坂本弥光 15年10月11日放送
lwpkommunikacio
スティーブン・ホーキング 車いすの物理学者
「アイスバケツチャレンジ」で広く知られることとなった、
筋萎縮性側索硬化症、別名ALS。
全身の筋力が徐々に弱まり、余命5年と言われる病気だ。
しかし、発症から50年以上たった今でも、
「車いすの物理学者」として世界を牽引する男がいる。
スティーブン・ホーキング。
脳はコンピューターのようなもの。
部品が壊れれば、動作しなくなる。
壊れたコンピューターには天国も来世もない。
天国は、暗闇を恐れる人間のための架空の世界だよ。
死と隣り合わせの人生を歩んできた、彼らしい言葉だ。
坂本弥光 15年10月11日放送
NASA’s Marshall Space Flight Center
スティーブン・ホーキング 宇宙と人
世界的に、宇宙論ブームを巻き起こした本がある。
「ホーキング、宇宙を語る」
著者は、アインシュタイン以後、
最も影響力のある理論物理学者 スティーブン・ホーキング。
彼は最先端の研究のかたわら、
宇宙論を一般向けにわかりやすく紐解いた本を執筆し続けている。
その理由は、彼の名言に隠されている。
私たちはどこにでもある恒星の、
マイナーな惑星に住む、
血統の良い猿にすぎない。
しかし私たちは宇宙というものを理解できる。
そのために、ちょっとは特別な存在なのだ。
坂本弥光 15年10月11日放送
lwpkommunikacio
スティーブン・ホーキング ゴードン・ムーア
天才物理学者スティーブン・ホーキング。
彼の右腕とも言うべき、ひとりの男がいる。
ゴードン・ムーア。インテルの創始者だ。
ムーアは、1997年から最新のカスタマイズPCをホーキングに提供。
車いすマウント型ポータブル通信システムにはじまり、
メール作成・ブラウジング・執筆・合成音声での会話などを可能にする
システムを開発・提供している。
しかし、ホーキングの持病ALSは、日々進行する病だ。
親指でのリモコン操作から、
頬の筋肉の緊張を検知する「頬スイッチ」へ。
その操作すら難しくなってしまった後は、
単語予測のアルゴリズムを組み込んだインタフェースへ再設計。
進行する病状に合わせて常に改良し、
世界最先端の研究をサポートし続けているのだ。
坂本弥光 15年10月11日放送
スティーブン・ホーキング 人工知能
人工知能は、もう未来のものではない。
留守中に部屋を掃除する、ロボット掃除機。
テレビ番組のMCにもなった、アンドロイドロボット。
メッセージアプリでは、自動会話でやりとりができるようになった。
しかし、理論物理学者 スティーブン・ホーキングは、
この人類史上最大の進歩に警鐘を鳴らしている。
完全な人工知能を開発できたら、
それは人類の終焉を意味するかもしれない。
ゆっくりとしか進化できない人間に勝ち目はない。
病と闘いながらも、宇宙界を牽引するホーキングの言葉に、
世界はいま大きく揺れている。
廣瀬大 15年10月11日放送
Esthr
ウディ・アレンに関するいくつかのこと。
ある撮影が長引くと、彼は自分の腕時計を見ながら、
「さあ、さっさと撮影を終わらせよう。
もうすぐニューヨーク・ジャイアンツのナイターが始まってしまう」
と言ったという。
80歳近くになっても
年に一本のペースで新作を公開し続けている
映画監督のウディ・アレン。
彼の撮影は非常に速い。
また演出はほとんど指示を出さず、役者に任せることで有名だ。
「撮影が速いのは、同じことを何度もやると飽きるから。
僕にそんな辛抱強さはない」彼は飄々と語る。
「演出に関しては、演技力がある素晴らしい役者たちを
キャスティングしているんだ。
僕の仕事は彼らの邪魔をしないこと。任せるんだ」と彼は言う。
この独自の撮影と演出により、
これまで彼の映画からは多くのオスカー俳優が誕生している。
ウディ・アレン作品の出演料は、
ベテランであろうと、新人であろうと
全米映画俳優組合が決めた最低料金しか支払われないという。
それでも、彼の映画に出演したがる俳優は後を絶たない。
廣瀬大 15年10月11日放送
Chris Boland
ウディ・アレンに関するいくつかのこと。
映画監督ウディ・アレンの作品の多くは
彼が長年暮らすニューヨークが舞台だ。
そして、その映画にはよく心地よいジャズが流れている。
彼は映画監督でありながら
ニューオリンズ・ジャズ・バンドの
クラリネット奏者という顔も持つ。
ジャズバンドを率いて、
ヨーロッパツアーも行った。
彼の作品「アニー・ホール」がアカデミー賞を受賞した際、
ウディ・アレンは授賞式を欠席。
理由はその日、ニューヨークのクラブで
ジャズバンドのライブに出演するから。
彼は華やかな授賞式を蹴り、
地元ニューヨークの
酒と煙草の匂いが立ち込める薄暗いナイトクラブで
子どもの頃から夢中になっている古いジャズを
仲間達と演奏していたのだ。
それから数十年、
彼は仕事でニューヨークを離れるとき以外、
今でも毎週月曜日に、お気に入りのクラブで
クラリネットの演奏を続けている。
廣瀬大 15年10月11日放送
ウディ・アレンに関するいくつかのこと。
映画監督ウディ・アレンが
脚本を執筆するのに愛用しているのは
西ドイツ製の「オリンピア・ポータブル」という
古いタイプライターだ。
16歳のとき、40ドルで購入したという。
アイデアを書き殴ったノートの切れ端や
メモをファイルにとっておき、
引き出しに放り込んでおく。
そして、それが溜まると、
彼はその古い愛用のタイプライターに向かい
脚本の執筆を始める。
16歳のウディ・アレン少年はこのタイプライターを買うときに、
販売員の店主にどのくらいこれは丈夫かと訊ねたという。
「少なくとも、あんたが死ぬまでは壊れないだろうね」
その店員の答えを聞き、彼は購入を決めた。
あの日から60年以上が過ぎた今でも、
彼はこのタイプライターで
脚本を書き続けている。
こだわりを持って生きると
自然と愛用品ができるものだ。
廣瀬大 15年10月11日放送
abby chicken photography
ウディ・アレンに関するいくつかのこと。
映画監督ウディ・アレンの映画に登場する
主人公たちは常に人生に対する不安に
さいなまれている。
「宇宙が膨張して破裂したらすべておしまい!」
「アニー・ホール」など多くの作品で
繰り返される悲観的なセリフ。
人生はひどいことばかりで、不条理の連続。
かつ無意味で、ほとんどが運次第である。
そんなニヒリスティックな人生観が
彼の映画の根底には流れている。
決して消えることのない不安を抱えたまま
それでも彼の作品に登場する主人公たちは
立ち直り、生きていく。
不思議と映画を観たあと、
観客は前向きな気持ちになっていることに気づく。
彼の主人公たちを救うのは
不断の努力でも、強い意志でもなく、
ましてや冒険へと旅立つ勇気と行動力などでもない。
魅力的な女性への恋と愛と、
そしてほんの少しのユーモアである。
東美歩 15年10月10日放送
森和夫 ノモンハンからの帰還
1939年。
モンゴル国境で
日本と旧ソビエトとの紛争が勃発した。
ノモンハン事件。
大量の戦闘員と武器を投入し、
旧ソビエトは、日本軍を壊滅へ追いやった。
生存率4%。
生き残ることが奇跡と言われた。
森和夫。
東洋水産の創業者は、その貴重な生存兵だ。
戦後、わずか四名の従業員とともに会社を起こすと、
一代で日本屈指の食品企業へと成長させる。
看板商品は、「赤いきつね」。
真っ赤なカップうどんにつけられた名は、
実は、日本軍を撃破したソビエト軍の俗称である。
ノモンハンにくらべれば、どんな苦労も苦労ではない。
「赤いきつね」にこめられたのは、
森の不屈の精神だった。
東美歩 15年10月10日放送
森和夫 社長の給料
「社長の給料は、おいくらですか?」
労働組合協議会に呼び出された森和夫は、尋ねられた。
働く者の権利が見直されはじめた昭和30年代、
東洋水産でも労働組合がつくられ、
待遇改善が訴えられ始めた。
「私の給料は、2万5千円です。」
森が答えると、どよめきが起こった。
現代の価値で37万円。
森の月給は、一般社員と変わらぬものだったのだ。
私欲よりも、消費者の利益を優先するのが、経営哲学だった。
その姿勢に社員は惚れなおし、
労使紛争は自然に解消してしまったという。
東洋水産のオーナー社長は、
戦闘的だった当時の労働組合協議会においてさえ、
あきれるほどの実直な人間だった。