川田琢磨 20年3月28日放送
いろんな科学者『日曜作曲家』
「だったん人の踊り」で有名なオペラ「イーゴリ公」。
これを手掛けたロシアの作曲家、アレクサンドル・ボロディンは、
非常に筆が遅いことで有名だった。
1つの作品に5年や10年かけるのは当たり前。
イーゴリ公にいたっては、
19年もの歳月を費やした結果、
ついに未完のまま、その生涯を終えてしまった。
彼の本職は、実は作曲家ではない。
「ボロディン反応」という、
有機化学の教科書に載るほどの発見をした、科学者なのだ。
研究者として多忙な日々を送る傍ら、
仕事の合間を縫って、作曲をたしなんでいたボロディン。
彼は自らを、「日曜作曲家」と呼んでいた。
明日は日曜日。
私たちは、どんな新しい自分に出会えるのだろう。
澁江俊一 20年3月22日放送
NASA
私たちに許された水
今日は世界水の日。
水について
考えてみたくなる日。
地球上にある水のうち
人間が利用できるのは何%くらいか
ご存知だろうか。
地球上にある水は97%が海水。
淡水の割合はわずか2.5%。
しかもその約7割が氷河なので
人間が水資源として利用可能な淡水は
地球上の水の0.007%にすぎない。
しかも安全で清潔な水となると・・・
水がないと生きていけない。
私たちだからこそ
今日だけでなくこれからも
水のことを少しずつ考え続けていきたい。
澁江俊一 20年3月22日放送
NASA
宇宙で飲む水の行方
今日は世界水の日。
水について
考えてみたくなる日。
宇宙で暮らす宇宙飛行士たちを
日々支えている数多くの最先端技術。
それはかなりの確率で
我々地上で暮らす人間の未来も
支えてくれるものになるだろう。
例えば水の技術。
国際宇宙ステーションでは
クルーのおしっこを大きな装置で
蒸留し、精製して飲料水にして飲んでいる。
究極にサステナブルな循環の姿。
この装置は宇宙飛行士の健康だけでなく
国境や人種を超えて助け合う精神も
支えている…そんな気がしないだろうか。
澁江俊一 20年3月22日放送
RESPITE
水がつくる日本の心
今日は世界水の日。
水について
考えてみたくなる日。
日本の地形は急峻で、
雨が降ると川の水も勢いを増す。
一方ヨーロッパの川は
なだらかな平野部をゆっくりと流れていく。
この水の流れが
人間の精神にも影響を与えた。
水環境はそこに生きる人の心を形づくるのだ。
例えば水の少ない土地だと、人は自然に立ち向かう。
砂漠の宗教と言われるキリスト教。
その流れをくむ西洋文明は、科学で自然を支配しようとする。
しかし日本は雨も多く、豊富な水と豊かな森があった。
木の実やキノコ、山菜、魚、鳥や鹿…
森にも川にも豊かな恵みがあった。
だから自然に感謝し、支配しようとは思わなかった。
「行く川の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず」
我々の心に深く宿る、この鴨長明の言葉こそが
水によってつくられた日本の精神を、
見事に言いあらわしている。
澁江俊一 20年3月22日放送
水と芸術
今日は世界水の日。
水について
考えてみたくなる日。
芸術家にとって水は最高のモチーフだ。
北斎は海の波のしぶきを見事に描き
モネは水面に映る光の揺らめきを
キャンバスにとどめた。
中でも最も水に取り憑かれた芸術家は
レオナルド・ダ・ヴィンチだろう。
彼の残した膨大なノートには
水や水の流れに関するものが非常に多い。
水を徹底的に観察し洞察することで
人体の血液や空気の流れへとその興味を広げていった。
人類最高の天才が最も惹かれたのが、
この星のどこにでもある水だとは。
当たり前のものを、どう見るか。
その大切さをダヴィンチから学びたい。
田中真輝 20年3月22日放送
硬い水、軟らかい水
今日は世界水の日。
水について
考えてみたくなる日。
カルシウムやマグネシウムなどの
金属イオン含有量が多い水を硬水。
少ない水を軟水、と呼ぶ。
日本の水は、ほとんどが軟水で、
その癖のなさ、まろやかさが
和食や茶道には欠かせない。
一方で、欧米の水は硬水が多く、
ミネラル分が肉の臭みを消し
軟らかくするため、肉などの
煮込み料理に向いているという。
その土地の料理は、その土地で
食べるのが一番おいしい。
それは、雰囲気だけではなく、
実はその土地の水によるところも
大きいのかもしれない。
田中真輝 20年3月22日放送
osa_muu
水に浮く氷の謎
今日は世界水の日。
水について
考えてみたくなる日。
コップに入った冷たい水の表面に浮く、氷。
実は、液体である水の上に個体である
氷が浮く、という現象は自然界にある物質の中でも
極めて特殊なのだとか。
ほとんどの物質では、液体よりも個体の方が
密度が高く、体積当たりの重量も大きくなる。
例えば溶けた鉄に鉄球を入れると見る間に沈んでいく。
しかし水の場合は、個体になると、水分子を
作っている酸素原子と水素原子が結合し
隙間のある籠のような状態になるため、
液体の時よりも密度が低くなり、密度の高い
液体の水の上に浮くのだ。
他にも水には科学的に明らかになっていない
点が多数存在するという。
生命に欠かせない水。その神秘の力は
まだまだ謎に包まれているようだ。
田中真輝 20年3月22日放送
NASA
火星の水
今日は世界水の日。
水について
考えてみたくなる日。
火星に水は存在するのか。
その答えはYES。
2018年に欧州宇宙機関の火星探査機、
マーズ・エクスプレスが、極冠の下に
幅20キロほどの湖があることを発見した。
ではその水の中に
生命は存在するのか。
その答えは…まだなんとも言えない。
しかし、とにもかくにも生命の源となる
水の存在は確認できた。
あとはその水を手に入れて顕微鏡で
覗いてみればいい。
ただしそのためには、厚さ1.5キロの氷を
掘削できるロボットを7500万キロ離れた
火星に送りこむ必要があるのだが。
田中真輝 20年3月22日放送
太古の海の記憶
今日は世界水の日。
水について
考えてみたくなる日。
人間はその体の中に、
太古の海の記憶を宿している、という
話を聞いたことはないだろうか。
40億年前、単細胞生物として
海水中から栄養素を吸収していた
その名残が血液をはじめ体内の
様々なところに見られるのだという。
例えば空気中の振動は、耳の奥にある液体
によって波に変換され、脳に伝わる。
それをわたしたちは音として認識する。
わたしたちは今、この瞬間も、
波の音を聞いている、
と言えるのかもしれない。
藤本宗将 20年3月21日放送
カウントダウンの話 ロケット
ロケットの打ち上げにおいて
初めてカウントダウンが採用されたのは、
実は映画の中だった。
それは1929年に制作された
SF映画『月世界の女』でのこと。
この映画の打ち上げシーンはとてもリアルで、
現実の宇宙開発にも影響を与えた。
カウントダウンもこの映画以後、
実際のロケット発射に使われるようになったのだ。
3、2、1、と秒読みが進むたび
高まっていく緊張感と期待感。
そして何より、来るべき一瞬に向けて
人々の気持ちがひとつになる。
カウントダウンが
さまざまなイベントにも広がったのは、
きっとそんな魅力によるのだろう。