森由里佳 14年12月7日放送
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贈り物④ ティファニー・ボウ
まっ白なサテンリボンがむすばれた、
スカイブルーの小さな箱。
女性なら誰もがときめく贈り物だ。
ティファニーの創設者、
チャールズ・ルイス・ティファニーには、
あるこだわりがあった。
それは、リボンの結び方。
女性が少し引っぱるだけで、
小箱の上で白いリボンが美しくほどけていく。
そのなめらかなさまは、
女性たちの胸の高鳴りを加速させる。
それは、
彼女たちが輝くジュエリーを目にするまでの
ほんの小さな演出に過ぎないけれど、
リボンがするりとほどけるその瞬間、
女性たちのこころもまた、
贈り主のこころの中へとほどけていくのだ。
森由里佳 14年12月7日放送
贈り物⑤ 井上ひさし
井上ひさしの戯曲は、
社会や人間への不満・疑問を投げかける中で、
必ず、笑いを含んでいる。
その理由の一つに、こんなことがある。
人間の愚かさが誰かに注意されて改まるならば、
悲しみや怒りではなく、
笑いによって注意を下されるべきではないだろうか。
耳を塞がれがちな意見や不満を、
笑いという「贈り物」に変える。
そうすれば、心ない観客が見ても、
それはきちんと楽しまれる。
一方で、心ある観客には宿題を残すのが井上戯曲。
それは、「あなたはどうだ?」という問いだ。
その問いが放つ心の波紋こそが、
井上からの最高の贈り物だといえるだろう。
森由里佳 14年12月7日放送
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贈り物⑥ わすれられないおくりもの
アナグマは、死ぬことを恐れていません。
死んで、からだがなくなっても、
心は残ることを、知っていたからです。
スーザン・バーレイの絵本
「わすれられないおくりもの」の一節だ。
ゆっくりと眠る様に亡くなったアナグマは、
友人たちに、宝物となるような知恵や工夫を遺していた。
それは、彼らにとって、
大好きなアナグマからの「わすれられないおくりもの」だった。
しかし、アナグマが遺したいちばんの「わすれられないおくりもの」は、
「死んで、からだがなくなっても、心は残る。」
という、幼い読者とその親へのメッセージかもしれない。
蛭田瑞穂 14年12月7日放送
贈り物⑦ ローマ教皇フランシスコ
第266代ローマ教皇フランシスコは
今年の世界コミュニケーションデイに寄せて、
こんなメッセージを発表した。
インターネットは家族の団結や
人間の尊い人生を保証します。
そして、異なる文化、伝統、言語を持つ人々が
互いに理解することのできる大きな可能性を持っています。
それは神様からの素晴らしい贈り物なのです。
クリスマスシーズンは一年でいちばん人との絆を感じる季節。
インターネットを通じて世界中で誰かが誰かを想っている。
蛭田瑞穂 14年12月7日放送
贈り物⑧ シャウプ司令官
1955年、アメリカの百貨店シアーズは
「サンタクロースに電話をしよう」という広告を配布し、
サンタへの直通ダイヤルを案内した。
ところが、その番号に印刷ミスがあった。
子供たちが電話をかけると、
中央防衛航空司令部のシャウプ司令官につながってしまうのだ。
小さな子どもからの間違い電話に、
司令官は腹をたてるどころか
「レーダーで調べた結果、サンタクロースは
北極から南極へ移動中です」と答えた。
以来、防衛司令部は毎年クリスマスに
サンタクロースを追跡し、
その足跡を公開している。
シャウプ司令官の機転を利かせた対応は、
子どもたちへの予想外の贈り物となった。
佐藤延夫 14年12月6日放送
数学者たち ルネ・デカルト
フランスの数学者、ルネ・デカルト。
のちに近代哲学の父と呼ばれるこの男は
ただ机に向かうだけでなく、
自ら社会に出ることを選んだ。
それをデカルトは、「世間という大きい書物」と言った。
20歳になると、パリを経由しオランダへ。ドイツへ。
志願して軍隊に加わり、
優れた技術者や科学者と交流した。
そしてある夜、インスピレーションに打たれ
代数学と幾何学を結合した解析幾何学の基礎を発見する。
「我思う、ゆえに我あり」
この有名な言葉は、家の中で本を眺めても
決して見つからなかっただろう。
佐藤延夫 14年12月6日放送
数学者たち ヨハン・カール・フリードリヒ・ガウス
近代数学の父、
ヨハン・カール・フリードリヒ・ガウス。
いかにも数学者らしく、質素な暮らしを好んだ。
小さい書斎、緑色のカバーをつけた仕事机、
幅の狭いソファー、傘付きのランプ、
火の気のない寝室、粗末な食事、ビロードの帽子。
代数学の基本定理など多くの業績を残すが、
彼に必要なものはこれだけで十分だった。
「私が目にした問題は、見た瞬間に答えがわかった」
ガウスの言葉に間違いはなく、
2歳にして父親の計算間違いを指摘していたそうだ。
佐藤延夫 14年12月6日放送
数学者たち チャールズ・バベッジ
計算機やコンピュータが世に出る前の話。
科学計算に用いられる対数や三角関数の表は、
数学者たちが作っていた。
彼らは政府によって集められ、ただひたすら手書きの計算をするのだ。
しかしイギリスの数学者チャールズ・バベッジは
人間がやる仕事ではないと考えた。
そして世界で初めて、プログラム可能な計算機を発明した。
「これは、くりかえし計算という耐えられないほどの労働と
うんざりするほどの単調さをなくすのに役立つ機械である」
バベッジが、コンピュータの父と呼ばれる所以である。
佐藤延夫 14年12月6日放送
数学者たち ジョン・フォン・ノイマン
ハンガリー出身の数学者、ジョン・フォン・ノイマン。
多くの著名な数学者がそうであるように、
ノイマンもまた、傑出した才能の持ち主だった。
幼いころから科学への興味を示し、
12歳で関数論をマスター。
18歳になる前に論文を執筆し、
数学雑誌に発表した。
大学に入学するときには
一流の数学者の仲間入りをしていた。
経済学の原理を数学で説明するという「ゲームの理論」を研究し、
やがて、スーパーコンピュータの開発に関わる。
プログラム内蔵方式と呼ばれる方法で、
それまで単なる計算機械だったコンピュータは
無限の可能性を秘めた万能の箱に変わる。
「自分たちの中で一番の天才はノイマンだ」
かのアインシュタインも、そう語ったらしい。
薄景子 14年11月30日放送
美味のはなし フェイエルバッハ
19世紀のドイツの哲学者、フェイエルバッハは言った。
人間とは、その人の食べたものである。
なるほど。
1日3食、365日で1095食。
何を食べるか、どこで食べるか、
誰とどんな会話をして食べるかで
身体も、心も、そして命もちがうものになる。
60兆の細胞は、
そんな食の記憶のアルバムなのかもしれない。
さて、きょうは何をいただこう。