名雪祐平 16年5月28日放送

160528-04

賞を蹴る マーロン・ブランド

1973年、アカデミー主演男優賞は
受賞拒否された。

拒否したのは、
ゴッドファーザーの主演、
マーロン・ブランド。

授賞式にブランド本人は現れず。
代わりに壇上には、
アメリカ先住民の女性が立ち、
ブランドからのメッセージを読み上げた。

 ハリウッド映画が少数民族を
 差別的に描いていることに抗議し、
 受賞はお断りします。

 
会場は拍手とブーイング。

それから43年。
何が変わったろうか。

今年のアカデミー賞。
男女の主演、助演ノミネートは20人。
そのすべてを白人が独占。

黒人の映画監督スパイク・リーは
授賞式をボイコットし、こう表現した。

 アカデミー賞は、真っ白のまま。

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名雪祐平 16年5月28日放送

160528-02
Georges Biard
賞を蹴る ソフィー・マルソー

2016年、フランス最高勲章は
受賞拒否された。

拒否したのは、
世界的な名女優ソフィー・マルソー。

ナポレオン1世によって制定された
フランス最高勲章「レジオン・ドヌール」。

マルソーはTwitterに、こう書いた。

 昨年だけで154人を処刑した
 サウジアラビアの皇太子に
 この賞が与えられた。
 これが私が受賞拒否した理由。

女優のしなやかな脚が、
国家の権威を蹴り飛ばした。

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名雪祐平 16年5月28日放送

160528-03

賞を蹴る ジャン=ポール・サルトル

1964年、ノーベル文学賞は
受賞拒否された。

拒否したのは、
自由の哲学の父、サルトル。

理由は、

 いかなる人間でも
 生きながら神格化されるには
 値しない。

50年後、思わぬ資料が発見された。
受賞前に、サルトルからノーベル委員会宛に
あらかじめ辞退の書簡を送られていたのだ。

ところが、書簡の到着が遅れてしまい、
受賞拒否という決着に。

同じ年のノーベル文学賞には、日本から
谷崎潤一郎、
三島由紀夫、
川端康成、
詩人の西脇順三郎
の4人も候補に選ばれていた。

もし、サルトルの辞退の書簡が
遅れていなかったら……。

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名雪祐平 16年5月28日放送

160528-05
(arteliz)
賞を蹴る 蓮實重彦

2016年、三島由紀夫賞は
受賞拒否されなかった。

新人賞である三島賞を
受賞したのは、80歳の蓮實重彦。
元東京大学総長。
超ベテランの文学者である。

記者会見で蓮實は言い放った。

 はた迷惑なことだと思っています。

 80歳の人間にこのような事態が
 起こってしまったことは
 日本の文学にとって非常に嘆かわしい。

それでも受賞拒否はしない。

なぜ、賞の候補になった段階で断らなかったのか?
記者が質問すると。

 なぜかについては一切お答えしません。

なんだか、不機嫌な受賞。

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森由里佳 16年5月22日放送

160522-01
Tournachon
東京 東京會舘マロンシャンテリー

モンブラン。

そう聞いてイメージするのはきっと、
細くしぼられたマロンクリームが幾重にもかかった、
栗色のケーキではないだろうか。

94年の歴史を誇る東京會舘には、一味ちがうそれがある。
初代製菓長の勝目清鷹が、本場のモンブランをもとにアレンジした
「マロンシャンテリー」だ。

アルプスの頂にかがやく新雪のように
まっしろで上品な出で立ちに、
多くの人々が甘いため息をこぼしてきた。

そう。目に飛び込んでくるのはマロンクリームではなく、
美しく飾られたまっしろな生クリームなのだ。

モンブランはフランス語で、白い山。
まっしろな「マロンシャンテリー」は、
東京會舘にそびえる不動のレシピだ。

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森由里佳 16年5月22日放送

160522-02

東京 東京會舘メインバー

かのマッカーサー元帥も、
たまには昼から飲みたい!
と思うことがあったようだ。

戦後、GHQに接収された東京會舘で、
そんな将校たちのためにバーテンダーが気を利かせて作ったカクテルがある。

今なお東京會舘メインバーの名物として楽しめるそのカクテルは、
ジンフィズにミルクを加えた「會舘風ジンフィズ」。

ただのミルクにも見える白い飲み物は、
太陽の下でこっそりとお酒を楽しむのにちょうどよく、
異国で働く将校たちの緊張をやさしく癒したことだろう。

東京會舘メインバー。
日本のバーの歴史を語るに欠かせない場所は、
その名の通り、
日本の歴史においてもかなめ役であったのかもしれない。

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森由里佳 16年5月22日放送

160522-03

東京 東京會舘イル・ド・フランス

1964年、東京五輪の年。

東京を訪れる人々に本物のフレンチを広めようと考えたフランス政府は、
食材、壁紙、シャンデリアまで全て本場から輸入して、
わずか3か月だけの期間限定レストランをひらいた。

選ばれた場所は、東京會舘。

腕を振るったレイモン・オリヴェは
「料理の魔術師」とも評される名シェフで、
東京會舘のシェフたちとそのレシピに大きな影響を与えた。

オリヴェ直伝のレシピは東京會舘でそっと受け継がれ、
閉店から50年以上経った今もなお、美食家たちの舌を愉しませている。

レストランの名は「イル・ド・フランス」。
パリを中心としたフランス文化発展の地の名前と同じである。

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佐藤日登美 16年5月22日放送

160522-04
ひでわく
東京 四月物語

岩井俊二の映画、「四月物語」。

松たか子演じる卯月は、北海道から上京し、東京の大学に進学する。
慣れない東京で始まる初めての一人暮らし。
引っ越しのお兄さんの手伝いをしようとして
逆に邪魔になってしまう、というシーンは、
上京を経験した人なら誰もが共感するのではないだろうか。

どきどきしながら、大学に向かったり。
街を探検するように、自転車をこいだり。
何も知らない土地を、少しずつ自分の空間にしていく卯月。

岩井俊二の描く東京は、
淡くて、もどかしくて、やさしい。

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佐藤日登美 16年5月22日放送

160522-051

東京 ロスト・イン・トランスレーション

ソフィア・コッポラの映画、「ロスト・イン・トランスレーション」。

サントリーウィスキーのCM出演のために来日した
落ち目の俳優、ボブ・ハリスと、
カメラマンである夫の撮影についてきたシャーロット。
そんな二人は東京で出会い、日常から逃れるように見知らぬ街に繰り出す。

ある日、ボブは二人で食べたしゃぶしゃぶランチの感想をこう述べる。
「客に料理させるなんて、最低のレストランだ。」

言葉が通じないゆえに発生する勘違い、戸惑い、そして驚き。
だからこそ、二人の距離は縮まってゆく。

ソフィア・コッポラの描く東京は、
雑多で、切なくて、少し滑稽だ。

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佐藤日登美 16年5月22日放送

160522-06
nanik0re
東京 銘菓ひよ子

東京土産に人気の銘菓、ひよ子。
なめらかなフォルムと、つんと出たくちばしが可愛らしい。
大正元年、店主・石坂茂の夢にひよこが出てきたことがきっかけで誕生したお菓子だ。
丸や四角のお饅頭が主流のなか、当時としては革新的であった。

実は福岡で生まれたひよ子だが、
東海道新幹線の開通を機に東京にも進出することとなった。

 「お菓子は生きものであり、味は無限である」

石坂の言葉の通り、丸いお饅頭はひよこへと形を変え、
日本全国で愛されるお菓子となった。

東京から旅立つときには、ひよ子もおともに連れていくのはいかがでしょうか。

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