名雪祐平 14年3月29日放送
Jack Samuels
その人になる アル・パチーノ
映画『セルピコ』で新人警官を演じた
アル・パチーノ。
役作りのために、実在の人物と3週間、
生活をともにした。
ニューヨークの警察で、
組織の汚職、腐敗と独り闘う本人
に会ったとき、
その目の中に
心の広い一匹狼を見た。
と、アル・パチーノは言った。
もうひとつ、実在の男を演じた
『狼たちの午後』では
モデルの男には一切会わず、
独自の役作りに徹した。
この2つの映画、
どちらにも狼が、宿っていた。
名雪祐平 14年3月29日放送
c.United/Everett / Rex Features.
その人になる ロバート・デ・ニーロ
体重の話。
シャーリーズ・セロン +13kg
ラッセル・クロウ +20kg
クリアスチャン・ベール −30kg
ロバート・デ・ニーロ −15kg
そして、
ロバート・デ・ニーロ +27kg
俳優たちは役作りのために
自らの体重を見事に変え、化けてみせる。
映画の中の、その人になる。
デ・ニーロは撮影のために
歯まで矯正し、撮影後また改めて直した。
徹底したこだわりは
「デ・ニーロ・アプローチ」
という言葉まで生んだ。
この生身の人間の迫力。
コンピューター・グラフィックスで
再現できるだろうか。
伊藤健一郎 14年3月23日放送
© Nevit Dilmen
The Rolling Stones キースのギター
人間、一皮剥ければ、みんな髑髏だ。
ローリングストーンズのギタリストであり、
地球上で、最も偉大なギタリストの一人。
キース・リチャーズ。
彼は、言葉もしびれる。
どんな人間だって、
切って開いてみりゃ
、骨は白くて血は赤いだろ、
な、どっか深い所で繋がってんだよ。
そんな信念が宿るキースのギターは、
国も、文化も、時代もこえて、深く深く愛されている。
伊藤健一郎 14年3月23日放送
Andrea Sartorati
The Rolling Stones 不良の音楽
不良の音楽ロックンロール。
その頂に君臨するローリングストーンズにおいて、
不良といえば、ギタリスト、キース・リチャーズだ。
スキャンダルは数知れず。
一度は、終身刑になりかねない麻薬事件まで引き起こしたキース。
あるとき、こんな胸中を打ち明けた。
生まれてこのかた、神聖さと名のつくものと
全く無縁な人生を送ってきた俺にとっては、
ストーンズとして、ロックンロールを演り続けることこそが、
唯一の宗教なんだ。
キース・リチャーズ。
伝説の不良を絶望の淵から救ったのは、
たったひとつ、不良の音楽ロックンロールだった。
伊藤健一郎 14年3月23日放送
Andrea Sartorati
The Rolling Stone 同い年
ロックンロールは、俺たちと同い年で、
こんなチャンスをもてるやつなんて、バンドも含めてそうそういない。
1962年のロンドン。
ローリング・ストーンズは、産声をあげた。
「Paint It, Black」「Jumpin’Jack Flash」「Satisfaction」…
数々の名曲を生み出し、
世界で最も偉大なロックンロールバンドと称されるストーンズ。
メンバーのキース・リチャーズは、ギタリストの神とあがめられている。
これは、そんな彼の言葉。
ストーンズにとっては、時代に足跡を残すことよりも、
ロックンロールがどう成長し、俺たちがどこまでそれに手を貸せるのか、
見届けることが興味深いんだ。
伊藤健一郎 14年3月23日放送
The Rolling Stones ミックとキース
ロックンロールバンド、ローリング・ストーンズ。
ボーカリストのミック・ジャガーと、ギタリストのキース・リチャーズには、
ふたつの出会いがある。
ひとつ目の出会いは、互いが5歳か、そのくらいのとき。
公園の砂場で、ミックとキースは出会う。すぐに打ち解けた二人。
けれど、キースの引越しをきっかけに疎遠になってしまう。
それから10年以上の月日が流れ、二人はもういちど出会う。
電車の中でのことだった。お互い学校へ向かう途中。
ミックは、当時キースが夢中だったバンドのレコードを抱えていた。
そのときの出会いを、キースはこう語る。
俺の家に来いよって誘ったんだ。
やつが持ってたレコードを聴いてしびれたね。
二人ともまだロンドンの端っこにあるダートフォードに住んでいて、
俺はまだアートスクールに通ってた頃さ…
それから50年以上経った今なお、
二人のロックンロールは鳴り止まない。
伊藤健一郎 14年3月23日放送
Affendaddy
The Rolling Stones ローリングストーンズとビートルズ
ローリングストーンズは、ビートルズとよく比較された。
ジョンレノンは、
「ストーンズがやってることは、ビートルズの2ヶ月遅れだ」と
彼らを揶揄した。
ジョンのコメントに対し、
ストーンズのメンバーであるキースは、71年のインタビューでこう応えている。
俺たちとビートルズは、同じものを目指してたってことだけじゃないかな。
ただ、俺たちの方がちょっと遅いってだけでさ。
だが、俺たちを映し出す鏡は俺たち自身だけさ。
そして2002年、キースはこう語った。
ビートルズと違うのは、
俺たちはいまもバンドとして続いているってことだ。
ストーンズが40周年を迎えたある日のことだった。
50周年を迎えた今も、彼らは新たな曲を書き続けている。
伊藤健一郎 14年3月23日放送
Peter Gerdes
The Rolling Stones ストーンズを聴かないミック
ローリングストーンズのミック・ジャガー。
彼は、自分たちの音楽は聴かないという。
レコードは絵画に似ていて、
仕上げた時点で自分のものじゃなくなる気がするんだ。
自分の手をはなれて、他人のものになるわけさ。
ところで、街を歩けば、誰だって一度は見かけたことがあるだろう。
舌ベロのマーク。ローリングストーンズのシンボルだ。
まるで彼らの手をはなれたかのよう。
ファッションなど様々なところで使われて、
老若男女が思うがままに楽しんでいる。
ストーンズは教えてくれる。
ロックンロールは、音楽に限らず自由なものだと。
今日も世界中の街角には、彼らのロックンロールがあふれている。
伊藤健一郎 14年3月23日放送
lrog
The Rolling Stones 満たされない
満たされない。満たされない。
何度も何度もやってみたが、ぜんぜん満たされない。
ローリングストーンズの代表曲「Satisfaction」は、
満たされずもがく男の話。
そんなローリングストーンズには、
ボーカルのミックが言ったのか、ギターのキースが言ったのか、
誰が言ったのか、こんな言葉があるという。
夢が消えたら、心も消える。
伊藤健一郎 14年3月23日放送
Andrea Sartorati
The Rolling Stones ローリングストーンズの最後
イギリスのロックンロールバンド、ローリングストーンズ。
50周年を迎えた彼ら。平均年齢は69歳にもなる。
解散するバンドが多い、ロックンロールの世界。
ストーンズがアニバーサリーを迎え、ツアーを開始するたびに、
記者たちは同じ質問をぶつけた。
「これで最後ですか?」
これは、そんないつもの問いに対する、
ボーカリスト、ミック・ジャガーの答え。
ぼく自身は“ファイナル”だなんて絶対に言わない。
人生、何が起こるかわからないのに、これが最後だなんて言うのは、
実にくだらないと思うね。
2014年の東京ドーム。
縦横無尽に疾走し歌うミックが、走り疲れることはなかった。