名雪祐平 15年4月25日放送
Matt From London
相場師 ジョージ・ソロス
大英帝国の繁栄の象徴、
イングランド銀行を
一人の男が
破綻に追い込んだ。
投資家ジョージ・ソロス。
1992年9月16日、
イギリス政府の為替介入に対抗して
イギリス通貨ポンドの空売りを仕掛けたのだ。
ソロスは部下に命じた。
ポンドを売ることにする。
金額は100億ドルだ!
つまり、1兆円の売り。
次の朝、ソロスの家の電話が鳴った。
部下からだった。
「すべてうまくいった」と。
ソロスは寝ている間に
1000億円の利益を上げていた。
政府は、一人に負けた。
というより、市場に負けた。
名雪祐平 15年4月25日放送
相場師 本間宗久
江戸時代の伝説の相場師、
本間宗久。
大阪、江戸の米の商いで
巨万の富を築いた。
宗久は相場の極意をこう語った。
二人の兵が、旗が動くのを見て言い争った。
一人は「旗が動いている」と言い、
もう一人は「風が動いている」と言い張る。
その時、僧侶が現れ、こう喝破した。
「旗が、風が、動いているのでもない。
おまえたちの心が動いているのだ」
つまり、相場の市場心理を読んでこそ、
相場で勝てる、と。
さて、相場師・宗久なら
来週の日経平均をどう読むでしょうか?
礒部建多 15年4月19日放送
シュバイツァーと猫
4月19日、今日は飼育の日。
医師アルベルト・シュバイツァー。
暗黒大陸と呼ばれていたアフリカへ旅立ち、
病める人々への治療に人生を捧げた。
1952年、彼の献身的な活動にノーベル平和賞が贈られた。
そんなシュバイツァーは、無類の猫好きだった。
仕事机には常に猫が乗り、資料の上になりふり構わずのけぞり返る。
過酷な状況で働くシュバイツァーにとって、
猫の純粋無垢な姿こそ、心の支えだった。
「人生の惨めさから抜け出す唯一の方法は、音楽と猫だ。」
のんきに生きていた彼の猫は、
いつしか世界平和に貢献していたのだ。
礒部建多 15年4月19日放送
犬を愛した藩主
播磨姫路藩第2代藩主 酒井忠以(さかい ただざね)。
生類憐れみの令の影響もあり
特に犬を溺愛することで有名だった。
ある時、幕府から重要な命を受け、
京都に出向く事になった忠以。
出発の朝、飼い犬は玄関まで出てくると、駕籠から離れようとしなかった。
その姿に心打たれ、やむなく京都まで愛犬を連れて行く。
以後も参勤交代の際には、忠以は常に犬を連れていった。
後に、このエピソードが世に広まると、
この犬には貴族と同じ六位の位を与えられた。
「犬は自分を人間だと思っている」と言われるが、
この時代には人間以上の犬が、たくさんいたのだ。
澁江俊一 15年4月19日放送
野生の飼育法
4月19日、今日は飼育の日。
「エゾオオカミ物語」という絵本がある。
かつて北海道に生息し、絶滅したエゾオオカミについて
森のフクロウがモモンガたちに語る物語だ。
フクロウの言葉は、こうだ。
・・・
オオカミはシカを殺して食べる。
だが、シカはオオカミに食べられることによって
じぶんたちの数のバランスをたもっている。
オオカミがシカを食べることも、
シカがオオカミに食べられることも、悪いことではないのだ。
・・・
北海道で開拓が始まると、
人間たちはオオカミを次々と駆除していく。
今ではシカが増え続け、人間たちの新たな悩みになった。
この物語の作者は、絵本作家のあべ弘士。
旭山動物園の飼育係だった彼の描くオオカミたちは
強く、美しく、寂しそうだ。
この絵は、旭山動物園にある
オオカミの森で見ることができる。
広々としたオオカミの森のすぐ横には、エゾシカたちの住む檻があり
両者は時々、にらみ合っている。
失われた野生の姿が、そこにある。
松岡康 15年4月19日放送
Karyn Sig
モンキー博士
4月19日、今日は飼育の日。
モンキー博士として世界に知られる霊長類学者、河合雅雄。
寝ても覚めてもサル観察。
50年以上にわたって研究を続け
京都大学霊長類研究所の所長を務めるなど、
日本の「サル学」の道を切り開いた。
なぜサルを研究するのか?
あるインタビューで彼はこう答えた。
霊長類学は、人間学なんです。
人間が好きだからやっているんです。
サルを研究することで、
人間という生き物が浮き彫りになってくる。
河合は「人とはなにか」を探っていたのだ。
澁江俊一 15年4月19日放送
作家を育てるということ
4月19日、今日は飼育の日。
1958年、大江健三郎が若干23歳で
芥川賞を受賞した小説「飼育」。
とある村の少年が世話をしていたのは、
墜落した飛行機に乗っていたアメリカの黒人兵だった。
戦時中の敵国。人種も違えば、文化も、年齢も違う。
何もかもが異なる人間を飼育するという異常な体験は、
主人公である少年の心を強く揺さぶる。
芥川賞の選考委員の一人で
新人を育てる名人でもあった川端康成は、
過去の受賞作家で最も芥川に似通っているとして
大江氏の名を芥川賞に加えたい
とまで語った。
2人は後に、
日本でただ2人のノーベル賞作家となり
「美しい日本の私」
「あいまいな日本の私」
と、まったく異なる
スピーチをすることになる…
奥村広乃 15年4月19日放送
日本のめだか
4月19日、今日は飼育の日。
5,000余りの呼び名があるという、メダカ。
それほど日本人にとってなじみの深いメダカが
環境省の絶滅危惧種リストに加わったのは1999年。
もう15年以上もまえのことになる。
『身近な生き物が姿を消してしまうということは異常なことだ。
それは環境の悪化を教えてくれていると考えることができる。』
姫路市立水族館や島根県立宍道湖自然館の館長などを歴任した
栃本武良(とちもと たけよし)氏はそう語る。
小さな生き物からの緊急シグナルを感じてか、
いま「東京めだか」「藤沢めだか」など、
地域のメダカを大切にするうごきが広まっている。
奥村広乃 15年4月19日放送
photokai
暮らしと自然
その昔、自然は暮らしのすぐそばにあった。
『ヒトも、動物の一種として生理的な欲求に基づき、
自然豊かな海山川へわざわざ休日に出掛けていくことになった。』
そう語るのは
姫路市立水族館や島根県立宍道湖自然館の館長などを
歴任した栃本武良(とちもと たけよし)氏。
私たちが自然のある場所に行きたくなるのは、
自然が失われた証拠なのかもしれない。
松岡康 15年4月19日放送
Igor523
伝書鳩の未来
4月19日、今日は飼育の日。
かつて手紙や薬を伝達するために飼育された伝書鳩。
人と伝書鳩との歴史は古く
紀元前約5000年のシュメールの粘土板にも
その記述があるという。
マリー・アントワネットは
獄中から一羽の鳩に希望を託し、外部の王党派と
連絡を取り合っていたとも言われている。
鳩の優れた認知能力と学習能力が
近年、科学的に明らかになりつつある。
児童が描く「上手な絵」と「下手な絵」を
「区別」させる訓練を行い、鳩がその「区別」を
学習できることが実験により確かめられたのだ。
役割を終えたかと思われた伝書鳩。
近い未来、別のかたちで活躍する鳩を
見られる日が来るかもしれない。