河田紗弥 17年1月22日放送

170122-01
Polifemus
ジャズな一日 ~心の食べもの~

漫画家・石塚真一の作品「BLUE GIANT」

音楽経験ゼロの主人公が、ジャズの生演奏に強く心を打たれ、
世界一のサックスプレイヤーを目指し、奮闘する姿が描かれている。

ジャズが好きで、自らもサックスを演奏する作者のジャズへの熱い想いが、
作品のいたるところに込められている。
主人公が通う学校の音楽の教師が言うセリフにこんな一節がある。

「音楽がなくても、生活はできる。
 でもね、私たちには心があるでしょう?
 心にも、食べものはあるのよね、きっと。」

きょうはジャズの日。
おいしい音楽を、
あなたの心に食べさせてあげてみてはいかがですか?

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河田紗弥 17年1月22日放送

170122-02

ジャズな一日 ~ベニー・グッドマン~

1930年代のアメリカでは、
白人と黒人が同じバンドで演奏をすることはなかった。

そんなアメリカの悪しき習慣を打ち破ったのが、
スウィングの王様と呼ばれる、ベニー・グッドマンだ。

当時は人種差別が激しく、
ホテルやレストラン、交通機関など、
多くの公共施設に、白人専用、黒人専用があるのが当たり前だった。

バンドに黒人を雇うことで、嫌がらせを受けることも、
黒人に対して偏見の目を向けている一部のファンが減ってしまうことも、
彼は、きっと予想できただろう。

しかし、ベニー・グッドマンは、
自らのバンドに、黒人のドラマーやギタリストを積極的に採用し、
当時は異例とされるようなステージを実現させることを選んだ。

彼はこんな言葉を残している。
「失ったものを数えるな。残ったものを数えよ。」

ベニー・グッドマンが残してくれたものは、
計り知れないほどに、大きかった。

きょうはジャズの日。

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河田紗弥 17年1月22日放送

170122-03
aplari
ジャズな一日 ~A列車で行こう~

マンハッタン北部のハーレム街125番地に、
黒人ミュージシャンの聖地として知られるアポロ・シアターがある。

そこを通る列車の案内記号はA系統。
つまりA Train。

「You must take the A train.」

ジャズの名曲「A列車で行こう」
この曲の歌詞には、
「いい音楽を聴くなら、アポロ・シアターへ急げ!
という
黒人作詞家ビリー・ストレイホーンの
ジャズへのプライドが込められている。

きょうはジャズの日。

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河田紗弥 17年1月22日放送

170122-04
x-ray delta one
ジャズな一日 ~音楽が死んだ日~

1985年8月12日。
日航機墜落事故で、坂本九は命を落とした。

彼が残した曲のひとつ、「上を向いて歩こう」
この曲の歌詞にある「ウォウウォオウ」という珍しいフレーズは、
あるジャズシンガーの影響を受けて生まれたものだ。

そのジャズシンガーとは、
黒人文化の象徴として知られるアポロシアターに、
はじめて白人としてステージに立ったことで知られる
バディ・ホリーだ。

バディといえば、
しゃくりあげるような裏声を用いて、独特のアクセントをつける
ヒーカップ唱法や軽快なビートが特徴だ。

奇しくも、バディ・ホリーも、
1959年2月3日に、飛行機事故で命を落としている。

坂本九、バディ・ホリー、
この二人が亡くなった日を、「音楽が死んだ日」として、
今でも多くの人が偲んでいるという。

きょうはジャズの日。

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河田紗弥 17年1月22日放送

170122-05
furanda
ジャズな一日 ~good job~

2015年に公開され、
世界中で話題になった映画のひとつに、
「セッション」がある。

名門音楽大学の伝説鬼教師のもとで奮闘する、
ジャズドラマー志望の若者を描いた作品だ。

鬼教師であるサッチャー教授の指導は
水膨れがつぶれ、手から血が流れたとしても、
演奏を続けさせるほどの厳しいものだった。

そんな彼は、作品の中で、こんなセリフを口にする。

「There are two words in the English language more harmful than good job.」

「英語には、人をだめにする言葉がある。それは、good jobだ。」

グッジョブと言われると、どこか人は安心してしまい、
成長を止めてしまう。

サッチャー教授は、そんな人間の弱さを見抜き、
自分の教え子を絶対に安心をさせない、という信念を貫くのだ。

きょうはジャズの日。

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河田紗弥 17年1月22日放送

170122-06
Robert Drózd
ジャズな一日 ~音楽の儚さ~

2011年に、
Jazz部門で日本人初のグラミー賞を受賞した上原ひろみ。

彼女の演奏といえば、即興演奏である。
楽譜にはない、そのときの直感での演奏は、
ときに自分でも、どう収拾をつけるのか分からなくなることがあり、
舞台上で困ったこともあるという。

しかし、そのリスクをとってまで、
彼女が即興演奏にこだわる理由について、彼女はこう語っている。

「同じ景色を2回見て、
1回目のときと同じくらい感動することって絶対にない。
今日を超える感動は同じ視点からは絶対にあり得ない。
だから、毎日違うルートを通りたいと思う。

上原ひろみが一番大切にしているもの、
それは、音楽の儚さだ。

きょうはジャズの日。

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河田紗弥 17年1月22日放送

170122-07
smkybear
ジャズな一日 ~これでも、いいんだ。~

美しい歌声が、幅広い年齢に愛されている
歌手のJUJU。

ヒップホップやハウスなども歌いこなす彼女が、
一番難しいけれど、一番好きと語るのがジャズだ。

彼女が、ジャズを好きな理由を、次のように述べている。

「ビリー・ストレイホーンのLush Lifeは、
 恋に破れた、飲んだくれの男が描かれている。
 複雑なメロディーと情緒不安定な歌詞なのにもかかわらず、
 聴いていて、居心地がいい。」

だからこそ、聴く人の多くは、
「これがいい」とは思えないけれど、「これでも、いいんだ」と思えて、
なんだか楽な気分になれるのだ。」と。

そんなジャズの懐の深さが、
ジャズが多くの人に永く愛されている理由なのかもしれない。

きょうはジャズの日。

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河田紗弥 17年1月22日放送

170122-08

ジャズな一日 ~C`est la vie~

第二次世界大戦前から晩年89歳まで
現役で活躍しつづけた
フランスのジャズバイオリニスト、ステファン・グラッペリ。

彼が亡くなる2年前、87歳のときに、
日本で公演をしたときのことだ。

「どうしてあなたは悲しい曲でもどこか楽しげに弾くの?」と聞かれ、
彼はこう答えた。

「死にたいと思いつめるほどの失恋をしても、
 時が経ち、歳を重ねるうちに、甘い思い出に変わるからだよ。
 それが人生さ!C`est la vie!」

きょうはジャズの日。

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藤本宗将 17年1月21日放送

170121-01

紫式部と風邪とニンニク

『源氏物語』第二帖「帚木」の冒頭に、
「雨夜の品定め」というくだりがある。

光源氏の部屋に集まった男性たちが
それぞれの女性論を語るのだが、
そのうちのひとりである藤式部丞の体験談に
風邪をひいた女性とのエピソードが出てくる。
その女性は、会いに来た彼にこう伝える。

 月ごろ、風病重きに堪へかねて、極熱の草薬を服して、
 いと臭きによりなむ、え対面賜はらぬ。

風邪で薬草を飲んでいてそのにおいが大変に臭いので
面会は遠慮させてください、ということだ。
この薬草とは、ニンニクのこと。
ニンニクの効能が古くから知られていたことがわかる。

それにしても
匂いが気になって男性の前に出られないとは、
作者である紫式部にも
そういう経験があったのだろうか。

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藤本宗将 17年1月21日放送

170121-02

能登屋甚三郎と風邪と葛根湯

風邪といえば、葛根湯。
2000年前に生まれたこの漢方薬は、
現在に至るまで多くの人々を助けてきた。

江戸時代末期の金沢で暮らしていた
町人・能登屋甚三郎の日記にも、
風邪で葛根湯を飲んだ記述が残っている。

 風邪気味だったのを我慢していたところ、
 寒さのせいか風邪がひどくなってしまった。
 そこで葛根湯を三回飲み、
 さらに二番煎じも飲んで今晩は汗をかいた。

さらに翌日には、こうある。

 夜に汗をかいたおかげで、
 風邪は昨日よりだいぶ良くなってきた。
 今晩も昨晩と同じく葛根湯を三回飲んで汗をかいた。

ちなみに日記によれば、
こうして風邪をひいているあいだにも
甚三郎は勤めに出ていたらしい。

風邪でも仕事を休めない。
そんな日本人の悪しき習慣は、
いつになったら治るのだろう。

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