石橋涼子 16年1月24日放送

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storebukkebruse
北欧のはなし ニルス・トーソンと女性たち

北欧デザインを代表する陶磁器ブランド、
ロイヤル・コペンハーゲン。
多くの人が思い浮かべるのは、
白をベースにブルーの模様ではないだろうか。

そんなロイヤル・コペンハーゲンに
1960年代に人気を博した
「テネラ」という名前のデザインシリーズがある。

テネラの特長は、カラフルで大胆な絵柄。
ファンタジーに出てきそうな色彩豊かな鳥や、
細かな描きこみで螺鈿細工のような草花。
従来のブランドイメージとは異なり
多彩な絵柄を楽しむデザインシリーズを生み出したのは、
アートディレクターのニルス・トーソンだ。

彼は14歳で入社し、職人見習いとして働きながら、
同時に王立芸術学院でデザインを学んだ苦労人だ。
そんな経歴を持つニルス・トーソンだからか、
新ブランド「テネラ」のデザイナーとして抜擢したのは
学校を卒業したばかりの若い女性6人だった。

彼女たちにのびのびとした表現の場を与え、
自由な感性を発揮させた結果、
今でもコレクターを魅了してやまない
まったく新しいデザインシリーズが誕生した。

テネラという名前には、
繊細でやさしく未完成な若々しさという意味がある。

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小野麻利江 16年1月24日放送

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Thermos 
北欧のはなし アルヴァ・アアルト

フィンランドの国民的建築家、アルヴァ・アアルト。
彼が設計した建築物や家具はいずれも、
フィンランドの自然の風景から
インスピレーションを得ていた。

たとえば、代表作の一つである、
ヘルシンキの「フィンランディアホール」。
トーロ湾を望むその白い大理石のホールは
フィンランドの海や湖に立つ波をイメージした、
ゆるやかなカーブを持つ窓が印象的。

自然の世界をたたえることで、
さらに人間味のある社会を創造することができる。
そんな信念を持っていたアアルト。

こんな言葉も、彼は残している。

 形には中身が伴っていなければいけないし、
 中身は自然に繋がっていなければいけない。

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薄景子 16年1月24日放送

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Olof S
北欧のはなし 皆川明

北欧の物語を感じさせる
テキスタイルファッションブランド、
「ミナ ペルホネン」。

そのデザイナー、皆川明は、
初めてスウェーデンを訪れた時、
ショーウインドーのシャツに強くひかれて
一軒の店に立ち寄ったという。

絵画のように美しい色に染められた、麻や綿のシャツ。
店の向こうのアトリエで、ミシンをかける女性。
目の前で確かに作っているシャツが、
やがてウインドーに飾られる、その一着の大切さ。

そんな鮮やかな感動を、
自分の店の中にカタチにしたいと強く思った。

都会の中に緑と空を感じる、初の直営店には、
皆川が旅の中で見つけた物語のあるモノが置かれ、
旅で出会った感情が布の中に刻まれる。

彼は言う。

 これからも少しずつ、
 旅のカケラを置いていこうと思っている。

その思いはきっと、ミナの服を着る人々の心を
遠くのどこかへ、連れていってくれる。

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小野麻利江 16年1月24日放送

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北欧のはなし オーディンの箴言

「オーディンの箴言(しんげん)」というものをご存知だろうか。
それは、中世の北欧の海を制していた
ヴァイキングが残したとされる名言たち。

164連からなるこれらの詩の内容は、
荒くれ者のヴァイキングらしく、酒にまつわるものが少なくない。

たとえば、

 人の子にとって、ビールは、そう言われるほど良いものではない。
 たくさん飲めば、それだけ性根を失うものだから。

と、ビールの飲みすぎをたしなめたり。

 酒杯を手に持ったきりにするな。酒はほどほどに飲め。
 必要なことだけ喋るか、そうでなかったら、口をつぐんでおけ。

と、酒気帯び状態でのおしゃべりに、注意を促したり。

 宴会場を飛び回るのは、忘却の青鷺といって、
 人の心の分別を盗むものだ。

と、酒の席で色々な人と話す危険性を諭したり。

新年会も、そろそろ打ち止め。
これらオーディンの箴言が身にしみている方も、
きっと多いことだろう。

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茂木彩海 16年1月24日放送

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designmilk 
北欧のはなし マリメッコのウニッコ柄

フィンランドで誕生した誰もが知るファブリックブランド、マリメッコ。
ブランドを象徴する柄に、ウニッコ柄がある。

この斬新な花柄を提案したのは、デザイナー、マイヤ・イソラ。

1964年、“花は生地になるよりもありのままのほうが美しいから”、
という理由で、今後花柄はプリントしないと公表していたマリメッコ。

マイヤはその方針への反発の意味を込めて
真っ赤で情熱的なこの花柄を描き、結果的には
見事コレクション入りを果たしてしまう。

彼女の哲学は、「徹底して失敗する自由」。

失敗を恐れず、自分が信じるものをつくる。

その意思が、温かみの中にも強さを感じるデザインに滲み出て、
今日も世界のどこかで誰かが、華やかなウニッコ柄に元気をもらう。

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茂木彩海 16年1月24日放送

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Noske, J.D. / Anefo
北欧のはなし スウェーデンの歌姫

インテリアでは有名な北欧だが、
国際的に活躍する歌手や女優を数多く生み出している
ことは、あまり知られていない。

1939年、15歳でデビューし、
昨年亡くなった歌手、アリス・バブスもそのうちの一人。

耳が良く、感受性が豊かで、どんな曲でも歌い上げてしまう。
即興が得意で、チューニングも必要なければ不得意なジャンルも無い、
まさに完璧な歌姫だった。
ステージに立てばとんでもないカリスマ性を見せる彼女だが、
普段の生活はいたって普通。

 スポットライトの当たる場所にいるからって
 他人より優れているわけじゃないわ。

彼女の口癖からは、謙虚でありながら
歌いたいものを自分らしく歌うことへの自信が感じられる。

その自信こそが、
いまなお北欧に暮らす人々を魅了し続ける歌声の理由なのだろう。

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三島邦彦 16年1月23日放送

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Anna & Michal
土の話 アンリ・ジャイエ

「植物の中で、唯一ブドウだけが
 大地がもつ本当の価値を私たちに伝えてくれる。」

20世紀前半、フランスの小説家コレットはワインへの愛をこう語ったという。

コレットの言う通り、
ワインの原料になるブドウは、
それぞれの土地のあり方を繊細に反映する。
土に含まれるミネラルはもちろん、
水はけのよさ、標高、日照時間、
同じブドウ畑でも、
数十メートル離れただけで味は違ったものになる。

フランスワインの聖地ブルゴーニュ地方で
50年に渡り上質なワインを造り続けた伝説のワイン醸造家、
アンリ・ジャイエは自らの仕事をこう語る。

 私たちの仕事とは、
 自然の恵みを最高の形で引き出すことなんだ。
 素晴らしい豊かさが
 わずかばかりの土地に凝縮されているという事実を前にして、
 ブドウを育てる者はいつも、謙虚にして善良、
 かつ控えめでないといけない。

世界各地の醸造家による、
それぞれの土地のワインを通じて、
私たちは、この星の大地の豊かさを味わうことができる。

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三島邦彦 16年1月23日放送

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とみたや
土の話 光嶋祐介

乾いては塗り、乾いては塗り、
時間をかけて土を重ねる左官職人の手仕事。

完成までに時間がかかる土壁は、
建築のスピード化の中で
急速にその数を減らしている。

そんな中、
建築家の光嶋祐介さんは、
土壁の魅力をこう語る。

 部屋の空気を呼吸しながら、完成してもなお乾燥して
 新しい表情を見せてくれるのです。人間が歳を重ねると、
 しわが増えることで熟成された顔になっていくように、
 土壁もまた時間に耐えて味わいを増す立派な素材です。

よいものには時間がかかる。
シンプルで大切なことを、土の壁は教えてくれる。

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中村直史 16年1月23日放送

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土の話 四狭間かなた

「一カ所焼き」と呼ばれる焼き物がある。

提唱するのは、
栃木県佐野市の陶芸家、
四狭間かなた(しさま かなた)。

なぜ「一カ所焼き」なのか。

材料を、とくに陶芸に適したわけでもない、
自分の住む土地の一カ所だけで調達する。

土も、石も、薪も、
近所の名もなき山や川で見つける。
釜も煙突もそのへんの土でつくった。

四狭間さんは言う。

 自分の足で歩きながら、目の前にあらわれる
 さまざまな自然の素材を、
 感謝しつつ手を使って工夫し、焼いて、遊び倒すんです。

「つくる」という行為は、原始的なほど、
おもしろいのかもしれない。

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三國菜恵 16年1月23日放送

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Yuya Tamai
土のはなし 古田織部

岐阜県で有名な焼き物「織部焼」の始祖、古田織部。
彼の師匠はかの有名な千利休。
卓越した美意識で多くの戦国武将を魅了した利休は、
弟子にも凛とした言葉を浴びせた。

 人と違うことをせよ

その言葉のとおり、古田織部は師匠と同じ道を歩むことなく、
まったくちがう茶器を茶の湯に取り込んだ。
どこか武骨で、ゆがんだ、土そのものをごろりと取り出したかのような茶器。
独特の感性は、「織部好み」と称され、人々に驚きを与えた。

徳川家康は織部の茶器を見て、
畏怖の表情を浮かべながらこう言ったという。
「この茶碗を見ていると天下統一はまだ早いと言われている気がする」

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