奥村広乃 14年11月16日放送
ガンディーの過去
許して、受け入れる。
今日は国際寛容デー。
非暴力、不服従によって
インド独立を成し遂げた、
マハトマ・ガンディー。
しかし小学生のころは、
掛け算を覚えられなかったり
ヒンドゥー教の教えをやぶって肉を食べたり、
タバコを買うために召使の財布から
お金を盗んだこともあった。
さまざまな過ちを犯す自分に絶望し、
自ら命を絶とうとしたこともある。
ガンディーはこんな言葉を残している。
自分自身の誤りは凸レンズをつけて見、
他人のそれは凹レンズをつけて見よ。
自分に厳しく、他人にやさしく。
それを実践するためには、
自分の弱さや過ちを認める
強い心が必要なのかもしれない。
佐藤理人 14年11月15日放送
Raoul Luoar
007の作り方①「スーツ」
「007」と他のアクション映画の決定的な違い。
それはスーツだ。
英国諜報部員ジェームズ・ボンドの
表の顔はエリート商社マン。
スーツの似合う男でなければならない。
初代ボンドを演じたショーン・コネリーは
スーツを着なれていなかったため、
監督から寝る時もスーツでいるよう命じられた。
セヴィルロウ、ブリオーニ、トム・フォード。
すべてオーダーメイドのクラシック。
ボンド映画は何十年間も観返されるため、
時代を超えて洒落て見えなければならない。
原作者イアン・フレミングは服に興味がなく、
擦り切れた安物のスーツばかり着ていたことは
あまり知られていない。
佐藤理人 14年11月15日放送
Pineapples101
007の作り方②「ガール」
ボンドガールの歴史は、
女性の進化の歴史でもある。
美しくグラマーなだけでなく、
知的でタフな自立した大人の女性。
1962年の初代ボンドガール、
ウルスラ・アンドレスから
彼女たちは時代を先取りしていた。
90年代末より、
ハル・ベリーやソフィー・マルソーなど
有名女優が起用されるようになると、
彼女たちは敵や味方として
さらにボンドを圧倒し始める。
しかし最もボンドを苦しめた女性といえば
この人しかいない。
史上最高齢の72歳で起用された
ジュディ・デンチ。
なんといっても彼女は
ダニエル・クレイグ演じる
6代目ボンドの上司「M」として、
彼を死ぬほどこき使うのだから。
佐藤理人 14年11月15日放送
007の作り方③「ソ連」
冷戦はすぐに終わる
「007」の脚本を書き始めた1959年、
原作者イアン・フレミングは、
諜報員だった自分の経験からそう考えた。
ジェームズ・ボンドの敵役として彼は
いかなる国家にも属さない
架空の秘密組織「スペクター」を作った。
しかし映画が公開された60年代、
冷戦はさらに激化。
ソ連が敵になるのに時間はかからなかった。
その最大の敵の崩壊から約四半世紀。
中東のテロリスト、南米の麻薬王、北朝鮮、
かつての仲間などさまざまな脅威が
ボンドの前に現れた。
冷酷で邪悪な手強い相手は何人もいた。
しかしイデオロギーという鎖に縛られた
悲しい敵はもうどこにもいない。
佐藤理人 14年11月15日放送
007の作り方④「ムーア」
007にならないか
1971年、ロジャー・ムーアの元に
3代目ジェームズ・ボンド役のオファーが来た。
2代目ボンド、ジョージ・レーゼンビーは一作で降板。
ショーン・コネリーの代役は
誰にも務まらないように思われた。
だが彼は受けた。
ローレンス・オリビエの後に
ハムレットを演じた俳優のことを思えば
大したことじゃない
役作りのヒントを彼は原作に求めた。
ボンドは殺しが好きではなかった
これだ。コネリーのボンドは冷酷な殺しのプロ。
なら自分は上品で優しいボンドになろう。
持ち前のルックスとユーモアを生かした
この作戦は大成功。
彼は歴代最多の7作で主演を務めた。
007の武器はたくさんある。
しかし彼を演じる俳優の武器は一つしかない。
ムーア曰く、それは
自分の個性
だそうだ。
飯國なつき 14年11月9日放送
お風呂① 杉滝
吉田松陰の母、杉滝。
嫁いだ先は、極貧の武家だったが、
そんな中でも、彼女は「毎日お風呂に入る」と宣言した。
義理の父から猛反対を受けながらも、
「貧しさのあまり心まで貧しくなってしまっては
どうしようもない。
温かい湯につかることで、心まで温もり、
翌日も頑張る意欲が生まれるはずだ」
と言いはり、お風呂に入り続けた。
滝は、子供たちを風呂に入れるのも大好きで、
吉田松陰が安政の大獄で処刑される前、
一日だけ帰宅を許された際にも、
松陰を風呂に入れ、無事の帰りを祈ったという。
風呂から伝わる母の愛は、
松陰の最後の一日を、きっと惜しみなく温めていた。
飯國なつき 14年11月9日放送
derekbruff
お風呂② 壇ふみ
女優の壇ふみは、
「風呂がないと、心が荒廃する」という。
彼女がオーストラリアに行った、ある夜のこと。
芯まで冷え切り、お湯につかりたいのに、
高さ二十センチのシャワータブしかない。
そこで彼女は、その二十センチにお湯をためて、浸かった。
刺身に醤油をつけるようにして、全身にお湯をなすりつけた。
湯に浸かる喜びを知らなければ、
そんな苦労も知らずに済んだろうに。
それでも壇ふみは、風呂の幸せについて、こう語る。
背をそらす。腕を伸ばす。
「ああ、いい気持ち」と、お腹の底から言ってみる。
今日の凝りが疲れが、ゆるゆるとお湯の中にとけてゆく。
飯國なつき 14年11月9日放送
bluespuit
お風呂③ 絵本「おふろだいすき」
お風呂嫌いの小さな我が子に、毎晩、ひと苦労。
そんなお父さんお母さんへ、おすすめしたいのが、
絵本「おふろだいすき」だ。
おふろが大好きな主人公の男の子、まこちゃんがおふろに入っていると、
突然、巨大なカメ、双子のペンギン、オットセイ…
いろんな動物がお風呂の中から登場する。
絵本から湯気が立ちのぼるような、
林明子さんのやわらかいイラストとともに、描きだされる空想の世界。
摩訶不思議な物語はどんどん広がっていくが、
最後は、あたたかいお母さんのタオルの中へ到着する。
子供はもちろん、大人だって、
お風呂に入りたくなる一冊だ。
森由里佳 14年11月9日放送
風呂④ 日本初の女性銭湯絵師
日本に3人しかいない銭湯絵師の中で、
唯一の女性、田中みずき。
ある銭湯で富士山の絵を描き終わった彼女は、
オーナーから絵にサインするよう促される。
しかし、彼女は躊躇した。
「描きたいから描くのではなく、
銭湯の個性につながる空間を作るお手伝いとして描いています。
最終的には見ている人の絵になってほしいので、
自分の絵だとは思っていません。」
個性を出すのではなく、
求められるものに応えたいという職人魂。
日本人のこころを癒しているのは、
熱い湯けむりだけではないようだ。
森由里佳 14年11月9日放送
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風呂⑤ 女将のご褒美
新潟の温泉旅館で育ち、
異国の島で温泉宿を経営する女将、荻野多賀子。
ニュージーランドのマルイアスプリングスという温泉で、
24年間もの間、客人をもてなしている。
日本とは環境も道具も異なるため、
ちょっとした作業も戦いだ。
しかし、荻野さんに言わせれば、それが
「生きている!って感じ」なのだという。
そんな彼女の楽しみの一つが、
露天風呂の掃除の後、お湯の確認のために入浴すること。
お客様がいないときだけ楽しめる、贅沢なご褒美だ。
異国の地であっても、戦う日本人を癒すのは、
やっぱり、いい湯なのだ。