小林慎一 14年10月18日放送
caseorganic
新しい世界・バイオニックアーム
ジョンズ・ホプキンス大学応用物理学研究所の
マイケル・クロフリンは言う。
「このバイオニックアーム、我々はモジュール型義手と呼んでいますが、
本物の手ができることを、ほとんど何でもやれます」
重さは、普通の腕とほぼ同じ約4kg。
26の独立した関節があり、100のセンサーと、17のモーター、
そして、コンピュータを備えている。
例えば、腕を失った人が、このバイオニックアームをつけたとする。
腕の切断面から、神経を伝わる電気信号を読み取り、
できあがった不規則なパターンをコンピューターが認識して
バイオニックアームを動かす。
つまり、普通に腕を動かそうとすれば、その通りに動くのだ。
しかも、流れるように、滑らかに。
「私がつくっているのは、腕や手をなくされた皆さんの可能性です」
マイケルは、さらにこう付け加えた。
「そして、そう遠くない日に、ピアノを弾けるようになるでしょう」
小林慎一 14年10月18日放送
新しい世界・赤ちゃん
箱を開けようとしている人形を助ける、いいウサギ。
それを邪魔する、悪いウサギ。
赤ちゃんの90%が、いいウサギを選んだ。
クラッカー好きのネコと、シリアル好きのネコ。
クラッカー好きの赤ちゃんは、クラッカー好きのネコを選ぶ。
しかも、クラッカー好きのネコが悪さをし、
シリアル好きのネコがいいことをしたとしても、悪さをしたネコを選ぶ。
さらには、シリアル好きのネコに、親切な犬と、意地悪な犬では、
クラッカー好きの赤ちゃんは、意地悪な犬を選ぶ。
イェール大学「赤ちゃんラボ」の研究で
赤ちゃんは、善悪を判断でき、
意見が同じものを好み、違うものを嫌うことが分かって来た。
性善説か、性悪説か。
紀元前3世紀から続くこの論争に、終止符を打とうとしているブルーム教授はこう言う。
「道徳観を植え付けるのではなく、善の心の花を咲かせることが大切です。
私たち人間は、善と悪の両方の心を、生まれながらに持っているのですから。」
小林慎一 14年10月18日放送
Alessandra Kocman
新しい世界・ソーシャルネットワーク
いまだ接続できない50億人の人々のために
インターネットの通信網をひろげるプロジェクトが始まっている。
人口密度の低い場所には、人工衛星を使い
人口密度の高い場所は、太陽電池で飛ぶ新開発の無人飛行機を使う。
民間航空機の邪魔にならず、天候にも左右されない上空2万メートルを飛ぶ。
旗ふり役は、フェイスブック。
この巨額の費用がかかる壮大なプロジェクトには
フェイスブックが50億人ものあたらしい潜在顧客を獲得できる
という商業的な意味合いはもちろんある。
しかし、目的はそれだけではない。
人々が自由に情報や考え方を共有できる
ソーシャルネットワークを禁止している国は多い。
アラブの春以降、その数は増えている。
中国をはじめ、中東の多くの国ではフェイスブックもツイッターも使えず、
トルコも今年、ツイッターを閉鎖した。
政府が管理することのできない自由なインターネット網をつくる。
真意はそこにある。
どんな場所にも平等に、人々が望めば即座に、
インターネットの中からジャンヌダルクが現れる。
そんな世界をつくろうとしているフェイスブックのCEOザッカーバーグはこう言う。
「このサービスがはじまれば、世界中の人々が、インターネットを通じて、
自らが望む政府を自由に決定できるようになるでしょう」
茂木彩海 14年10月12日放送
陶芸のはなし 石黒宗麿
生涯師をもたず、地道な努力を重ね、
人間国宝まで昇りつめた陶芸家、石黒宗麿。
何者にも頭を下げず、自由奔放。
当時は出来レースも多かった政府主宰の展示会などを
何より嫌っていた。
そんな性格だったため、
他人からの評価には関心がなく、
ゆえに、作品を販売することすら珍しかった。
「ぶっている」なんて風評が世間ではあるが
僕は唯、作るのに忙しく時間が無いだけです。
ただ作りたい。
純粋な熱で焼かれた陶器は、力強い。
茂木彩海 14年10月12日放送
geishaboy500
陶芸のはなし バーナード・リーチ
「東と西の結婚」を使命に活動を続けた陶芸家。
バーナード・リーチ。
幼少時代を日本で過ごした彼は、
22歳でふたたび日本を訪れる。
衝撃を受けたのは、一級品の陶器をただ飾るのではなく、
「茶会」として日常に取り込み、
愛でる習慣がある日本、そのもの。
日本は真の芸術の国だ。
それは血液にも時間にも室内にもある。
帰国後、無事、東の日本と、西のイギリスの仲人をつとめ
完成させたリーチの作品は
上品でありながら生活になじむ、不思議な趣をかもしだす。
日本に感動して生まれた作品は、
今日もどこかで、日本人の心を捉え続けている。
熊埜御堂由香 14年10月12日放送
tamachanhaazarashi
陶芸のはなし 白洲正子
随筆家、白洲正子。
町田市の古い農家を買い取って
能や古美術を愛して生きた。
焼きもののコレクターとしても知られた正子。
その世界に深く惹かれるようになったのは、
美術評論家の青山二郎からいわれたこんな言葉だった。
誰がもっていても一流というのではなく、
自分が持っているから値打ちがある。
そういうものを目指したらどうですか?
名のある茶碗と、名のない茶碗。
両方とも元はといえばアジアの片田舎の生まれた飯茶わんなのに、
農家の台所に埋もれているものもあれば、
展覧会のガラスケースの中に収まるものもある。
その事実に、正子は、
世の中にこれほど自由な存在があるだろうかと
胸が躍ったという。
白洲正子はこう言った。
焼きものは、すべて発見です。
陶芸とは、それを選ぶこと自体も
芸術たりえる、創作活動なのかもしれない。
熊埜御堂由香 14年10月12日放送
Yumi Kimura
陶芸のはなし 飛田和緒
ごはんをよそうという言葉は、
装うからきているらしい。
料理を装う、和の器にみせられた
料理研究家の飛田和緒(ひだかずを)は
こう言っている。
器に誘われて料理を作る。
そうすると、とびきりおいしくなるんです。
陶器に魅せられ、はじまる、
そんな食欲の秋も悪くない。
小野麻利江 14年10月12日放送
陶芸のはなし ハンス・コパーのキクラデス・フォーム
土台の上にあやういバランスで載った、弓なりの立体。
またその上に、細長い筒状の立体。
パーツそれぞれをろくろで挽き、
くっつけ、焼き上げたあと、
細い金属の芯で、本体と土台をつなげる。
この研ぎすまされた形の名は、
「キクラデス・フォーム(Cycladic Form)」。
陶芸家・ハンス・コパーが
古代エーゲ海の「キクラデス彫刻」に惹かれ、
つくりつづけた形。
晩年、ALS・筋萎縮性側索硬化症と診断され、
身体の自由が徐々に効かなくなってからも
キクラデス・フォームを片手でつくりつづけたコパー。
どうやってつくるか、の前に、
なぜつくるか。
みずからの理想の形を追い求め、生み出す。
その衝動は、終生尽きることがなかった。
薄景子 14年10月12日放送
陶芸のはなし 濱田庄司
20世紀を代表する陶芸家、濱田庄司。
イギリスで陶芸をはじめ、沖縄で学び、
益子で40年以上に渡って、陶芸人生を送った。
益子の土は粗く、焼き物に最適とはいえなかったが
それを知った上で、濱田は窯を築いた。
薪は近所の山から調達。
うわぐすりの原料は隣村から出る石材の粉末。
鉄粉は鍛冶屋のくずを使い、銅粉は古い鍋からとる。
筆は飼犬の毛を生かして自らつくった。
濱田は言う。
私はいい土を使って原料負けがしたものより、
性に合った原料を生かしきった仕事がしたい。
芸術といわれる器は、
つくった人間の器をうつしだす。
小野麻利江 14年10月12日放送
JartLover
陶芸のはなし 河合寛次郎の芸術論
文化勲章や人間国宝を辞退し、
無位無冠の陶芸家でありつづけた、
河合寛次郎。
自分を貫いてぶつけて
無条件に自他に迫って行く事が芸術だ。
つねにまず、自分の為につくる。
そんな作品たちが、
今も多くの人の眼を惹きつける。