひとつに、生き様が立ち現れるようだ。
晩年、どうやれば画家になれますか?
と質問されたモーゼスおばあちゃんは、
一言こう答えている。
「はじめればいいのよ」
三國菜恵 17年3月25日放送
花ひらく 青島幸男と植木等
サラリーマンになりそこねた男、青島幸男。
同級生が就職していく中、病床で寝ているしかなく、
ルサンチマンがたまっていった。
そしてこんな詞を書く。
「サラリーマンは気楽な稼業ときたもんだ」
『スーダラ節』と名付けられた
その歌を歌うことになったのは、
サラリーマンと無縁の、住職の息子、植木等。
こんな下劣なことばは歌えないと悩み、父親のもとへ。
すると父はこう言った。
この、「判っちゃいるけど止められない」って歌詞は素晴らしい。
人間てものはな、皆判っちゃいるけど止められないものなんだ。
こうなるはずじゃなかった。
そんな二人が出会い、昭和のテレビスターとして花開いた。
三國菜恵 17年3月25日放送
花ひらく 井上陽水
東京に来たのは、
グループサウンズの終わりの頃だった。
「ACB」というジャズ喫茶によく行っていた。
そこは自分のステージではなかったけれど、
時折、楽屋にいるメンバーから「歌っていいんだよ」と
声がかかることがあった。
客席はまばらで空いていたけれど、
気持ちは歌いたい盛りだった。
当時珍しかったリバーブのかかったマイクで歌うのがうれしかった。
そう語ったのは、シンガーソングライター井上陽水。
グループサウンズブームの終わりに、ひとりでステージに立った日から、
新しい歴史が動き出していた。
蛭田瑞穂 17年3月19日放送
Yoshikazu TAKADA
出会いと別れ 贈る言葉
暮れなずむ町の 光と影の中
去りゆくあなたへ 贈る言葉
武田鉄矢率いる、海援隊。
その代表曲「贈る言葉」が卒業シーズンの定番曲となって久しい。
だが、この曲はもともと、失恋の別れを歌ったものだ。
武田は言う。
天神という博多の繁華街で(中略)、
恋した女性が去っていく後ろ姿を見つめた。
何十年か経つと、みじめな思い出が美しい歌詞になっていました。
人生とはそういう味わい深い物語であります。
男女の別れを歌った曲は今、
人と人の、普遍的な別れを歌う曲になった。
蛭田瑞穂 17年3月19日放送
出会いと別れ 黒板のメッセージ
2016年の卒業シーズン。
ツイッターで一枚の写真が話題になった。
写っているのはある中学の、卒業の日の黒板。
一日の時間割りを書き込む黒板には、
代わりに担任の先生からの心温まるメッセージが記入されていた。
1時間後 最高の卒業式にしよう!
2日後 高校入試がんばれ!!
3週間後 ここまでは中学生です
4年後 東京オリンピック!誰が出るかな?
5年後 成人式で会いましょう!
宿題 幸せになりなさい
いつか、生徒たちが宿題をやり終える日が来るのを
先生は心待ちにしているにちがいない。
蛭田瑞穂 17年3月19日放送
yamada
出会いと別れ 卒業スピーチ
アマゾン・ドット・コムの創業者ジェフ・ベゾス。
彼は2010年、母校のプリンストン大学で
卒業生に向けたスピーチでこんな言葉を贈った。
みなさんは卒業した後、どんな選択をしていくのでしょう。
他の人と同じことをしますか?
それとも、やりたいことに挑戦しますか?
リスクと挑戦のどちらを選択しますか?
(中略)
あなたが80歳になった時、あなたが思い浮かべるのは、
自分が決断してきたことの数々です。
そう、日々の決断こそがあなた自身をつくるのです。
だから自分を信じて、自分の道を切り拓いてください。
佐藤日登美 17年3月19日放送
出会いと別れ ハローグッバイ
春は、出会いと別れの季節。
ロックバンドのくるりは、別れの切なさを
「ハロー」「グッバイ」という言葉に閉じ込めようとした。
ハロー&グッバイ
この気持ち説明できる言葉も覚えた
やるせなくて
今日も夜が明けるのを待っている
かみしめるように、彼らは何度も何度も「ハロー&グッバイ」を重ねる。
出会いと別れは、ときに苦しい。
佐藤日登美 17年3月19日放送
Stephan Geyer
出会いと別れ ハローグッバイ
春は、出会いと別れの季節。
この時期に渦巻く切ない感情を、
ミュージシャンのYUKIは「ハロー」「グッバイ」と明るく歌う。
私が見てきたすべてのこと
むだじゃないよって君に言ってほしい
人は誰かとかかわるハローグッバイ
この曲について、彼女はあるインタビューでこう話した。
新しい物事を始める時には、自分のなかに新しい血を入れようとする。
一方で愛着があるけど捨てなければいけないものもある。
それはちょっと切ないのだけれど、
何か月か先の自分を思い描いたときに、
それを捨てて良かったと思えるような選択を私はしてきたつもりです。
YUKIは知っている。
出会いと別れは、未来の自分を創るということを。
佐藤日登美 17年3月19日放送
lukask
出会いと別れ ハローグッバイ
春は、出会いと別れの季節。
出会いと別れを「Hello」「Goodbye」と歌った最も有名なバンドは、
きっとビートルズだ。
ハロー ハロー
なぜ君がグッドバイを言ったのかはわからない
それでも僕はハローと言うよ
さよならを告げる彼女に対して、
それでも彼は高らかにハローと言う。
出会いと別れを決めるのは、自分次第なのかもしれない。