名雪祐平 14年11月29日放送
チャンと錦織
1989年、全仏オープンテニス
男子シングルス4回戦。
まだ17歳のマイケル・チャンが
当時の世界No.1、イワン・レンドルと
死闘を繰り広げていた。
チャンの足には痙攣が走り、
体力は限界。
そのとき、チャンは相手を馬鹿にするような、
アンダーサーブを打つ。
まさか。
意表を突かれたレンドルはペースを乱され、
この試合を敗退。
チャンは決勝まで進み、
史上最年少の四大大会チャンピオンになった。
2014年から、チャンは錦織圭のコーチに就任。
男子テニスのスーパースター、フェデラーの
ポスターを部屋に飾っていると話した錦織に
チャンは告げた。
コートに入る時は
相手に対するリスペクトは捨てろ。
2014年、錦織は
世界ランキング17位から5位に躍進した。
中村直史 14年11月23日放送
ぱちょぴ
鉄川与助と教会 その1
その若い大工は、西洋建築のことなど何も知らなかった。
ただ、一人のフランス人神父との出会いが彼の運命を変える。
長崎の小さな島に生まれた大工、鉄川与助(てつかわ よすけ)。
生涯仏教徒であったにもかかわらず、
フランス人のド・ロ神父から教わった教会建築に没頭し、
長崎を中心に、30を超える美しい教会を建立した。
それはまだ、日本に信仰の自由が認められて間もない頃の話。
彼が立てた教会の数々は、世界を驚かせた。
長崎の教会群は、世界遺産に登録されようとしている。
中村直史 14年11月23日放送
STA3816
鉄川与助と教会
時は明治時代。
やっと信仰の自由が認められた日本で、
数々の教会を建立した長崎県五島列島出身の大工、鉄川与助。
ほとんどの教会は、貧しい信徒たちが出し合った資金で建てられたもの。
質素なものが多い。
けれど、彼がつくった教会には、華やかさがある。
自由に祈ることを許された喜びにみちているかのようだ。
彼のつくった教会にはどれひとつ同じものがない。
木造、コンクリート、石造り、バロック風、ロマネスク風。
信徒たちの祈る喜びが乗り移ったように、
鉄川与助の「つくる喜び」もあふれている。
教会は、100年の時をこえ、世界遺産に登録されようとしている。
三島邦彦 14年11月23日放送
藤野英人と投資
1602年、オランダで
世界初の株式会社「東インド会社」が生まれた。
多くの人々の株式投資によってリスクを分散するこの仕組みは、
今も会社の基本的な形となっている。
しかし、
誕生から400年以上がたった今も、
投資と自分は縁がないと考える人は多い。
そんな世の中に対して、
投資ファンドを経営する藤野英人(ふじのひでと)は、
すべての人は「投資家」なのだと言う。
藤野は、投資をこう定義する。
投資とは、いまこの瞬間にエネルギーを投入して、未来からのお返しをいただくこと
お金をかけなくても、
時間をかければそれは投資だと彼は言う。
本を読むことも、
友人と会話をすることも、
そして、いま、ラジオを聴いていることも。
三島邦彦 14年11月23日放送
Francisco Anzola
ナラナヤ・ムルティとIT
インドでIT会社を経営するナラナヤ・ムルティには夢がある。
それは世界の格差をなくすこと。
いまだにカースト制度が残るインド。
貧困にあえぐアフリカの国々。
そんな世界の格差をなくすため、
まず教育の格差をなくしたい。
これは、彼の言葉。
教育格差をなくすためには、僕たちネット企業が頑張らなければいけない。
世界中に土管を埋めてケーブルを引き、いたるところにサーバーを置く。
ものすごい低価格でインターネットが見られるようにする。
アフリカで学校をつくるよりも、インターネットの学校をつくるほうが早いんだ。
三島邦彦 14年11月23日放送
早野龍五と科学
原子物理学者・早野龍五(はやのりゅうご)は、
子どもたちに科学の授業をする時に
こんな話をするという。
138億年前の
ビッグバンで生まれた
水素が私たちの身体にも入っている。
身体の中の、138億年前の水素原子。
その存在を意識するだけで、
世界は、すこし違って見えて来る。
三國菜恵 14年11月23日放送
Yung Tsai
早川義夫と写真
ロックバンド・ジャックスのボーカルとして知られる、早川義夫。
彼は写真を撮るのが好きで、
中でも愛犬のチャコを撮るのが好きだ。
なぜなら、犬は人間とちがって
よく撮られようなんて思っていないから。
だから彼も素直にカメラを向けることができる。
そんな早川の、写真論。
いい写真は、素直な気持ちと愛情だ。
ぶれていても。粒子が荒れていても。
三國菜恵 14年11月23日放送
Marxchivist
大友良英と映画音楽
連続テレビ小説『あまちゃん』の作曲者として知られる、大友良英。
彼の作曲人生におおきな影響を与えた人がいる。
映画『ゴジラ』のテーマを手掛けた作曲家、伊福部昭だ。
今の映画音楽と比べて、はるかにくすんだ録音。
オーケストラの重低音。歪んだ音。
子どもごころにも、それはとてもおっかなかった。
大友は語る。
伊福部さんは僕ら子どもに
怪獣という概念を音楽で植えつけた。
言葉を教えてくれた親みたいなもんです。
三國菜恵 14年11月23日放送
雨宮処凛と映画
作家・雨宮処凛(あまみやかりん)。
彼女が大好きな一本の映画がある。
魚喃(なななん)キリコ原作、『ストロベーリーショートケイクス』。
4人の女性の恋愛模様を描いたオムニバス映画だ。
雨宮はこの作品を、
誰かを好きになるたび観返す。
そのたびにいつも同じ想いが胸をよぎる。
恋する者は、みんな惨めだ。
みんなが惨めで、だからこそ、愛おしくてたまらない。
村山覚 14年11月22日放送
織田作之助・一枝との出会い
昭和の文豪、織田作之助は二十歳を過ぎた頃、運命の人に出会う。
織田が通っていた旧制高校近くのカフェ「ハイデルベルヒ」で
働いていた同い年の女性、宮田一枝だ。
すらりと背が高く、美貌の持ち主である一枝は近所で評判だった。
カフェに住み込みで働いていた一枝と同棲するために、
二階の部屋に梯子をかけて連れ出したというドラマチックな逸話も残っている。
織田の代表作『夫婦善哉』には、大阪から東京行きの汽車に乗って
駆け落ちするシーンが描かれている。もしかしたら、一枝を二階から
連れ出した時のことを思い起こしながら、書かれたのかもしれない。
柳吉が梅田の駅で待っていると、
蝶子はカンカン日の当っている駅前の広場を大股で横切って来た
女の決意を感じる名シーンである。