石橋涼子 16年2月21日放送
お酒のはなし ゲーテとブレンターノ家
文豪であるとともに、酒豪であったゲーテ。
彼と親交が深かったブレンターノ男爵家の別荘は
ブドウ畑の中にあり、敷地には醸造所があり、
当然のように芸術家たちの集会所になっていた。
1814年9月、ゲーテはこの別荘に滞在し
詩作にふけっていた。
そのとき歌われた作品の一節に、こうある。
青春はワインがなくても酔えるもの
老年はよいワインで若さをとりもどす
この時、ゲーテは65歳。
若さをとりもどしてくれるよいワインとは、
もちろんブレンターノ家の白ワインのことだ。
いつしかブレンターノ家の白ワインは
ゲーテ・ワインと呼ばれて人気を集めるようになり、
今でもドイツの小さな村でつくり続けられている。
熊埜御堂由香 16年2月21日放送
ジョニヲ
お酒のはなし 川上弘美と居酒屋
芥川賞作家、川上弘美さん。
ベストセラーになった
「センセイの鞄」などお酒を飲む場面が
作品にたびたび登場する。
お酒について彼女が書いたエッセイにこんな書き出しがある。
今までで一番多く足を踏み入れた店は
本屋、次がスーパー、三番めは居酒屋だと思う。
そして、つぎの行ではそんな自分の人生を
なんだか彩りにかける人生である、と語る。
けれど、川上さんが描くお酒とひとは、
わかる、わかると切なくて、何度読んでも引き込まれる。
それはまるで、
居酒屋で居合わせた知らないひとと思いがけず
深い話をしてしまった時みたいに。
日常のひとこまが
ほんのり色づくそんな感覚を呼び覚ましてくれる。
熊埜御堂由香 16年2月21日放送
VisualAge
お酒のはなし 談志師匠
2011年に亡くなってなお根強いファンの多い、
落語家、立川談志。
立川流を立ち上げて、弟子たちをふりまわす日々。
飲みにいくと、こんな調子で、くだを巻いた。
「芸人なら真っ当に働くな、泥棒しろ!でも俺の家はダメだぞ」
その発言は愛とユーモアに満ちていて
みんな談志師匠が大好きだった。
談志がお酒について
こんな名言を残している。
酒が人間をダメにするんじゃない、
酒とは、人間はもともとダメだってことを教えてくれるものなんだ。
もし彼がいまも生きていたらきっと弟子たちは
こう返すだろう。
談志師匠、
ダメだっていいじゃない、
まぁ一杯飲みましょうよ。
東美歩 16年2月20日放送
1億5千万のマグロ
すしざんまい創業者 木村清は
年初めの競りで
マグロを高値で競り落とすことで有名だ。
なかでも2013年の初競りは強烈だった。
1億5540万円。
史上最も高い金額でマグロを競り落としたのだ。
争ったのは、中国人オーナーの寿司屋。
無尽蔵の資金力を誇る中国チェーンと、
築地に育てられた日本の寿司屋の、
意地をかけた戦いだった。
身を引いたのは、相手だ。
1億5千万円を超えてなお、
勢いをゆるめぬ木村に、潔く負けを認めた。
「日本の寿司文化は、俺が守る。」
年の初めの築地。
木村は3億円を用意して競りに臨んでいたという。
東美歩 16年2月20日放送
消えた海賊
ソマリアの海は世界でもっとも危険とされる。
海賊がひしめき、襲われる船があとをたたない。
その海に、一人の寿司屋が乗り込んだ。
すしざんまい創業者
木村清だ。
「海賊の話を聞いてみたい」
通訳をつれて、
アフリカの海へと出向いていった。
そこにいたのは、
内戦で仕事を失い、
家族を養うために、
仕方なく海賊となった男達だった。
「俺が、仕事をつくるから」
漁業用の船をもちこみ
海賊に、マグロ業をたたきこんだ。
そして自ら仕入れ先となり、
安定した収入を確保した。
2015年、ソマリアの海から海賊が消えた。
東美歩 16年2月20日放送
kouji hamu
夢は破れるもの
戦闘機のパイロットになりたかった。
中学を出て自衛隊に入隊したが、
目に大けがを追い、夢は断たれた。
それからは
弁護士を目指した。
独学で中央大学法学部に合格。
しかし司法試験には受からなかった。
そして
会社経営をはじめた。
商売は順調に大きくなっていった。
しかしバブルとともに、すべてを失った。
夢は、かなわないことの方が多かった。
木村清。
その後手元に残ったわずかな金で、
寿司屋をはじめた男は、
一代で全国に名を馳せる寿司チェーンを築くことになる。
やってみること。
それが木村の、人生のルールなのだ。
東美歩 16年2月20日放送
m-louis
天才
すしチェーン経営者、木村清。
彼は電話帳や住所録を利用したことがない。
何百という相手の番号と住所を、
すべて頭のなかに記憶しているという。
語学も、学んだ経験は無い。
しかし現地に3日もいれば、
どんな言葉も話せるようになる。
貧しい家庭で育った木村は、
8歳から新聞配達にいそしむ苦学生だった。
限られた時間で学習せざるをえない環境が、
木村のなかに驚異的な記憶力と判断力を育ませた。
経営者となった今、
好んで読むのは量子や素粒子など、
物理学の本だ。
「原理を理解すれば、簡単なんです。」
そうやって独学で身につけた知識から、
経理部が1ヶ月かけてつくった決算書も
5分で読み切ってしまう。
築地に寿司屋を開いたのは
とんでもない天才かもしれない。
東美歩 16年2月20日放送
築地の復活
東京、築地市場。
世界から観光客の集まるこの場所は、
ほんの十数年前まで、
暗いシャッター商店街のような市場だった。
昼にはほとんどの店が暖簾をしまい、
人々は行くあてなく、踵をかえした。
そこに店を立ち上げたのが、木村である。
24時間営業の寿司屋。
斬新な経営で、
昼は観光客、夜はサラリーマン、
そのあとは深夜便で羽田に到着した外国人が
築地に足を運ぶようになった。
150万人に落ち込んでいた観光客は
木村が店を出したその年から盛り返しはじめる。
そして現在600万人に至るという。
蛭田瑞穂 16年2月14日放送
バレンタインデー① Unforgettable
昨年の12月31日、
歌手ナタリー・コールの訃報が世界を駆け巡った。
ジャズ・ピアニスト、ナット・キング・コールの
娘として生まれたナタリー・コール。
1991年に彼女は亡き父の代表曲、
「アンフォゲッタブル」の音源と自分の歌声をオーバーダビングさせ、
時を超えた親子のデュエットを実現させた。
ふたりは歌う。
忘れられない どんな時も
あなたは永遠に私の中で生き続ける
忘れられない人のいることが
こんなに素晴らしいことならば
私もあなたの忘れられない人になりたい
今日は愛を伝える日。
蛭田瑞穂 16年2月14日放送
Wilhelmine
バレンタインデー② Endless Love
2013年のバレンタインデーにビルボード誌が発表した、
「名前に“LOVE”がつくラブソング オールタイムベスト50」。
1位に輝いたのが1981年にリリースされた
ライオネル・リッチーとダイアナ・ロスの
デュエット曲「エンドレス・ラブ」。
愛しい君
君は僕のたったひとつの真実
ライオネル・リッチーが歌いかけると、
ダイアナ・ロスが応える。
私が初めて愛した人
私の呼吸のひとつひとつ
歩く一歩一歩があなたそのもの
そしてふたりは声を重ねる。
あなたの瞳が
愛の深さを教えてくれる
あなたは私の永遠の愛
今日は愛を伝える日。