礒部建多 20年2月15日放送


rhosoi
発酵と解毒

発酵しなければ、
食べられなかったものがある。

それは、フグの卵巣である。
青酸カリの1千倍とも言われる猛毒、
テドロトキシンが含まれているからだ。

石川県の郷土料理に、
フグの卵巣のぬか漬けがあるのを、ご存知だろうか。

4年もの時間、ぬかに漬けることで、
ぬか味噌の中に存在する乳酸菌が、卵巣の中で増殖。
テドロトキシンをエネルギーとして取り込むことで、
やっと解毒され、食すことができるのだ。

その味は濃厚で、
漬ける期間が長いせいもあり、
塩気がかなり強いのも特徴。酒の肴として好まれる。

高血圧の人にとっては、
ある意味「毒」なので、注意すべし。

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松岡康 20年2月15日放送


Norio.NAKAYAMA
微生物に感謝

酒、醤油、漬物。
日本は微生物による発酵とうまく付き合ってきた国だ。

微生物が私たちにもたらしてくれた恩恵はおおきい。

発酵食品はもとより、医薬品、環境分野など、
現代においてもなくてはならない大切な仲間である。

そんな微生物たちを供養する場所がある。
京都曼殊院にある、その名も「菌塚」。

微生物からすれば、人の手で勝手に増やされ、
最後は死んでいく運命。
そんな微生物に感謝と供養をする場所が菌塚なのである。

微生物のことを知り、感謝をしながらうまく付き合っていく。
日本古来からあったこの考え方は、
現代においても忘れてはならないことなのだ。

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礒部建多 20年2月15日放送


autan
くさや菌

くさやをつくるのは、
乳酸菌の一種の、くさや菌である。

くさや菌は、とても働き者であり、
もちろん上司の指示なんかなくとも、
テキパキ働いて、発酵を進めてくれる。

魚の内臓と塩水からなる「くさや液」の中に、
ムロアジなどの魚を漬けると、
くさや菌が、タンパク質や脂質を分解し、
旨味や、さらには抗菌性物質までを生み出す。
まさに、期待を超える働き。

しかし、漬けすぎれば、菌は減少する。
働かせすぎは、菌もご勘弁なのだ。
大切なのは、休ませること。
人も、くさや菌も、同じである。

老舗店のくさやが旨い理由。
それは、
くさや菌が働きやすい環境を整え続ける、
文字通りの優良企業だからである。

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奥村広乃 20年2月15日放送



発酵パンと出会い

とある暑い日。
古代エジプトで運命の出会いがあった。
小麦粉と酵母の出会いだ。

酵母たちは、水で練られた小麦粉を食べ、
炭酸ガスとアルコールを発生させた。
膨らむ小麦粉たち。
それを焼いた人間はびっくり。
今まで食べたことのない、
ふわふわのパンが出来上がったのだから。

さあ今日も。
バターを塗って、ジャムをつけて。
美味しい運命の出会いを召し上がれ。

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河田紗弥 20年2月15日放送



恋文のいろいろ。 〜歴史〜

ひらがなが誕生した平安時代。

女性も日常的に文字を記すようになると、
手紙が大ブームになった。

平安時代のラブレターで重要だったのが、
和歌のセンスはもちろん、
どのような紙に書き、結んで届けるかということ。

陸奥の国でつくられた陸奥紙(みちのくがみ)と呼ばれる紙が
貴族には人気であった。

それを木の小枝に結んで届けるのが一般的で、
白い紙を梅の花がついた折枝に結んだり、
青い紙を柳の折枝に結んだり、
色の取り合わせにも美意識を宿らせていたんだとか。

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河田紗弥 20年2月15日放送



恋文のいろいろ。 〜藤原実方〜

平安時代、20人以上の恋人がいたという
モテモテなプレイボーイ、藤原実方。

そのたくさんの恋人の中には、
あの清少納言もいたと言われている。

和歌の天才として知られる恋人に、
和歌にはかなりこだわりや向上心があったとされる藤原実方は
こんな歌を歌った。

 かくとだに えやは伊吹の さしも草
 さしも知らじな 燃ゆる思ひを

息吹山のヨモギのように燃えている私の心を
貴女は知らないのでしょうね。

さて、彼が燃やしていたのは、恋心?
それとも、お互いが得意とする和歌への競争心?

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河田紗弥 20年2月15日放送



恋文のいろいろ。 〜ナポレオン〜

フランスの革命家ナポレオン。

1796年27歳のときに
彼は貴族出身のジョゼフィーヌ・ド・ボアルネと結婚した。

ナポレオンは、彼女のことを非常に深く愛しており、
こんなラブレターを送っている。

 3つのキスを贈ります。
 一つは、ハートへ。
 一つは、唇へ。
 一つは、瞳へ。

しかし、そんなナポレオンの熱い想いは届くことなく、
ジョゼフィーヌが浮気をしてしまい、
二人は離婚することになってしまった。

その後、ナポレオンは後妻をもらったが、
死の直前に呼んだのはジョゼフィーヌの名だったそうだ。

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河田紗弥 20年2月15日放送



恋文のいろいろ。 〜坂本龍馬〜

 まことにおもしろき女

これは、坂本龍馬が、自分の姉である坂本乙女へ宛てた手紙の中で
自分の妻であるおりょうのことを紹介したときの言葉だ。

筆まめで知られる龍馬は、
残っているだけでも130通もの手紙を出していたとされる。

今でも、彼を題材にしたドラマや映画でも、
やたらと手紙を書くシーンが多いように思う。

そのときの時勢から人間関係、
金品の貸し借りなど、
なにからなにまで、詳細に書き記していて、
中には3メートルにも及ぶ長文の手紙もあったとか。

妻のおりょうにも多くの手紙を出しているが、
その手紙は、おりょうの死後、
遺言によりすべて処分されたと言われている。

龍馬の愛情が、文字から、文章から、伝わってしまう恋文を、
彼女は、誰にも見せず、独り占めしたかったのかもしれない。

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河田紗弥 20年2月15日放送



恋文のいろいろ。 〜谷崎潤一郎〜

近代日本文学を語る上で、
欠かすことができない小説家・谷崎潤一郎。

彼が「創作の源泉・女神」とまで崇めた
妻・松子に
彼はこんな恋文を送っている。

 「仏さまの足をかたどった墓石より、
 あなたが履いた靴の下に埋められたい。
」と。

彼の書く小説は、
変態的な性的嗜好を描いたものが多く、
共感することはあまりにも難しい。

それにも関わらず、彼の描く
「マゾヒズム」や「フェティシズム」に
惹かれてしまう人々が多かったことも確かだ。

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佐藤日登美 20年2月9日放送



肉  魯山人のすき焼き

芸術家であり、美食家としても有名な北大路魯山人。
彼はすき焼きに並々ならぬこだわりを持っていた。

鉄鍋に牛脂をひき、霜降りの牛肉を入れたら
酒と醤油、ごくごく少量のみりんで味をつける。
いただくときは大根おろしを乗せて。
肉を食べ終えたら鍋に出汁を足し、野菜をほどよく煮る。
その繰り返し。

ねぎは一皮剥く、ほうれん草を用意する、など細かい作法が続くので
彼がすき焼きを食べるときには極意を心得た人が必要だった。

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