藤本宗将 16年7月16日放送

160716-03

APOLLO 11 バズ・オルドリン

1969年、アポロ11号は月面に到達した。
しかしその偉業が捏造だと主張する者もいる。

そんな陰謀論者のひとりが2002年にある事件を起こした。
アポロの乗組員だったバズ・オルドリンを待ち伏せしたのだ。

男はオルドリンに対して執拗に迫り、
挑発的な言葉をぶつけた。

 聖書に手を置いて、月に行ったことは事実だと誓ってみろ!
 行ってもいないのにインタビューや著作で報酬を得るのは
 詐欺・窃盗行為だ!

さらに男は罵声を浴びせ続ける。

 臆病者!嘘つき!盗人!

そのときだった。

当時72歳とは思えない
オルドリンの強烈なパンチが男の顎に決まったのだ。

どんなときも沈着冷静を求められる宇宙飛行士だが、
このときばかりはプライドが許さなかったのだろう。

のちにオルドリンは、こんなツイートをしている。

 もしわれわれが着陸していないのなら、
 今頃ロシアがそれを暴露しているはずさ

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藤本宗将 16年7月16日放送

160716-04

APOLLO 11 アームストロング一族

16世紀スコットランドに
ジョニー・アームストロングという領主がいた。
時の王より強力とまでいわれ、
イングランドとの戦いで国を守った英雄だった。

しかしその存在を疎ましく思った王は
彼を騙して呼び出し、捕えてしまう。
わずかな手勢のジョニーに対し、待ち伏せの兵士は1万人。
このときジョニーが切った啖呵が歌として伝承されている。

 王であり 君主の身分でありながら
 嘘をついたな 卑怯者
 生涯でおれが愛するのはただひとつ
 それは正直な心根だ

時は流れて1972年。
生きのびた末裔のひとりが、
この地の自由市民として迎えられた。

ニール・アームストロング。
アポロ11号の船長にして、はじめて月に立った人類。

そのときの式典では、
400年前に施行されたまま廃止されていない
こんな法律の条文が紹介された。

「この地で見つけたすべてのアームストロングを絞首刑にせよ」

それでも王の追手から逃れ、アメリカへ渡り、
ついには月までたどりついた。
この一族は、名前の通りタフらしい。

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福宿桃香 16年7月16日放送

160716-05

APOLLO 11 吉田和哉

 大切なのは、ワクワクすること。
 宇宙にワクワクするなら、その道に進もうと思ったんです。

アポロ11号が叶えた人類初の月面着陸は、
日本でも生中継され、多くの人たちが見守った。
当時8歳だった吉田和哉も、そのうちの一人だ。

アポロは彼の夢になった。
大学では工学部に進んだがその気持ちは変わらず、
「宇宙ロボット」というジャンルを開拓。
自分の手がけたロボットが宇宙へ行く日を目指して、情熱を注いだ。

そして今。
吉田はもう一度違う形で、
アポロ11号に出会おうとしている。
民間の月面探査チーム「HAKUTO(ハクト)」が来年、
吉田の制作したロボット探査機を月に飛ばし、
アポロ着陸の痕跡を探す予定なのだ。

47年の時を経て、憧れに間もなく、手が届く。

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田中真輝 16年7月10日放送

160710-01

義家の勇気

今日は、納豆の日。

納豆の起源には諸説あるが、有名なものに
源義家にまつわる物語がある。

義家が奥州平定のために北上した際、
馬の食料であった、ワラの俵に詰めた煮豆が
発酵し、糸を引くようになってしまった。

兵たちが捨てていた煮豆を、
まあ待て、と義家が食したところ、
十分食べられる食料であったため、
兵糧として採用した、というのが
そのストーリー。

糸を引く煮豆を
まず食した義家の勇気もさることながら、
それを食べさせられて戦った兵たちの心情は
いかばかりだっただろう。

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田中真輝 16年7月10日放送

160710-02

鉢叩き

今日は、納豆の日。

古来より、人々の暮らしの中にあった納豆。
多くの歌人もその存在を歌に詠み込んでいる。

松尾芭蕉もその一人。

「納豆きる 音しばしまて 鉢叩」

鉢叩きとは師走の夜に、手に持った鉢を
叩きながら物乞いをした念仏僧のこと。

寒い夜、暖かい納豆汁を作るために
とんとんと納豆を切っていると、
チーンチーンと鉢を叩く音が聞こえて来る。

しばし手を止めて、
寒風の中、托鉢する僧の姿に想いを馳せる。
そんな芭蕉の心の温かさが
納豆汁の香りとともに、ふんわりと漂うような
一句である。

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澁江俊一 16年7月10日放送

160710-03

落語家と納豆

今日は、納豆の日。

その人間性を含めて
多くの落語好きから愛された
昭和の名人、古今亭志ん生

関東大震災では
酒がこぼれては困ると居酒屋に飛び込んだり、
酔っぱらったまま高座に上がり
居眠りをしたこともあるほど
酒好きだった志ん生は
納豆もまた、こよなく愛していた。

若かりし頃、
落語界から追い出されて
仕事がなかった時に
納豆売りで生計を立てようとした志ん生。

ところが「納豆ぉ~納豆ぉ~」の声が
恥ずかしくてなかなか出せずに、
人のいないところばかり
売り歩いていてまったく売れなかった。
大量に売れ残った納豆を
家族とともに朝昼晩と食べていたという。

そんな苦い思い出があってもなお
好きと言える好物に出会えるなんて、
なんと幸せな人生だろう。

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澁江俊一 16年7月10日放送

160710-04

文豪と納豆

今日は、納豆の日。

「走れメロス」「斜陽」「人間失格」など
人間の寄る辺なさを
ユーモアのある
美しい文章でつづった文豪、太宰治。
彼の好物は、納豆だった。

ひきわり納豆に
醤油のかわりに筋子を入れて混ぜ
熱々のご飯にのせて食べていたという。
一見、不思議な組み合わせにも思えるが
その不思議さもどこか、太宰らしく
食べてみたくさせる魅力がある。

納豆と、筋子。
子供の頃から食べていたというその味は
太宰にとって故郷津軽を感じられる
懐かしい味だったのかもしれない。

その食べ方は「太宰丼」と呼ばれ
今も青森では多くの人に愛されている。

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田中真輝 16年7月10日放送

160710-05
Jun Seita
いつかは蟹味噌

今日、7月10日は納豆の日。

かの食通、北大路魯山人は、
その著書の中で、
「納豆は糸の姿がなくなってどろどろになるまで
よく攪拌する」と語っている。

ある実験では、
100回の攪拌で、アミノ酸が約1.5倍、
300回で2.5倍に。
また、甘み成分は100回で2.3倍、
400回で4.2倍と、攪拌するほど、
旨みと甘みが強くなる、という結果も
示されている。

ちなみに、1万回混ぜると、その姿は
ペースト状になり、味は蟹味噌に
近くなるという実験結果も。

時間に余裕のある方は、
チャレンジしてみてはいかがだろうか。

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澁江俊一 16年7月10日放送

160710-06
こうへい
サッカーと納豆

今日は、納豆の日。

華麗なプレーで観客を魅了し
ピクシーの愛称で多くのファンに愛された
サッカー選手、ドラガン・ストイコビッチ。

日本食をこよなく愛していた
彼のいちばんの好物は納豆だった。
故郷のセルビアには
発酵食品がなかったにもかかわらず
その愛し方はなみなみならぬものがあった。
オーストラリアキャンプでは
朝食に頼んでいた納豆がないと知るや
怒ってスタッフに日本食材の店まで
買いに行かせたほどだったという。

糸を引くように正確な
パスやシュートのパワーの源が
納豆だったと知ると
日本人ファンとしては
また彼を愛してしまう理由が増えそうだ。

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田中真輝 16年7月10日放送

160710-07
hepp
くさいはうまいか

今日は、納豆の日。

納豆は臭いから苦手
という人は多いが
臭さではさらに上をいく食品がある。

発酵食品分野の権威、
小泉武夫教授らが開発した
アラバスターという機器で測定すると、
納豆の臭気数値は452。

そして、世界一臭い食べ物とされている、
スウェーデンの塩漬けニシンの缶詰、
シュールストレミングの数値はなんと8070。

小泉はその著作の中で、
その匂いを「腐敗したタマネギに、
くさやの漬け汁を加え、それにブルーチーズとフナ鮓、
古くなったダイコンの糠漬け、さらには道端に落ちて靴に
踏まれたギンナンを混ぜ合わせたような
空前絶後の凄絶なにおい」
と表現している。

そしてその味については
「やや不味い部類」とのことである。

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