蛭田瑞穂 16年2月14日放送
バレンタインデー③ Way Back Into Love
ドリュー・バリモアとヒュー・グラントの主演映画
『ラブソングができるまで』。
劇中、ふたりがラブソングを共同制作する場面がある。
「歌詞は思い浮かんだことを書けばいいのさ。たかが歌詞なんだから」
そう言うヒュー・グラントに、ドリュー・バリモアが反論する。
「たかが歌詞ですって? あなたは何もわかってないわ。
メロディが初めて会った人の外見の魅力とすれば
歌詞はその人を知ることで見えてくる内面の物語。
ふたつが合わさることで魔法が生まれるのよ」
人は誰もメロディと歌詞を持っている。
恋をすると、その人の歌が聞こえてくる。
今日は愛を伝える日。
森由里佳 16年2月14日放送
バレンタインデー④ 愛を歌う人
ナット・キング・コール。
たとえその名を知らずとも、
彼の遺したヒット曲、
L-O-V-Eを知らない人はいないだろう。
彼は、世界中にこの歌がとどくことを願って、
英語の他に、5か国語もの訳を歌いこなした。
そして、その幸運な5つの言葉の中には、
うれしいことに、日本語も含まれている。
“L”と書いたらLook at me
“O”とつづけてO.K.
“V”はやさしい文字Very good
“E”と結べば愛の字L・O・V・E
この歌に背中を押された恋は、世界でいくつあるのだろう。
今日は愛を伝える日。
森由里佳 16年2月14日放送
バレンタインデー⑤愛を描く人
たった3本の映画を撮って、
引退してしまった映画監督がいた。
リチャード・カーティス。
「ノッティングヒルの恋人」や、
「ブリジットジョーンズの日記」の脚本家としても活躍し、
ラブコメディの帝王という異名を持つ。
初監督作品が「ラブ・アクチュアリー」と聞けば、
彼の映画監督としての手腕は想像にかたくないだろう。
そんな彼が引退を決めた理由は、実に彼らしいものだった。
監督という仕事は、一つの場所にじっとしてはいられない。
結果、長い間、家族と離れなくてはならなかった。
そんな時間の使い方は、もうしたくない。
大切な時間を、愛すべき家族や友人と満足のいくまで過ごしたいんだ。
愛を描ける人は、愛をたいせつにできる人。
今日は、愛を伝える日。
森由里佳 16年2月14日放送
バレンタインデー⑥ 愛を書く人
「愛している。」
なんて、あまい言葉は舌に合わない。
明治の日本に、そんな男がいた。
彼が妻と結婚して、4年ほど経ったころ。
男は、英語教育の研究のため、国から留学を命じられる。
行き先はイギリス。
遠く離れた異国の地での2年間、
さすがの日本男児も、妻にあてた手紙には本音をつづった。
おれの様な不人情なものでも、頻り(しきり)にお前が恋しい。
これだけは奇特と云って褒めてもらわなければならぬ。
愛という言葉を使わずに愛を伝えたその男の名前は、夏目漱石。
今日は、愛を伝える日。
佐藤日登美 16年2月14日放送
バレンタインデー⑦ Choosing Life and Finding Meaning
Facebook初の女性役員であるシェリル・サンドバーグ。
仕事も家事もこなす彼女は、著書「Lean In」のなかで
「結婚するなら、人生の真のパートナーとなるような相手を選びなさい」と話す。
シェリルの最大の理解者であった夫、デイブ・ゴールバーグは、しかし、
2015年に不慮の事故で亡くなった。
悲しみに暮れるなか、彼女はFacebookに綴った。
デイブ、いまのわたしにはこの世にあなたがいない、
という選択肢しか残されていない。
それでも、あなたを追悼し、子どもたちを立派に育てあげるためにも、
いまを最高のものにしてやる、と約束するわ。
彼女の悲しみに終わりはなく、そして、その愛にも終わりはない。
今日は愛を伝える日。
佐藤日登美 16年2月14日放送
バレンタインデー⑧ キスチョコ
世界的なチョコレート・メーカー、ハーシー社を設立した
ミルトン・ハーシー。
彼が、あの有名なキスチョコを生み出したのは、
今から100年以上前のことだ。
チョコレートが機械から押し出されるときに発せられる
「チュッ」という音から、
その名がつけられたと言われている。
ミスターグッドバイ、ハーシーズシロップ、クラッケルバーなど、
さまざまな商品を世に送り出したハーシー。
なかでもひときわキスチョコが人気を誇っているのは、
その可愛らしい見た目と、ちょっぴり刺激的な名前のせいだろうか。
その小さなチョコレートは、思いを乗せて、今日も届けられる。
今日は愛を伝える日。
中村直史 16年2月13日放送
stevendepolo
明日、2月14日。 宇野千代
明日、2月14日。
バレンタインデー。
私は、あの人に、告白するだろうか。
しないだろうか。
そんな思いをかかえ、
もんもんとした夜を送っている
女性はいますか?
いますよね、きっと。
そんなあなたに伝言です。
98年間の人生を
全力で思い切り生き抜いた
小説家、宇野千代さんからの、こんな一言。
恋をしなさい。好きと言えないなんて、ケチな根性よ。
三島邦彦 16年2月13日放送
明日、2月14日。 谷川俊太郎
明日、2月14日。
バレンタインデー。
告白をすると決めたけれど、
失恋して傷つくのが怖いというあなたへ。
詩人の谷川俊太郎さんは、
たくさん恋をして、
たくさん恋にまつわる詩を書き、
3回も結婚した、恋の達人。
そんな谷川さんに、失恋の痛手は、どうやったら癒せるだろう?
と聞くと、こんな答えが返ってきました。
失恋は恋人を失うことであっても、自分自身の恋する気持ちを
失うことではない。恋人が離れていっても、恋は終わらない。
恋は遠くにあって手に入らないものを求める気持ちなのだから、
もともと孤独なものなのです。
明日、あなたの告白がうまくいきますように。
そして、もし失恋して、さみしくなったら、
谷川さんの言葉を思い出してみてください。
三島邦彦 16年2月13日放送
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明日、2月14日。 深沢七郎
明日、2月14日。
バレンタインデー。
明日が楽しみでしょうがないという人もいれば、
明日なんて来なければいいのにという人もいるでしょう。
作家の深沢七郎は、
「人間滅亡的人生案内」という人生相談の中で、
恋に苦しむ相談者にこんなアドバイスをしています。
生きてることは悲しいことだと思う必要はありません。
生きてることは楽しいことだと思う必要もありません。
ただ、ぼーっと生まれて来たのだから、
ぼーっと生きればいいのです。
バレンタインデーを、
楽しむ人も、悲しむ人も、
深沢七郎のように、気軽に明日を迎えましょう。
三島邦彦 16年2月13日放送
Steve took it
明日、2月14日。 橋本治
「桃尻語訳 枕草子」で知られる作家、橋本治は、
1985年の冬、
「恋愛論」というタイトルで講演をした。
恋愛論というタイトルながら、
論を語ることはなく、
初恋は同級生の男の子という話から始まり、
自らの過去を吐露し続けた。
脱線に次ぐ脱線の中で、
小学生の頃に母親がいかに
自分を心配してくれていたかを話していた時、
突然話を止めてこう言った。
ちょっと泣きます。
そしてしばらく泣いたあと、再び話をはじめる。
なぜ泣いていたのかは話さずに。
そのとても個人的な涙は、聴衆を驚かせ、
この講演を長く語り継がれるものにした。
橋本は言う。
愛は一般論で語れるが、恋愛は一般論では語れない。
それは、恋愛というものが非常に個人的なことだから。
明日は2月14日。バレンタインデー。
あなたはあなたの、あなただけの恋愛を味わってください。