薄景子 17年2月26日放送
Yercombe
手のはなし 長田弘の「詩集は刺繍」
詩人、長田弘の作品に
自身が愛した本に向けて書かれた詩集がある。
プラトン、ニーチェ、荘子、漱石、
アルデンセンやアラビアンナイトまで。
人生で長く深く付き合ったという
友人のような25冊に寄せて、詩人の言葉が紡がれる。
たとえば、梶井基次郎の「檸檬」
に寄せた詩の一節。
人は死ぬが、よく生きた人のことばは、死なない。
自身の中で生き続ける本の魂をリレーするかのように、
そこから長田の新しい物語が広がっていく。
彼は言う。
詩を書くことは、いわば手仕事である。
詩集というのは、
心の刺繍(ししゅう)のようなものなのかもしれない。
詩集は刺繍。
その手で一針一針ていねいに紡がれた詩は、
きょうも誰かの中で鮮やかに生き続ける。
茂木彩海 17年2月26日放送
手のはなし 自然の手仕事
『沈黙の春』で知られる作家、レイチェル・カーソン。
海洋生物学者でもある彼女は、著書の中で自然を丁寧に描写し、
そのまなざしは、雄大な自然にはもちろん、枯葉の下の小さな虫にも注がれる。
自然のいちばんの繊細な手仕事は、
小さなもののなかに見られます。
彼女の最期の手記、『センス・オブ・ワンダー』に残された
この一節。
自然が生んだ造形を「手仕事」
と表現する彼女の言葉には、
その「小さなもの」を、見事な出来栄えの工芸品を扱うように
実際に手にとり、近くで眺めてみてほしいという
想いが込められているようだ。
熊埜御堂由香 17年2月26日放送
手のはなし 漫画家の手
漫画、それは手から生まれる芸術のひとつと
いってもいいだろう。
日本を代表する漫画家、浦沢直樹。
彼は、腱鞘炎と闘いながら漫画を書き続けてきた。
「グーでペンを握ると腱鞘炎になりにくいんだ」
と
インタビューでちょっと得意げに語っていたことがある。
そこまでしても、書きたい。
浦沢さん自身が少年のような心を持ち続けて、今日もペンを握る。
熊埜御堂由香 17年2月26日放送
手のはなし 赤ちゃんの握りこぶし
赤ちゃんは、いつもぎゅっと手を握りしめている。
それは原始反射という生理的な現象だ。
けれど、その握られた手の中に指を差し込むと
握り返してくるから、大人はうれしくなってしまう。
赤ちゃんの握りこぶしの中には幸福がつまっている。
そんなよく聞く言い伝えは手と手が繋いできた
やりとりから生まれたのかもしれない。
手には、人間の原始的な幸福が宿っているのだ。
名雪祐平 17年2月25日放送
卒業する君へ バラク・オバマ
2016年、ハワード大学、卒業式。
壇上に、バラク・オバマ大統領。
全米屈指の黒人名門大学で、
オバマは卒業していく若者が
何をなすべきかを語った。
ハワード大学は、多くのパイオニアを
生み出してきました。
黒人初の文学賞受賞者。
黒人初の最高裁判事。
しかしながら、
ハワード大学のミッションは、
最初のパイオニアを輩出するのではなく、
それが最後の人にならないように
することです。
オバマ自身が、最初のパイオニアである。
この卒業生のなかに、
やがて二人目の黒人大統領になる若者が
いるのかもしれない。
名雪祐平 17年2月25日放送
Detroity2k
卒業する君へ スティーブ・ジョブズ
2005年、スタンフォード大学、卒業式。
壇上に、Apple創業者、スティーブ・ジョブズ。
世界で最も有名な卒業スピーチが生まれた。
Stay hungry, stay foolish.
ハングリーであれ、愚かであれ。
その2年前の2003年。
膵臓がんの告知を受けていたジョブズは、
同じ卒業スピーチで、こうも語った。
好きなものを見つけなければならない。
今日が人生最後の日なら、
今からやることをやりたいか?
5年後の2010年。
イベントで観客からジョブズへ質問があった。
あの卒業スピーチに、
今、何か付け加えるとしたら?
そうだな、何を言うかな…
きっともっと大きな声で話すだろうな。
なぜなら今はより強く思うんだ。
人生は、はかない。
名雪祐平 17年2月25日放送
Fort Greene Focus
卒業する君へ ジョージ・ソーンダーズ
2013年、シラキュース大学、卒業式。
壇上に、人気作家、ジョージ・ソーンダーズ。
いままでで最も後悔したことを語った。
あれは、中学1年の時だった。
エレンという女の子が転校してきた。
小柄で恥ずかしがり屋な子だった。
金髪の髪を口で噛んだりして。
みんな、エレンを無視するか、からかった。
髪の毛、おいしい? などと。
おれは、そんなことには加担しなかった。
だけど、何もしなかったんだ。
エレンが家の庭に立ち、
学校に行くことを恐れていたのを
知っていたくせに。
そのうち、エレンの一家は引っ越していった。
42年も経っても忘れられない。
作家は卒業生をみつめ、伝えた。
私が、
人生で最も後悔しているのは、
やさしくなりきれなかったことだ。
名雪祐平 17年2月25日放送
Mathieu Thouvenin
卒業する君へ ジェフ・ベゾス
2010年、プリンストン大学、卒業式。
壇上に、Amazon創業者、ジェフ・ベゾス。
10歳の時の、忘れられない旅について語った。
祖父と祖母とジェフ。
車で旅行していた。
助手席で、祖母はよく煙草を吸っていた。
なんでも計算が得意なジェフは、
煙草が寿命を縮めるという知識をもとに、
祖母の肩をトントンとたたき、得意気に言った。
たばこ一口で2分寿命が縮まるんだ!
つまり、おばあちゃんの寿命は
もう9年も縮まっているんだよ!
自分の賢さを褒めてほしかった。
けれど、祖母は泣き出してしまった。
祖父は車を停め、外に出た。
ジェフにも来るように促した。
祖父は穏やかにこう言った。
ジェフ、
いつかわかる日が来ると思うが、
賢くなるよりも
やさしくなるほうが、
はるかに難しいことなんだよ。
名雪祐平 17年2月25日放送
@cpe
卒業する君へ ドリュー・ヒューストン
2013年、マサチューセッツ工科大学、卒業式。
壇上に、DropBox創業者、ドリュー・ヒューストン。
人生をよくする3つのキーワードを語った。
ひとつ、テニスボール。
成功者は
気になって仕方ない大切な問題を
解決することに没頭している。
テニスボールを追いかける犬のように。
ひとつ、サークル。
自分の周り、サークルに刺激的な人間を
たくさんもつ。
マイケル・ジョーダンだって
NBAに行かなければ、ただの人さ。
ひとつ、30,000日。
人生は30,000日しかない。
そう気づいた時、僕はもう
9,000日終わってたんだ。
人生を完璧主義で生きるのをやめよう。
いますぐ、自分の人生を面白くしよう。
さて、みなさん。
人生、何日過ぎましたか?
きょう1日も、そろそろ終わります。
奥村広乃 17年2月19日放送
プロレスの日
今日、2月19日は、プロレスの日。
1954年の今日、蔵前国技館で1つの試合が行われた。
力道山・木村政彦対シャープ兄弟。
日本で初めて行われた、
プロレスの本格的な国際試合であった。
その力強い戦いっぷりから力道山は、
あっという間に国民的人気者になる。
1953年に始まったテレビ放送がその人気を後押しした。
彼は、こんな言葉を残している。
『男が人の上に立って成功するには、
方法はたった一つしかないぞ。
それは過去に誰もやったことのないことを
一生懸命やることだ』