伊藤健一郎 15年11月21日放送
それぞれの反戦旗 アルベルト・アインシュタイン
物理学の父、アルベルト・アインシュタイン。
相対性理論を導き出した彼は、
1930年、戦争を終結させるために、
こんな理論を導き出した。
兵役を指名された人の
2%が戦争拒否を声明すれば、
政府は無力となります。
なぜなら、どの国も、
その2%を越える人を収容する
刑務所のスペースがないからです。
戦争を撲滅する理論が生まれて
85年が経つというのに、
世界では紛争が後を絶たない。
伊藤健一郎 15年11月21日放送
それぞれの反戦旗 イマヌエル・カント
あらゆる事物は価値を持っているが、人間は尊厳を有している。
人間は、決して目的のための手段にされてはならない。
ドイツの政治哲学者、イマヌエル・カント。
彼は、その著書『永遠平和のために』の中で、
戦争を防止するための手段として、常備軍の全廃を説いた。
常備軍は時を追って全廃されるべきである。
なぜなら、常備軍は常に武器をとって立ち得る用意ができているから。
他国をして常に戰争の危惧を感ぜしめ、
このようにしてお互いに他を刺激して
無際限に兵備の優秀を競うようにさせるのである。
カントは続ける。
人を殺すため、或いは人に殺されるために雇われるというようなことは、
人間を単なる機械や道具として
他のものの手において使用することを含意すると思われる。
これは、我々自身の人格における人間性の權利に合致し得ない。
戦後70年の今、平和について真剣に考えてみてはどうでしょう。
伊藤健一郎 15年11月21日放送
それぞれの反戦旗 川久保玲
ファッションブランド「コムデギャルソン」の創始者、川久保玲。
反骨のデザイナーとして知られる彼女は、
戦後70年を迎える2015年、「反戦」をテーマに掲げた。
ひとは武器を持って強くなるわけではなく、
皆が自由であることが強い。
川久保の哲学を汲み、ブランド広告には、
「自由を着る」という言葉が力強く記された。
強い服を着ることによっても、人は自由になれる。
強い服を着たい時は、自分が強くなりたい時です。
自分を解き放つ、人と違う意見が持てる。それが自由だと思う。
川久保には、こんな持論がある。
日本は資源が少ないから、頭と知恵で国力を上げることに徹した方がいい。
文化や科学など各分野で他国よりも強くなれば、それが抑止力になるでしょう。
それこそが新しい反戦ではないかと。
伊藤健一郎 15年11月21日放送
それぞれの反戦旗 マハトマ・ガンジー
明日死ぬかのように生きよ。
永遠に生きるかのように学べ。
インド独立の父、マハトマ・ガンジー。
政治指導者だった彼は「非暴力、不服従」を唱えた。
ガンジーは、
イギリスの支配に疲弊する民に、
こう呼びかけた。
束縛があるからこそ、
私は飛べるのだ。
悲しみがあるからこそ、
私は高く舞い上がれるのだ。
逆境があるからこそ、
私は走れるのだ。
涙があるからこそ、
私は前に進めるのだ。
「非暴力、不服従」ガンジーの思想は、
インドをイギリスから独立させただけでなく、
イギリス帝国をイギリス連邦へと転換させ、
世界各地の植民地開放運動、人権運動に大きな影響を与えた。
伊藤健一郎 15年11月21日放送
philippryke
それぞれの反戦旗 手塚治虫
私にはただひとつ、これだけは断じて殺されても翻せない主義がある。
それは戦争はごめんだ、ということだ。
漫画家の手塚治虫は、反戦主義者だった。
そして、彼の漫画は、こんな哲学のもと創作された。
反戦だの平和だのの政治的なお題目では、
子供はついてこない。
率先して生命の尊厳から教えていく姿勢が大事。
手塚が自らの日記と呼んだシリーズ『火の鳥』。
その未来編は、こんな言葉で締めくくられる。
今度の人類こそ
きっとどこかで間違いに気がついて……
生命を正しく使ってくれるようになるだろう
澁江俊一 15年11月15日放送
anken0820
龍馬の右手
旧暦の今日11月15日が
誕生日であり、命日とされている坂本龍馬。
ふるさとの高知、桂浜には、
太平洋を見つめる龍馬の銅像が建っている。
建てられたのは昭和3年。
日本人の龍馬イメージを確立した
司馬遼太郎「竜馬がゆく」よりはるか前のことだ。
その銅像、龍馬の右手は懐に入れられている。
その手が握るのはピストルとも、
万国公法という国際法の本とも言われている。
寺田屋で襲われた時の傷を隠している、という説もある。
何気ないポーズにも
さまざまな想像が膨らんでしまうのが
龍馬という男の魅力なのだ。
澁江俊一 15年11月15日放送
龍馬か竜馬か
旧暦の今日11月15日が
誕生日であり、命日とされている坂本龍馬。
龍馬の「りょう」という漢字は
画数の多い龍(りゅう)と、
画数の少ない新字体の竜(りゅう)が混同されている。
竜馬自身が使っていたのは画数の多い方。
画数の少ない方が広まったのは、
司馬遼太郎の「竜馬がゆく」がきっかけ。
小説の中では僕のリョウマを動かすのだから、事実とは違う文字にした。
司馬のこだわりが、一文字の違いに込められている。
そんな架空の竜馬が、日本人の龍馬好きを増やしたのだ。
龍馬本人に聞いたら、
「どっちでもええぜよ」と笑うかもしれない。
澁江俊一 15年11月15日放送
龍馬は裏方
旧暦の今日11月15日が
誕生日であり、命日とされている坂本龍馬。
好きな歴史上の人物で
必ず上位にランクインする幕末のヒーロー。
だが彼は決して時代の表舞台に
立とうと思っていたわけではない。
むしろ目立たないよう、
日本を変えるという大仕事の裏方に徹していた。
薩長同盟も、大政奉還も
龍馬が前面に立つのではなく
主役である人々を説得して、
日本の未来のために心を変えさせる。
それが彼のやりかただった。
政治家になる気がなかった龍馬は、
きっと誰よりも自由でありたかったのだ。
新しいものが好きで
日本ではまだ珍しいブーツを履きこなしていた龍馬。
もし暗殺されることなく
夢だったアメリカに渡っていたら
龍馬は、当時生まれたばかりの自由の象徴ジーンズを
最初に履いた日本人になっていただろう。
奥村広乃 15年11月15日放送
龍馬の恋
「この話はまずまず人に言えないですよ。少し訳がある。」
内緒話をうちあけるかのように始まったこの手紙は、
坂本龍馬が姉の乙女に送ったものだ。
そこには千葉定吉道場の娘・佐那のことが綴られていた。
剣術がうまいこと。
薙刀もかなりの腕であること。
美人であること。
琴や絵をたしなみ、気立てがとてもよいこと。
惚気である。
そして自分が惚れた女性を
姉にも気に入ってもらいたいことがひしひしと伝わって来る。
熱い思いで幕末の日本を動かした、坂本龍馬。
彼は恋する心も、人よりいっそう熱かった。
礒部建多 15年11月15日放送
酔いどれ
龍馬伝 愛酒詩
酒は呑むべし酒飮むべし。
人生只だ酒有りて膽(きも)を開く。
旧暦の今日11月15日が
誕生日であり、命日とされている
坂本龍馬が残した漢詩「愛酒詩」。
龍馬の酒への愛が伝わる詩である。
高杉晋作や、西郷隆盛、勝海舟と、
日本の未来を語りながら
うまい酒を酌み交わしていたのだろう。
そのしめくくりは、
このように詠われている。
英雄の生涯は夢のようなもの。
とにかく酒を呑んで、美女に酔おうじゃないか。
英雄たちに愛された龍馬。
女たちにもきっと、
愛されていたに違いない。