名雪祐平 14年6月28日放送
WayTru
死刑前のメニュー リッキー・レイ・レクター
人生最後の食事に何を選ぶか。
ある死刑囚の場合。
リッキー・レイ・レクター、42歳。
ナイトクラブで殺人を犯し、
駆けつけた警察官を射殺した後、
自らの頭を撃ち抜いた。
そのとき絶命はせず、のちに死刑。
レクターの人生最後のメニュー。
ビーフステーキ
フライドチキン
粉末ジュース
そして、
アメリカ南部の名物、ペカンパイ。
そのペカンパイを残した
レクターは看守にこう言った。
あとで食べるよ。
コーネル大学の研究では、
死刑前のメニューは味の好みよりも
死刑囚が有罪か無罪を示唆するという。
ペカンパイは
どんなラストメッセージだったのか。
名雪祐平 14年6月28日放送
死刑前のメニュー ビクター・フュグール
人生最後の食事に何を選ぶか。
ある死刑囚の場合。
ビクター・フュグール、28歳。
電話帳から被害者を選び、
最初に電話に出た男性を誘拐後、殺人。
死刑前、なにを食べてもよいと言われ、
フュグールが注文したのは
種をとっていないオリーブ1個。
自分の身体のなかから
オリーブの樹が育つことを
妄想していたのだろうか。
死刑執行後、
フュグールの上着のポケットから
そのオリーブが発見された。
名雪祐平 14年6月28日放送
The Orchid Club
死刑前のメニュー ジョン・ウェイン・ケーシー
人生最後の食事に何を選ぶか。
ある死刑囚の場合。
ジョン・ウェイン・ケーシー、52歳。
ピエロの格好をして
チャリティ活動もする地元の名士だったが、
わずか7年の間に少年ら33名を殺害。
殺人ピエロと怖れられた。
ケーシーの人生最後のメニュー。
海老フライ12尾
たくさんのフランドチキン
フライドポテト
苺450g
フライドチキンは、
有名なチェーン店を3店舗経営していた
ケーシーの自作レシピだった。
殺人ピエロは最後に、
大好きな大好きな骨付きの肉に
しゃぶりついた。
名雪祐平 14年6月28日放送
cyclonebil
死刑前のメニュー クロード・ジョーンズ
人生最後の食事に何を選ぶか。
ある死刑囚の場合。
クロード・ジョーンズ、60歳。
目玉焼き8つ
ビーフステーキ
ソーセージ
ジャム付パン6枚
数の多さは生きることへの未練だったのか。
しかしこれが、無実の殺人罪で死刑になった
最後の食事だったとしたら。
死刑直前、ジョーンズは
被害者の遺族にこう告げた。
僕はやっていないけれど、
僕が死刑になることで
みなさんの気持ちにけじめがつくだろう。
本当に同情する。
さあ、時間だ。
死刑から10年。
殺人現場にあった唯一の証拠、
ジョーンズの毛髪がDNA鑑定されることになった。
その毛髪は。
ジョーンズのものではなく、
まったく他人のものだった。
三島邦彦 14年6月22日放送
雨の季節に マンダン族の雨乞い師
19世紀のアメリカ。
画家のジョージ・キャリントンは
先住民に伝わる雨乞いの風習を見ようと
ミズーリ川の上流に住むマンダン族を訪ねた。
村の青年から選ばれる雨乞い師は、
一日祈りを捧げて雨が降らないとその職を解かれる。
初日、2日目、3日目の青年は失敗に終わった。
そして4日目の朝、稲妻が描かれた盾と弓矢を持った青年が現れた。
朝から呪文を唱え続けた夕方、にわかに黒い雲が湧きあがる。
その雲を見るや、青年は、
「マンダン族の頭上とトウモロコシ畑に雲の中身をぶちまけるのだ!」
と言って矢を放った。
やがて、静かに雨が降りだした。
雨は深夜まで続き、村のトウモロコシ畑は乾きから救われた。
青年は雨乞い師としての能力を認められ、村を救った名誉を手にした。
これは、この体験からキャリントンが得た雨乞いに関する教訓。
マンダン族が雨を降らせようとする時、失敗することは決してない。
なぜなら、雨が降り出すまで絶対に儀式をやめないからだ。
なお、マンダン族では一度雨乞いに成功した者は、二度と雨乞いをすることはないという。
三島邦彦 14年6月22日放送
Janne Moren
雨の季節に 藤原咲平(ふじわらさくへい)
明日の天気予報はいかがでしょう。
お天気博士の愛称で国民に親しまれた
戦前の中央気象台長、藤原咲平。
1933年に藤原が
気象台で働く人々に向けて記した
天気予報の心得が残っている。
その中にある一節。
必ず空模様を見ること。朝夕、日中、夜中も常に見ること。
窓からでは不十分で必ず全天が見える場所で行うこと。
虚心坦懐に空と向き合う。
そうすれば、
わたしたちにも見えて来るものがあるかもしれません。
三島邦彦 14年6月22日放送
雨の季節に 黒澤明
雨が印象的な映画は多いけれど、
黒澤明監督の映画には、
ひときわ印象的な雨が降る。
『羅生門』での黒澤は、
どしゃぶりの雨の勢いを表現するため、
水に墨汁をまぜた。
羅生門の雨
この言葉はすぐに、
世界の映画人の
共通言語になった。
中村直史 14年6月22日放送
BlueRidgeKitties
雨の季節に モーリス・ラヴェル
古来より、
音楽家は自然現象を音で表現してきた。
しかし彼ほど
自然現象をまるで絵画のような
イメージでとらえた人はいなかった。
フランスの作曲家モーリス・ラヴェル。
彼が作曲した「水の戯れ」を聞いていると、
水はただ流れているのでも、
落下しているのでもなく、
はしゃいだり、たのしんでいるように聞こえる。
いや、そんな映像が目に浮かんでくる。
ラヴェルの音楽を知っている人は、
雨の季節を楽しめる人かもしれない。
中村直史 14年6月22日放送
雨の季節に 光源氏
雨がしとしとと降る夜。
あなたは、どんなことを思うだろう。
その夜も雨が降っていた。
大きな屋敷のとある部屋。
男四人が集まって話し始めたのは、
これまで出会った中で、
どんな女性がすばらしかったか。
源氏物語「雨夜の品定め」のくだり。
上流階級の女性しか知らなかった
若き光源氏は、
先輩たちが熱弁する
「中流階級にこそ、すばらしい女性がいる」
という説に感化される。
彼の幅広い女性遍歴は、
雨の降りしきるこの夜を境に、広がっていった。
三國菜恵 14年6月22日放送
allthecolor
雨の季節に グレッグ・アーウィン
アメリカのソングライター、グレッグ・アーウィン。
これまでに100曲以上の日本の童謡を、独自の視点で英訳してきた。
北原白秋の「あめふり」の一節
ピッチピッチ チャップチャップ ランランラン
彼はこんなふうに訳した。
Splishy, splishy, splashy, splashy, Happy am I!
英語になっても、雨の日のオノマトペはかわいい。