田中真輝 16年3月13日放送
sjrankin
祝電
今日、3月13日は
青函トンネル開通記念日。
「海峡」は、
この青函トンネル建設の物語を描いた映画である。
高倉健、吉永小百合ら、スターが総出演する中、
総号令、岸田源助を演じたのが名優、森繁久弥。
彼は、青函トンネルが開通したとき、
こんな祝電を送っている。
「世紀の青函に風が通る。誰がなんと言おうと
この大事業に万歳を送る。讃えるべし、
人間の小さき力をもって、この大事業を
なしえたことを。遥か東京の空から盃をあげる。乾杯!」
「無用の長物」と罵られることもあった
当時の社会情勢の中、
森繁の力強い言葉は、トンネルマンたちの心の中を
爽やかな風となって吹き抜けたに違いない。
田中真輝 16年3月13日放送
*nog
悲しみという魅力
今日、3月13日は
青函トンネル開通記念日。
そのトンネルが潜り抜ける津軽海峡を歌った
名曲、津軽海峡・冬景色。
歌詞を書いた阿久悠は
かつてこう語ったことがある。
あの歌のせいで、
青森は暗く悲しいところだと思い込まれ迷惑している、
と言われて、僕はこう答えた。
悲しいと感じられる情緒は、
これ以上の名産はないかもしれない、と。
日本が経済至上主義になり、
風土や風情がなくなりかけていた時代、
悲しみさえ魅惑になりうると思ったのである。
時を越えて、誰もがこの曲に心揺さぶられるのは、
失われゆくものへの哀切に、
日本人としての、いや人としての
魂が共鳴するからかもしれない。
澁江俊一 16年3月13日放送
sjrankin
世界一過酷な海峡
今日、3月13日は
青函トンネル開通記念日。
オーシャンズセブンをご存知だろうか?
世界オープンウォーター協会が定めた
世界7大海峡である。
ジブラルタル海峡、ノース海峡、
クック海峡、ドーバー海峡、
カタリナ海峡、モロカイ海峡、
そして日本の津軽海峡。
この7つの海峡すべてを
世界で初めて泳いで渡ったのが
アイルランド人、ステファン・レッドモンド。
2012年、4度目の挑戦で
最後に泳ぎ切った津軽海峡は、
どの海峡よりも流れが速く、
最も過酷だったという。
田中真輝 16年3月13日放送
Risto Kaijaluoto
無名の手
今日、3月13日は
青函トンネル開通記念日。
ここに一人の男がいる。
青森県、今別町(まち)生まれ。
23歳のとき、
漁師をやめて青函トンネルを掘る仕事に就いた。
結婚したばかりで、
来年の春には子供が生まれる予定だった。
トンネルの中は暑く湿っていて、
いつも海鳴りのように採掘の音が響いていた。
毎日男は穴を掘り続けた。
夜勤のあとに見る眩しい朝日が好きだった。
事故があった。友を失った。それでも掘り続けた。
やがて最後の発破が鳴り響く。トンネルに風が吹いた。
息子は、はたちになっていた。
そんな男の名前を、誰も知らない。
世界は、そんな無名の人間の、無数の手で作られてきた。
世界はそうして作られていく。これからも。
森由里佳 16年3月12日放送
kimuchi583
卒業① 北三陸と通学路
子どもたちの卒業を心から祝うのは、
家族と先生のほかに、どんな人がいるだろう。
2015年3月1日。
三陸鉄道の駅にあるちいさな看板には、
意外な人からの祝福が書かれていた。
高校卒業おめでとう。
さんてつの通学は朝が早くて大変だったでしょう。
それにもかかわらず元気にあいさつしてくれてありがとう。
君たちの笑顔が心の支えです。本当にありがとう。
北三陸のアイドルの君たちへ。
ふるさとは復興の途中です。
君たちのできる範囲で良いので、これからも応援よろしく願います。
それでは君たちの笑顔に感謝し、心から高校卒業おめでとう。
三陸鉄道 久慈駅
森由里佳 16年3月12日放送
卒業② 3月と通学路
北海道にある、JR石北本線の旧白滝駅は、
1日わずか4本の列車しか停まらない無人駅だ。
今月、駅としての役目を終えることになっている。
利用人数のすくなさから、
何度ももちあがっていた廃止の話。
これまで廃止にならずにいたのには、
地域住民の願いがあった。
「3月までは、どうかこの駅を廃止にしないでほしい。」
理由は、たったひとりの乗客だ。
毎朝ホームに姿を見せる、18歳の女の子。
彼女はこの春、列車で通いつづけた高校を卒業する。
佐藤日登美 16年3月12日放送
fukapon
卒業③ 3月9日
卒業ソングランキングで、5年連続1位をとった曲がある。
レミオロメンの『3月9日』だ。
卒業ソングの定番と思われているが、
実は、もともとは結婚式のために書かれた曲だ。
レミオロメンのボーカルである藤巻は言う。
「キミとボク、お互いがいてくれて良かった、
“ありがとう”という気持ちを歌にしたいと思った」
新たな世界の入口に立ち
気づいたことは1人じゃないってこと
瞳を閉じればあなたが
まぶたのうらにいることで
どれほど強くなれたでしょう
あなたにとって私もそうでありたい
結婚式でも、卒業式でも。
人生の節目に聴きたい歌だ。
佐藤日登美 16年3月12日放送
Sigalakos
卒業④ 自分の愛すること
スティーブ・ジョブズ。
言わずとしれた、Appleの創設者である。
天才と呼ばれるジョブズだが、
大学を中退し、興味が引かれた授業にだけもぐりこんでいた。
そんな彼が、スタンフォード大学でスピーチをした。
私が前進し続けられたのは、
自分がしていたことを、愛していたからだ。
すばらしい仕事をしたいのなら、
そして、本当に満足したいのであれば、
自分が愛することを見つけなさい。
まだ見つけていないのであれば、探し続けなさい。
立ち止まってはいけない。
見つかったときには、すぐにわかるはずだ。
ジョブズは愛するものを見つけ、
そして、世界を変えた。
卒業シーズンのいま、
自分が本当に愛することはなにか、考えてみたい。
蛭田瑞穂 16年3月12日放送
naosuke ii
卒業⑤ 旅立ちの日に
埼玉県秩父市立影森中学校の音楽教諭高橋浩美は
卒業する教え子のために歌を贈ろうと考えた。
1991年の冬のことだ。
作詞を校長の小嶋登に頼むと、
「わたしにはセンスがないから」と断られた。
しかし翌朝、高橋が学校に行くと、
机の上に歌詞が置いてあった。
高橋は歌詞を持って音楽室に行き、
ピアノに座ると、旋律が頭の中に湧いてきた。
15分後、曲は完成した。
作詞小嶋登、作曲高橋浩美による合唱曲、
「旅立ちの日に」は現在
全国の小中高校でもっとも歌われる
卒業の歌のひとつとなっている。
今年もまた、旅立つこどもたちの歌声が聴こえてくる。
大友美有紀 16年3月6日放送
「菊池寛への言葉」生涯
今日3月6日は、菊池寛の命日。
「父帰る」「真珠夫人」を著した人気作家であり、
文藝春秋を作り、芥川賞、直木賞を創設した菊池寛。
大映の初代社長でもある。
菊池寛は、世の中の人に
さまざまな小説や娯楽を紹介していった。
文学の価値を知り、
価値を作り出す書き手たちを
支え続けた。
こういう人を私はいまだに知らない。
井上ひさしは菊池寛を、
大正から昭和にかけての、
日本社会の偉大なプロデューサーだと言った。