薄景子 14年3月9日放送
【丹尼斯®】
からだの話 谷川俊太郎
だれかにやさしい言葉をかけてもらうと、
肩の力がふっと抜けたり、
からだがあたたかくなる感覚がある。
人のからだは、
毎日いろんな言葉をきいて
その波動を感じているのだろう。
詩人、谷川俊太郎は、
「さようなら」という詩の中で
寿命をまっとうする時の
からだへの想いをこう綴る。
心臓さんよ どきどきはらはら迷惑かけたな
脳髄さんよ よしないことを考えさせた
みんなみんな悪く思うな
君らあっての私だったのだから
迷惑かけたな よしないことを考えさせた…
心当たりのある言葉たちが、
胸にぎゅんぎゅんしみこんでいく。
いま、こうしている瞬間も、
愚痴のひとつもこぼさずに
ただもくもくと働きつづけてくれている
自分のからだに、感謝したい。
薄景子 14年3月9日放送
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からだの話 がばいばあちゃん
芸人、島田洋七を育てたことで知られる、
佐賀のがばいばあちゃん。
食べるものにも事欠くほどの極貧生活を
底抜けに明るくたくましく生きた彼女の言葉は、
笑っちゃうほど豪快だった。
あるとき、洋七が38度を超える熱で
うんうんうなっていると、
「よし、大丈夫。お前なら40度は出せる」
と言って励ました。
丈夫に大をつけて、大丈夫。
がばいばあちゃんの「大丈夫」は、きっと
どんな薬よりも、からだと心に効く。
茂木彩海 14年3月9日放送
Roberto_Ventre
からだの話 國母和宏
現在、アメリカで活躍するスノーボーダー、國母和宏。
体の動きから自然に生まれたスタイルを生かす彼の滑りは、
誰にも真似できないという。
スノーボードにどっぷり浸かって消えていきたい。
からだを信じれば、人生はシンプルに強くなる。
小野麻利江 14年3月9日放送
naoyafujii
からだの話 三浦知良
47歳になる今も、Jリーグ・横浜FCで
現役でプレーを続ける、
「キング・カズ」こと三浦知良。
今までに培った経験とテクニックに
磨きをかけることはもちろん、
年を重ねるにつれ、
より質の高いトレーニングを追求してきたという。
さぞかし、自らの体を慎重に気遣って
プレーを続けているのだろうと思いきや、
必ずしも、そうではないようだ。
カズは言う。
僕は基本的に、日常生活ができるなら、
試合にも出られると思ってる。
それでケガが悪化したこともあるし、
ベストの状態でなければ、
チームに迷惑をかけるという意見もあるだろう。
でも100%治るまで休んでいたら、
いつまでかかるか分からない。
この年齢で1ヶ月も2ヶ月も休んだら、
選手生命も終わってしまうしね。
選手を長く続けるために、あえて体に負荷をかける。
挑み続ける者にしかわからない境地が、ここにある。
大友美有紀 14年3月8日放送
Matthew T Rader
Photo by Texas Photographer, Matthew T Rader
「ミツバチ」ゲーテ
3月8日、今日はミツバチの日。
ドイツ人はゲルマン時代から
ハチミツを愛好していた。
ドイツ文学の第一人者ゲーテも、
ワイマールの庭の家、ガルテンハウスで
ミツバチを飼っていた。
ゲーテは当時の哲学者ヘーゲルの弁証法について、
白を黒と言いくるめるような詭弁であり、
それなら、自然を研究した方がよっぽどましだと言った。
ミツバチ研究のほうが精神衛生上健全だと。
ミツバチがなぜ、集団で蜜を探しに行き、
巣に戻ってくるのか、当時は謎とされていた。
目に見えぬヒモにあやつられるようにして、
あちらへいき、こちらへいきしている。
しかしそのヒモの正体が何かは、
私たちの知るところじゃない。
未知のものは未知のまま。
考える人間のもっとも美しい幸福だという。
大友美有紀 14年3月8日放送
wwarby
「ミツバチ」トルストイ
今日はミツバチの日。
ロシアは古代から
ハチミツや蜜蝋の産地として有名だった。
トルストイもミツバチを飼っていた。
彼の生家、ヤースナヤ・ポリーニャ、
明るい林間の空き地という名の屋敷には
付属の養蜂場もあったという。
「戦争と平和」のなかで、
ナポレオンのモスクワ侵攻のとき、
ゴーストタウン化した町を
女王蜂を失った蜂群にたとえている。
そして後年「木の皮屋根のついた蜜蜂の巣の異なった二つの歴史」という
風刺小説も書いている。
雄鉢のから見た歴史と働き蜂から見た歴史。
支配階級と労働階級の二つの歴史だ。
帝政時代の厳しい検閲下では発表できなかった。
トルストイは、ミツバチに絶望と希望を見ていたのかもしれない。
大友美有紀 14年3月8日放送
「ミツバチ」夏目漱石
3月8日はミツバチの日。
夏目漱石は「三四郎」のなかで、
田舎の素朴なくらしの象徴として
ミツバチを登場させている。
東京に暮らす三四郎は、九州の母から手紙をもらう。
小作人の新蔵からハチミツをもらって、
毎晩焼酎に入れて飲んでいる。と書いてあった。
新蔵が蜂を飼い出した時の事を思い出す。
どんなふうに蜂をつかまえたのか、
巣箱を増やしたのか、得意げに語っていた。
母からの手紙で
三四郎は三つの世界ができたと感じる。
ひとつは、遠くにある。母とミツバチと新蔵の世界。
第二は、苔の生えたれんが造りの建物がある、学問の世界。
第三は、明るい電燈のもとに美しい女性がいる世界。
でも、自分はそのどこにも属していない。
しかし、戻ろうと思えば戻れる世界はある。
それは、第一のミツバチのいる世界だった。
大友美有紀 14年3月8日放送
biggertree
「ミツバチ」みつばちマーヤ
今日はミツバチの日。
かつて「みつばちマーヤの冒険」という
アニメーション番組があった。
おしゃまな女の子みつばちが主人公のお話。
実は、この有名なお話は、
ボンゼルスというドイツの童話作家が書いたもの。
その物語全体を貫いているのは、
大自然への讃歌だ。
桜と赤さんざしと、にわとこの花が、
雲のように咲き乱れた中に、
やすらっているかと見える、ある大きな庭園。
その上に来かかったとき、
マアヤは死ぬほど疲れきって舞い降りた。
赤いチューリップの花壇の中へ落ちた彼女は、
大きな花の一つにすがりついて、
花びらにぴったり身を寄せると、
深くうっとりと息づかいながら、
その花のちらちら光るヘリごしに、
輝くばかり青い空を眺めた。
ミツバチから見える世界の美しくしさに憧れてしまう。
奥村広乃 14年3月2日放送
大きな喜び
イギリスのジャーナリスト、ウォルター・バジョット。
雑誌『エコノミスト』の編集長も務めた彼は、
こんな言葉を残している。
人生における大きな喜びは、
君にはできないと世間がいうことをやることである。
無理だよ。
絶対、出来ないよ。
そんなネガティブな言葉をかけられた時。
それは、大きな幸せのタネかもしれない。
悔しがって、
努力して、
達成する。
かんたんじゃないことこそ、
やる価値があるのだ。
礒部建多 14年3月2日放送
NASA’s Marshall Space Flight Center
宇宙への試験
「驚きの連続だった。
地球が足元で回っており、息をのんだ。」
夢が叶った瞬間の興奮を、
野口聡一は宇宙から、こう語った。
小学生の頃から「宇宙飛行士」を
夢に見続けた野口だが、
大学受験では浪人を経験。
第一志望の会社にも入れなかったが
回り道をしながらも夢を諦めなかった。
転機が訪れたのは1996年。
JAXAによる、宇宙飛行士の公募だった。
野口は、長年の夢に全てをかけて
倍率572倍の狭き門を見事突破。
31歳の時だった。
「夢の実現は、夢じゃない。」
そう語る野口の姿に
勇気をもらった人は、星の数ほどいる。