礒部建多 16年12月18日放送
きよしこの夜
世界で300を超える言語に
訳されるクリスマスソング「Silent Night」。
日本名「きよしこの夜」。実は6番まで存在する。
1816年、
戦争の長い苦悩から解放された、
作詞者のヨゼフ・モールは、
「人類はみな兄弟である。」
と、平和への願いを4番の歌詞に綴った。
約100年後の1914年、
第一次世界大戦で起きた「クリスマス休戦」は、
ドイツ軍が「Silent Night」を歌い始めたことが
きっかけとなった。
平和への願いとともに、
これからもずっと歌い継がれますように。
奥村広乃 16年12月18日放送
黒いサンタがやってくる
定番クリスマスソングのひとつ
「サンタが街にやってくる」。
ドイツでは、なんと黒いサンタがやってくるという。
その名も、クネヒト・ループレヒト。
聖ニコラスの従者とされている。
黒い服。のびたひげ。痩せぎすの身体。
ブラックサンタと呼ばれることもあるという。
彼は悪い子のもとを訪れ、石炭やムチを届ける。
そして、とてもとても悪い子は、
袋に詰め込んで連れ去ってしまう。
恐ろしい存在だ。
悪い子を懲らしめる
クネヒト・ループレヒト。
良い子にプレゼントを贈る
サンタクロース。
叱るだけでも、褒めるだけでも、
子どもは育たない。
松岡康 16年12月18日放送
赤鼻のトナカイ
真っ赤なお鼻のトナカイさんは
いつもみんなの笑いもの。
クリスマスソングの定番「赤鼻のトナカイ」。
実はこのトナカイが生まれたのは意外に新しく1934年のこと。
デパートがつくったマスコットキャラクターだった。
生み出したのはコピーライターのロバート・メイ。
デパートから命を受けた彼は
いじめられていた昔の自分を重ねて
このトナカイをつくりあげた。
いじめられていたトナカイが
サンタの役に立つように、
いじめられている君だって、
だれかの役に立てるんだよ。
そこには、世界中の子供たちを勇気づける
優しいメッセージがある。
渋谷三紀 16年12月17日放送
Ilya Voyager
「君の名は。」と「新海誠」
2016年の大ヒット映画「君の名は。」
監督の新海誠は、
アニメ制作会社に勤めた経験がなかった。
監督、脚本、演出、作画、美術、編集・・・
すべてをひとりで手がけ、
自分の感覚をたよりに作品をつくってきた。
しかしあるとき限界を感じ、
作風を変えてつくった映画「星を追う子ども」は、
厳しい評価にさらされた。
手痛い経験を経てなお、
物語性にこだわった映画「言の葉の庭」や、
広告のアニメーションなどをつぎつぎ手がけ、
そろそろいけるかなと立ち上げたのが、
「君の名は。」の企画だった。
うまくいかない。失敗ばかりだ。
そう感じているとしたら、
あなたは成功の途中にいるのかもしれない。
渋谷三紀 16年12月17日放送
Joi Ito
「君の名は。」と「風景」
2016年の大ヒット映画「君の名は。」
新海誠監督は、
作品の背景を描くため現地に出向き、
一作品につき一万枚以上もの資料写真を撮る。
「君の名は。」の舞台は、岐阜と新宿。
主人公が出て行きたいと願う田舎の山並みも、
無尽蔵に人が行き交うターミナルの町並みも、
やわらかい光に包まれたそれは、
息をのむほど美しい。
今いる場所の美しさも、かけがえのなさも、
スマホばかり見ていたら見逃してしまうよ。
そう語りかけてくるようだ。
渋谷三紀 16年12月17日放送
MasterYu_V3
「君の名は。」と「音楽」
2016年の大ヒット映画「君の名は。」
ヒットの要因として、まずあげられるのが音楽だ。
エンドロールをふくむ4曲の劇中歌を手がけたのは
監督がずっとファンだったというRADWIMPS。
107分の映画の中に4曲のクライマックスが訪れるよう、
音楽から映像を構成した。
同じようにつくられた作品がある。
2014年のディズニー映画「アナと雪の女王」。
当初、姉のエルサは悪役の設定だったが、
先にできあがった「Let It Go」の前向きな歌詞にあわせて、
主人公の性格まで変えてしまった。
結果、曲も映画も世界中で大ヒット。
新海監督は言う。
音楽は出演者のような存在だ。
渋谷三紀 16年12月17日放送
Chi King
「君の名は。」と「とりかえばや」
2016年の大ヒット映画「君の名は。」
東京に住む男子高校生と
岐阜に住む女子高校生の体が、
夢の中で入れ替わる物語。
「入れ替わり」の物語といえば
古くは平安時代に書かれた「とりかえばや」がある。
「とりかえばや」とは「取り替えたいなあ」という意味。
父の策略で男女逆に育てられた、
男装の姫君と女装の若君が宮中で騒動をまきおこす、
いまでいうラブコメディのような作品。
いのちは一度きり。
別の人生を生きることへの憧れは、
1000年たっても変わらない。
渋谷三紀 16年12月17日放送
hto2008
「君の名は。」と「君の名は」
2016年の大ヒット映画「君の名は。」
若い世代に向けて作られた作品に、
連日50代以上がつめかけているという。
その世代の「君の名は」といえば、
1954年に邦画一位を記録した、
岸恵子と佐田啓二主演のメロドラマ。
ヒロイン真知子の真知子巻きがブームになったが、
新海版とはまったく関係がない。
ちなみに1954年は
シリーズ一作目の映画「ゴジラ」が公開された年でもある。
62年後、最新作の「シン・ゴジラ」と「君の名は。」が
並んでヒットするなんて、
偶然にしては、よくできている。
四宮拓真 16年12月11日放送
天才絵師 河鍋暁斎「画鬼」
幕末・明治の人気絵師、河鍋暁斎(かわなべ きょうさい)。
暁斎の最大の魅力は、縦横無尽で多彩な作風。
注文を受ければ来るものは拒まず、
仏画・浮世絵・春画・風刺画と、
あらゆるジャンルを書き尽くした。
そんな自分を暁斎は、画の鬼、「画鬼(がき)」と称した。
四宮拓真 16年12月11日放送
天才絵師 河鍋暁斎「熱量」
幕末・明治の絵師、河鍋暁斎。
初めて彼の作品を見るものは、
その熱量と膨大さに圧倒される。
とにかく多作。
1日に200枚の画を描いたこともあったという。
一方で、この多作が仇となり、
美術史の中でもなかなか評価が定まらなかった。
ただ、専門家の評価はともかく、
その驚くべき存在感は誰にも否定できない。
熱狂的なファンも多く、実はタトゥーにもしばしば使われるそうだ。
暁斎の残した熱は、いまも日本人の身体に刻まれている。